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営業の9割が落ちる落とし穴(まえがき&その①「営業と販売」)

別に統計をとったわけではないけれども、9割以上の営業職の人が落ちてしまう落とし穴シリーズを思いつくままにnoteに書いていきます。この辺りのデータは(たぶん)追々リサーチをしていこうと思っていますが、約20年の経験の中でこの割合は体感値として大きくずれていないと思っています。

さて、いきなり話が横にずれますが、最近ホームページを大幅にリニューアルしましたので、是非覗いてみてください。こだわったのはアニメーションです。画面スクロールをちょっと我慢してみてみてくださいね。


1. まえがき

落とし穴シリーズが幾つまで続くのか現段階で特に決めていないですが、そもそもなぜこのnoteを書こうと思ったのか、最初に私のスタンスをお伝えします。

私は約20年間、主にIT業界においてB2B営業の仕事をし、職務としてはマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、アカウントセールス、カスタマーサクセス、マネジメント等を実務としてやってきまして、前職では外資企業の日本法人代表(いわゆるカンマネってやつ)を務めた後に2020年6月に退任し、B2B営業のアドバイザーという仕事をするべく会社を創り、独立しました。

ただ、言っても所詮自分自身の経験から言える範囲でのアドバイスに限定されてしまう=経験の切り売りになるので、クライアントにとって本当に正しいアドバイスなのか、というと「それってお前の経験だけだろ」と思われてしまうと何も言えないわけです。

もっと言うと、世の中には耳障りのよい営業テクニック的なネタが蔓延し、「9割の穴に落ちてしまっている人たち」が飛びつきそうな短期的かつ小手先のコンテンツがあちこちで放たれているという構図になっているとみています。なぜなら藁にもすがりたいと思っている人たちはカネになるからです。すぐに成果が出る!といったテクニックやコツ、といった類のコンテンツは思考せずとも理解できますしね。

とは言え、こうやって他人のやっていることを批判するのは簡単です。私なりの方向を定めて、自分自身のポジションを明確にして行動しないとダサいですよね。ということで、素敵な縁と機会をいただき、2021年4月に社会情報大学院大学(2022年4月から社会構想大学院大学に名称変更)という専門職大学院に入学し、実務教育研究科という新しくできた学問領域の一期生として、日本で最初の実務教育研究の学位を取得する一人になることにしました。

実務教育研究というのは、ビジネスの世界で行われている実務を学術的に体系化し、暗黙知を実践知化して再現性をもたせ、また実務の世界に戻すというサイクルを創る学問と捉えてもらえればわかりやすいと思います。もっと具体的に言うと、営業の世界は属人的な仕事で再現性がないよね、と言われて久しいですが、この属人的なもの(暗黙知)を言語化・体系化して再現できるもの(実践知)にしていくというのが私が入学した目的です。

さらにわかりやすく言うと、目指す目標アウトプットイメージは「営業領域におけるフィリップ・コトラー」先生です。目標は大きく!です。まずは身近な領域であるIT業界のB2B営業の領域を射程範囲と定めていますが、他の業界やB2Cにも応用できる内容になると思うので、汎用性も意識していきます。

したがって、私自身も日々アップデートしていますので、1年後には違うこと(表現の仕方とか使う言葉とか)を言っているかもしれませんが、上記の理由なので予めご承知おきください。過去の自分の経験というストックを使い回していくスタンスではないので仕方ないことです。

では、まえがき終わり。1つ目の落とし穴について触れていきます。

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2. 落とし穴①・・・売ることを目的にしている

話に入る前に、前提をお伝えします。今からお話する内容は、主にIT業界のB2B営業活動についての記述となります。売ることを目的にして成り立つビジネスも存在しますので、全ての業種業界に対し「売ることを目的したらダメ」と言うつもりはありません。

さて、売ることは、営業にとって大事な役割です。もっというと、売れていない営業や営業組織は職務を果たしていないことになります。だから会社としては「売ること」をとても重要な目的に据えて日々の活動や施策を決め、忙しく働いているわけです。

結論から言うと、売ることを目的にして活動しても売れません。ほとんどの営業はこの素敵な勘違いをしています。売ることを目的しているにも関わらず、結果的に売れないなんて、皮肉なことですね。しかも、売ることを目的にした活動をしても時々売れてしまうので、落とし穴だということに気付かなかったりします。なぜ時々売れてしまうのか、については別のnoteで説明します。

「売ることを目的にした活動」をしてしまう原因の1つは「過去の経験に依存」しているマネジメントにあるとみています。この辺りも別noteで詳しく触れることにしますが、まず考えたいことは「なぜ売ることを目的した活動では売れないのか」です。是非考えてみてください。考えることが大事です。

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論理的に考えると非常にシンプルですが、買い手は「何らかの目的のために購買する」という原理原則を忘れてはいけません。つまり購買することは手段です。買うこと自体が目的となっている人、例えば自社ビルのサーバールームに最新型のストレージやサーバーを並べて「うむ、とても美しい。このフォルムとこのデザインはまさに芸術だな。本当に買ってよかった」と悦に浸るコレクター気質の人はB2Bにおいては皆無です。当然です。

ではこの「何らかの目的」とは何なのか。細かく分解していくと多様な目的が存在しますが、ひと言で言うと「困りごと(問題)の解決」です。企業に属している以上、必ず何らかのゴールがあります。それは上から降ってくることもあるでしょうし、自分で決めることもあるでしょう。各々がそのゴールに向かってタスクに落とし込んで仕事をしています。そのゴール達成が阻まれている状態のことをここでは「困りごと(問題)」と呼びます。

