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第40回読書会レポート:二葉亭四迷『浮雲』(感想・レビュー)

(レポートの性質上ネタバレを含みます)

今回は、近代日本文学史上、重要な作品に挑戦してみました!
言文一致体を使った初めての作品と言われる『浮雲』。
後の文豪達にも影響を与えたと言われている衝撃的な試みは、果たしてどのような作品だったのでしょうか?
明治の風を感じながらの読書会となりました。

参加者のご感想

・文語体が残っている
・言文一致に苦悩が感じられる
・早く職を探せ!
・とにかく職を探せ!
・感情移入しずらい
・第十八回でお勢が豹変したのが気になる
・明治の男はもっと立派だったはず
・昇はどんなつもりで来ているのか
・登場人物の性質が『めぞん一刻』を彷彿とさせる



あまり読み込めなかった主催者(*_*; 

明治時代に挑戦と意気込んで取り上げた『浮雲』でしたが、咀嚼する時間がなかったといいますか……。
読了したものの、自分の中に落とし込めないまま、読書会を迎えてしまいました。

課題本を決定しておきながら、自分は深く読み込めず反省。
そもそも私自身、読書会がなければ本から離れてしまう生活。

逆に言いますと、それだけ気楽にご参加いただければと思います(*´∀`*)
ご自身で「とりあえず読了した」と思ったならば、当会の参加資格ゲットです♪

ご興味のある方はお気軽にいらしてください。

(なお、当会の会場は本屋さんですが、主催者は本屋さんではありませんので、悪しからずご了承くださいませ)


時代から作品を読み解く:明治の負け組とは

ということで、今回は私の大好きな小森陽一先生の論を参考にレポートを仕上げて行きたいと思います。

参考文献:『読み直し文学講座Ⅱ 二葉亭四迷、森鴎外の代表作を読み直す――近代小説の出発、立身出世主義の失業と恋愛』著:小森陽一(かもがわ出版)

江戸幕府が倒れ明治政府が発足し、武士という特権階級を剥奪されたエリート階級は、大規模なリストラに晒されました。

新しい世の中で上手く世を渡っていく昇と、生真面目な態度が災いして上司に取り入ることができなかった文三との対比は心が痛みます。

江戸から明治への階級変動をめぐる出来事が失職ということなのです。

歴史上では江戸幕府が倒され開国したのでした、、、という事実を理解するに留まりますが、その当時を生きる市井の人々の汗や涙を表現しているのが文学であり、文学的観点から読み解く時代へのアプローチは、違う角度からの発見があり面白くおすすめです。


『浮雲』は未完に終わっている???

僭越ながら、小森先生と同解釈だったのが続編の有無です。

『浮雲』は続編の構想メモが見つかったということから、未完で終わっているとされています。

しかしながら私の読後の印象は「完結してるじゃん」というものでした。

この点について、小森先生の言葉を引用いたします。

つまり、自分が家を出る決心をしたことを伝えるべきかどうか、それとももう一度お勢と話し合ってみるべきかどうか、と廊下を行ったり来たりして結局また二階へ戻るわけです。これは、どちらにするか選ぶことができず、行ったり来たりする文三の心の内側と、部屋の外を行ったり来たりしている行動を重ねていて、そういう文体を開発した『浮雲』という小説の末尾としては、実にこの時期の近代文学の現状を、象徴するような終わり方をしていると私は考えています。『浮雲』はみごとな結末をもっている小説ではないか、というのが私の持論です。

『読み直し文学講座Ⅱ 二葉亭四迷、森鴎外の代表作を読み直す――近代小説の出発、立身出世主義の失業と恋愛』著:小森陽一 P57


そもそも【浮雲】という言葉には、「落ち着きの無い不安定な身の上や生活の意にも用いられる(新明解国語辞典)」という意味があります。

ラストの場面はタイトルの『浮雲』を見事に表現しています。
これは最高のオチではないでしょうか?

ふわふわしていた日本。
幕府が倒れ明治となり大正、昭和とどんな歴史を辿ったかはご存知の通りです。

このふわふわした不安定な感覚は、現代も払拭されることなく日本の地底に流れているように思います。

あの時あの時代に、なにか楔(くさび)のような要(かなめ)のようなものが抜かれてしまったのではないか……

明治時代の作品を読めば、現代の日本が置かれた状況が肌感覚で掴めるかも?という期待を込めて決めた課題本。
なんとなく掴めたような気になりました。


(2023年5月27日土曜日開催)

読書会
二次会

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【第41回課題本】


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