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第26回読書会レポート:安部公房『砂の女』(感想・レビュー)

レポートの性質上作品のネタバレを含みます。予めご了承ください。

久々の安部公房はやっぱり面白かった!

一気に読み終え、読後はなんともいえない清涼感に包まれたのは私だけでしょうか?(*^^*)

ご参加の皆さまの感想


・ホラーなのか?不気味。
・つかみにくい
・作品自体が砂っぽくてとらえどころがない
・脱出を諦めた人、思考を停止させられた
・最適化


ハッピーエンドか??? バッドエンドか???

話し合っているうちに、ハッピーエンドと解釈している人と、バッドエンドと解釈している人とに別れていることが判明。
砂の中から逃げ出す千載一遇のチャンスに対し、主人公はむしろ自ら穴の中へ戻っていくのですが、この解釈について別れたのは面白かったです。

バッドエンド派の主な意見としては、砂の中の生活から逃げることしか考えて来なかった主人公は、失敗をしてからすっかりその気力が萎え、途方に暮れ、逃げることを諦めてしまったと解釈。逃亡に成功する確率が極々低いことを思い知らされ、”普通の生活”を諦めた可愛そうな人と結論。

一方で、ハッピーエンド派は、自由のない砂の中での生活に、守るべき家族ができ、流水装置の研究というやり甲斐まで見出している主人公の変化に着目し、だからこそ砂の中に戻ったという。
もし仮に”普通の生活”に戻れたところで、冷え切った夫婦関係に、上辺だけの付き合いの同僚たち、やり甲斐のない仕事という人生が待っているだけ。それは本当に幸せなのだろうか?

砂の中の生活では、主人公はその存在を求められている。貴重な男手として村の運営の第一線を任されていることは否定できない。
確かに理不尽に非合法に自由を拘束されているのは事実だが、人間の適応力は恐ろしいもので、いや、その適応力を発揮できればむしろ幸せになれるのではないか。

諦めた先に幸せがある。

おばあちゃん世代のお見合い結婚に思いを馳せる……

我が国の80~90代のおばあちゃん世代は、いわゆるお見合い結婚がほとんどであった。テレビなどでよく見聞きするのは、当日までどんな人と結婚するのか顔も分からなかったという。

まさに砂の中の生活に入っていくような心境なのではないだろうか。

それでもテレビカメラに向かって「いい人生だった」と笑っている先輩方は、それこそあらゆる理不尽な思いをどうにかこうにか消化しながら、生きてきた上での笑顔なのだろう。

最適化できるかどうかなのでは?


法治国家とはなにか
労働とはなにか
生活とはなにか
生きるとはなにか
自由とはなにか

結局、自分自身を環境に”最適化”できるか否かが問題であって、そうなれば案外、砂の中だろうが”普通の生活”だろうが関係ないのかもしれない。

皆さんは今、”普通の生活”に居ながら砂の中の生活を送っていますか?
それとも”砂の中”に居ながら、自由とやり甲斐を感じていますか?


(2022年3月26日土曜日開催)

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