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営業組織が過去の慣習や成功体験への固執から抜け出す方法

いきなりですが、営業活動に携わる皆さんに問いかけたいことがあります。

皆さんの営業組織では、これまでの営業文化・慣習・過去の成功体験・聞こえの良いノウハウなどへの「固執」が改善を阻んでいる…なんてことが起きていませんか?

時代とともに外部環境は変化し、営業に求められることも変わってきています。頭では変える必要性を理解しつつも、なかなか営業の考え方やプロセスをアップデートができていない組織も多いのではないでしょうか。本noteでは、変わらないといけないことはわかっているけど、何をどう変えていくのがよいのかわからなくて悩んでいる人に向けて少しでも参考になれば、と思って書いています。主にB2BのSaaS等、20年前には概念として存在しなかったプロダクトを提供している企業の営業活動に関わっている方を対象としています。


買い手はどう変わったか?

少なくとも私が営業として仕事を始めた20数年前から比べると、買い手の状況は大きく変化しました。これは営業の仕事に限らず、全ての人が様々な変化に直面し、その時の変化に合わせて柔軟に変化してきました。その中で営業の仕事に欠かせない買い手、つまりお客さんの購買に向けた状態も変化してきています。

最大の変化はインターネットの普及ですね。2010年代から続くスマホやSNSの普及・デジタル化により、誰もが簡単に自身の経験や知見を発信したり、必要な情報を手に入れたりできる「情報の民主化」が進みましたよね。

この「情報の民主化」により、生活者のライフスタイルや幸せの定義、それらに付随する考え方や行動などが多様化。その結果、B2C・B2Bを問わず、あらゆる企業が施策や考え方のアップデートを余儀なくされました。
例えば口コミで認知をひろげる「バイラルマーケティング」など、スマホやSNSが普及する前はあまり見られなかった施策が次々と登場し、その重要性を増した、という具合です。

今や検索をすれば、業態・事業・業務を問わずあらゆるビジネスの情報にアクセスできます。先進的な事例や施策をいくらでも確認できるため、自社のビジネスの「不便」や「不足」を際限なく感じてしまう構造が生まれているのです。これはXを見て他人と無意識に比較してしまうという構造とも同じと言えます。

そしてあまりにも多い煩雑とした情報が有象無象に手に入っていまう状況下、現代の買い手は「ゴールを達成する上で、自分たちは何から手をつけていくべきか」を決めることが以前よりも困難になっている、と捉えていただきたいのです。

実際に、以下のような悩みを抱える営業が増えていると感じます。

・買い手の企業が課題を特定することが難しくなり、自社製品の特徴や機能を提案しても購買されることが少なくなった。
・市場環境やビジネス構造も多様化しており、買い手の企業の投資領域が増加して複雑化。今までのように予算が得られなくなった。

手法をアップデートできていない営業組織が多い

さて、私がアドバイザーとして多くの営業組織を見る中で感じるのは「営業の考え方」をアップデートできていない組織が多い、ということです。

例えば、若手の営業が上述したような悩みをマネージャーに相談しても、以下のようなフィードバックをされて見直しが進められないケースを見かけます。

・お客さんの課題は何だ?しっかりヒアリングをしないとだめだぞ
・プロダクトの説明不足ではないか?会ってくれた相手にきちんと魅力を説明したか?
・トークスクリプトどおりに話せるように繰り返し練習するんだ。

昔はこういうやり方が多かったと思いますし、今でもこのやり方で通用する業界もあると思います。

しかし、外部環境の変化によって買い手の状態が変わり、デジタル化によってSaaSをはじめとするソリューションを購買する機会も増えている中、買い手は「どうやって買う合理的な判断をすればいいのか?」という状態になっているということは想像に難くないと思います。つまり購買難易度が上がったことで、売り手である営業の役割も変化していかないといけません。
具体的には、「売ること」を目的としたコミュニケーションではなく、「買い手の問題解決=ゴール達成のために何をすべきなのか」という視点で顧客とコミュニケーションをとることが求められるケースが増えてきました。例えば、以下のような具合です。

▼Before:
・とにかくアポ獲得が最重要。リード獲得後にアポイントをとることが正義
・初回アポイントから、売り物の特徴や機能を連呼して契約を迫る段取り
・昔に作られたトークスクリプトどおりに話すことを善しとしている

▼After:
・アポ獲得を目的とせず、継続的なコミュニケーションを行い、その上で買い手がアポに応じてくれる状態になってからアポイントをとる
・初回アポイントから契約は迫らない。まずは顧客を理解し、関係を作ることからはじめる
・顧客ごとに仮説を変え、それぞれの困りごとの解決に向けて会話する

経営陣を含むベテラン層が「過去の成功体験」や「営業文化」「慣習」に固執していると、B2Bビジネスは大きく成長していけないのでは、と思っています。とは言え、多くのマネジメントの方々は、過去の自分自身の成功体験や実績くらいしか伝えるものがないので仕方ないと言えば仕方ないのですが。

