
第二十回週末の夜の読書会 芥川龍之介『藪の中』(感想・レビュー)
初めて課題本として短編小説を取り上げてみましたが、さすがは芥川先生!読み応え満点で読書会も大変盛り上がりました!ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
参加者の感想
・実験的な小説
・答えは出ないように書かれている
・真実に至るドロドロとした複雑さを表現している
・嘘と真実
・結論のない話
・プロットで書かれている
・事実すら一つでない……などなど
短い作品なのだけれども、読めば読むほど分からなくなる、それこそ藪の中に入り込んで抜け出せない感覚が面白い作品でした。
さまざまな論文で犯人探しを試みてきたが未だに解決されていない作品
藪の中とは……「それを包み隠す何かが有って、実情は、一切判明しない。」(新明解国語辞典より)と辞書に載るほどに時代に与えた作品の影響は大きかったよう。
論文も犯人探しに終始しているものが多く、また、出版されて100年近く経ってもその論争が続いているところが、この作品のすごいところでしょう。
この読書会で真犯人にたどり着けた!?
多襄丸は自分の強さを誇示するために、女は自分の貞操観念を守るために、男は自分の不甲斐なさを否定するために、それぞれの”事実”を白状する。この物語のポイントは、自己弁護ではないところだ。それぞれがそれぞれに自分が犯人だと供述する。
社会生活を送っているとよくあるのが「犯人探し」で、それぞれの話を聞くと「いやあれは違う」「そんなことは言っていない」など、自己弁護、自己擁護のために供述をする。ところがこの物語の特異なところは、自分が犯人だと言いはるのである。
これは一体どういうことなのか?
それぞれが守りたいものがあるからなのか?
結局犯人は?大団円は迎えられるのか?
他の第三者説もあり、オリエント急行説(全員がグル)という意見もあり、うなったり大笑いしたりと忙しかったです。また、巫女の口を借りて語られた被害者の男の供述は、幽霊の話ということで参考にするかしないかという判断も分かれるところもありました。
私は幽霊の言葉こそ現実世界に未練のない供述として採用していいんじゃないかと思いました。もはやこれは真相に迫るというよりも希望ですが。
仮に男が自害せず生き残っていれば、夫婦は大きなシコリを引きずりながら生きていかねばならず、暗い人生になることは必須です。男が自分で死にましたと言っているのであれば、そういうことにしておいてあげよう、というのがハッピーエンド好みの私の解釈です。
それにしてもやはり、真相は藪の中でした。
(2021年9月20日開催)

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