つまり、問題を解決することはゴールへの到達に繋がるということです。よって上述した「何らかの目的のために購買する」ということに当てはめると、

買い手は、ゴール達成を阻んでいる問題を解決するために購買する

ということになります。

よって、営業というのは

買い手のゴール達成を阻んでいる問題を解決するために販売をする

ということになります。つまり販売する(=売る)ことは手段であり、目的ではない。なぜなら買い手が購買をすることは手段であり、目的だからです。営業と販売は、目的が異なるという整理をするとわかりやすいと思います。

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「何を当たり前のことを」と思ってしまう人も少なからずいると思いますが、いざ商売のシーンになった途端に売ることを目的とした販売行為を繰り広げてしまうというのは「わかっているけどできない」典型例です(わかっているけどできないのは何故か。それは別のnoteで書きたいと思います。よしよし、noteのネタがどんどん出てくる)。

もう少しだけ「売ることを目的にした販売活動」とはどういうものなのかを具体的に示します。身に覚えがある人はここを改善するだけでだいぶアップデートできると思います。

まず、一文でお伝えすると、以下です。

売ることを目的にした販売活動は、売り物起点でストーリーをこじつける

重要なキーワードは「売り物起点」と「こじつけ」です。ここでいうストーリーというのは仮説と言ってもよいです。つまり買い手に価値訴求をし商談を成立させるためのシナリオです。皆さんが日々の仕事でせっせと作っているあれです。しかし残念ながら、その仮説と思って作っているものは売り物起点でこじつけになっていることが本当に多い
なので「仮説が刺さらなかった」というのは仮説の中身や引用する事例やらではなく、そもそも仮説の起点(出発点・前提)が間違っているということに気付いてもらいたいのです。

営業は、自社の売り物を売りたい。それを売るために商談に臨んでいる。売ることが仕事であり、責任であり、評価につながる。売らないとコミッションは稼げない。まだ子供も小さいし家のローンもまだまだ残っている。なのでなおさら「売ること」を目的に据えたストーリーを作ってしまう。


そしてこれは一見正しい活動のように見えてしまうし、なかなか成果につながり辛くても何が正しい営業活動なのかわからないため、「この売ることを目的とした活動は良くないのではないかッ」と言えない状態が多くの企業で起きているというのが私の見解です。

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少しずつ具体的にお伝えしていきます。
売ることを目的にした「販売活動」は、概ね以下の流れです。

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まず、売り物があります。これを売りに来てるわけです。どう売るか、どうこの解決策の価値訴求をするのか。そのためのシナリオを用意します。

そして買い手との会話の中で、何をゴールとしているのか、そしてそれが達成できないと何が困るのか、などをヒアリングしていきます。

「ゴールに到達できていない状態(困りごと)は原因Aがあるから」という示唆っぽい話をファクトやら事例やらを駆使して熱弁します

そしてその原因Aを解決するための解決策Aを、弊社は提供しています!とさらに熱弁します。

これが「売り物起点の営業」すなわち「販売活動」です。わかりますか?自分たちの売りたいプロダクトなりサービスは何らかのソリューション(解決策)なわけです。なので「解決すべき何か」がないと商談になりません。この解決すべき何か、を導くために買い手の困りごと=問題の原因を「課題」と称して強引に繋げにいくわけです。

わかりにくい人のために、もうちょっとわかりやすくお伝えします。

- お客さんから見ると、ゴール達成を阻害している・難易度を上げている原因は複数存在している

- その複数の原因は、お客さんは全て把握し言語化できていない

- つまり「何を解消すればゴールに到達するのかいまいちわからない」状態

これが多くの買い手の状態です。

先ほどの図の通り、買い手から見たら困りごとの原因はA〜Cまであります。中にはA〜Gまであるかもしれませんし、幾つの原因が絡み合って問題を形成しているのかもわからないかもしれません。

こういう状態にいる買い手に対し、多くの営業は「原因はコレです。そしてコレが多くの不利益を生み出しており、**社のケースによると年間++億円のコスト高の原因になっているとの報告も出ています。そして弊社は、この原因を解決するためのプロダクトをご提供しています」という「セールストーク」をしゃべくり倒しているのです。

問題の原因すらまともに整理できていない買い手に対し、「コレが原因。そして解決策はコレ。いかがでしょうか」というコミュニケーションは、果たして買い手の問題解決に向けたパートナーとして正しい行為なのでしょうか。単に売ることを目的としているのであればこれで良いかもしれませんし、1-2割程度の確率で売れるとは思います。しかし、上述した通りのこじつけシナリオを放って「たまたまそれ探してたやつ!」という反応に確率論で出会う活動には、間違いなく人間がそのプロセスに介在しなくなります。

問題の原因を気付かされた時の恥ずかしさ、ちょっとしたプライドの傷、恐怖心、将来への不安、改善への期待、新たなことを知った時の驚き、これらに纏わる様々な「感情」を理解し、共感し、促していくというコミュニケーションは人間にしかできません。ここが現代のB2B営業が人間として価値を発揮できる居場所になると見ています。

では、販売活動ではなく営業活動とは具体的に何をすればよいのか、人として介在する価値はどこになるのか。そのために営業職として何をどうアップデートしていけばよいのか。

このあたりを次回noteでお話していきたいと思います。

ではでは、次のnoteでお会いしましょう!


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