ではまず何からどう変えていけばいいのか、について書いていきます。

対策1:「アンラーニング」で組織内の足並みをそろえる

では、アップデートするためには具体的に何をすると良いのでしょうか。

まずご提案したいことの1つ目が「アンラーニング」、非常にざっくり言うと、過去に学んで身につけてきたことを一度忘れて再構築しようという話です。

このテーマについて本を読みたい人は以下おすすめです。

特におすすめしたいのは「使う言葉のアンラーニング」です。目的は「組織内で使う言葉の平仄(ひょうそく)を合わせる」こと。組織内の全員が同じ言葉を同じ意味で理解できる状態にすることです。組織内で使う言葉の定義は、私がさまざまな企業の営業組織にアドバイスをするなかで、最初に提案する施策です。営業に困って私に何かしらの依頼・相談しにくる営業組織の中で、言葉の平仄が揃っている組織はゼロです。約260社、3,000人が分母ですが、ゼロです。

特にSaaSをはじめとするスタートアップにおいて顕著なのですが、現在は転職も活発化しており、いろんな経験を持った人が集まって営業組織を構成するようになっています。そのためか、同じ組織でも、人によって「営業」「顧客」「課題」といった言葉の解釈が異なっています。

社内外で積極的な対人コミュニケーションを行う営業組織において、使う言葉の解釈が人によって異なる状況は、とても大きなリスクです。実際に少し考えてみてください。同じ組織のメンバーであるAさんとBさんに「顧客は誰?」「このお客さんの課題は?」と聞いたときに、言葉の解釈が合っていなかったらまともな意思疎通はできませんよね。なお、各言葉の定義については、過去のnoteで詳しく説明しています。こちらから参考にしてみてください。

✔️営業と販売の違いについて

✔️問題と課題の違いについて

✔️顧客とは何か、について

対策2:スループットを経てアウトプットをする

そしてもう1つ、言葉の平仄とあわせて営業組織に取り入れたいのが、営業ひとりひとりが自分の意見を持つようにすること。そのために必要なことは「スループット」です。

スループットとは、得た情報について自分なりに深く咀嚼して理解をし、自分の意見にするプロセスのことだと捉えてください。情報に営業のインサイトを加えることとも言えます。

例えば商談の場で買い手の企業に対して、以下のような意見を伝えるイメージです。

「ほかの業界ではこういうことがトレンドとして起きています。この事象は、あなたの見ている事業にも関係すると思っています。なぜなら、その業界の顧客とあなたのみている事業の顧客が同じ属性の生活者だからです。そうなると、今あなたが取り掛かることはXXXであり、同業他社がやろうとしているXXXは順序が逆だと思っているんです」

なぜスループットが大事かというと、スループットを経てからアウトプットを行うことで「単なる情報」が「自分の意見」へと昇華され、それをお相手に対して投げかけることができるようになるからです。

よく営業パーソンが「ディスカッション」という言葉を使ってアポを取っていますが、蓋を開けるとディスカッションはおろか対話も疎かで、一方的な商品説明やヒアリングになっているケースが散見されます。ディスカッションをするにはお相手から意見を出してもらわないと成立しません。お相手に意見を出してもらいたいなら、自分自身が意見を持っておくことは必要だと思いませんか?

上記のnoteで『まずは顧客と「商売に直接関連しない話題でコミュニケーションが取れる関係性」を築くことからはじめましょう』という話をしました。しかし、話す価値があると感じてもらえなければ、顧客と「人と人」として向き合える関係にはなれません。

買い手の方に対して「人と人」として向き合い、意見を引き出したいと思うのであれば、まずは「ただの情報ではない、自分の意見」を持てるようになっておくことを強くお勧めします。なぜなら情報はもはやネット検索すれば簡単に手に入りますから。

よほどリーチすることが難しい情報ではないのであれば、お客さんは「ふーん」でおしまいです。あなたが手に入れた情報のほとんどは、お客さんも低コストで手に入れることができる、と思っておいた方が良いでしょう。そうなると営業が人として営業活動に関わるのであえば、「あなたの意見」もっというと「相手が気づいていない・考えていない示唆」としてアウトプットすることを意識してほしいと思っています。

スループットの習得や実行方法については、ZENFORCE社のウェビナーでお話をしました。以下の記事にわかりやすくまとめられていますので、ぜひお読みください。

『新時代の営業活動に必要なストーリーテリングとは|イベントレポート』

スループットのためには「問いを立てて・探究すること」が不可欠

おわりに

今回は、営業組織が過去の慣習や成功体験への固執から抜け出す方法(のごく一部)について紹介しました。

お伝えしたように、買い手の状況が変化したことで、売り手である営業の役割も変化しています。時代にあわせて営業スタイルもアップデートしていきましょう。

この記事が、皆さんの営業組織が一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

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