第41回読書会レポート:田山花袋『蒲団』(感想・レビュー)
(レポートの性質上ネタバレを含みます)
今回は満員御礼!定員オーバーの大盛況!!
遠くは茨城県から足を運んでくださる方もいらして感無量でした(;_;)
初めての方はなかなか発言できなかったりしますが、
ぜひめげずに2回3回と通っていただき、
場に慣れてたくさん発言していただければと思います!!
またのご参加お待ちしています^^
ご参加者の皆さまの感想
・田中はクズ
・共感!時雄はピュア!
・みみっちい!(不倫)しろよ!
・うじうじ
・田中を気にして時雄は小さい
・他人の手紙は読んじゃダメ
・少女病
・立場によって変化(『藪の中』みたい)
・奥さんは気づいてる?
・芳子は先生へ恋していたのか?
・田中は本当にクズなのか?
・誰にも共感しない
・売れない作家、田山花袋の炎上商法
・芳子は妊娠している?つわり?
・オマージュ作品:中島京子『FUTON』もお勧め!
多数決で「キモくない作品」に決定!?
『蒲団』は我が国の代表的な自然主義文学作品と位置付けられていますが、一方で、あるがままを描写するという自然主義を曲解し、露悪的で悪趣味な私小説のハシリという評価もなされています。
この作品をきっかけに日本の文壇では、赤裸々に曝け出すことを自然主義と履き違える傾向となった、とも言われています。
私はこうした予備知識しか持ち合わせていなかったため、キモイキモイと前宣伝していたせいか、今回の課題本をそうした先入観をもって読み込む人が多かったようです笑。
妻子持ちの中年男性が美しい女学生を自宅に下宿させる。そんな生活の中で抑えられない恋心を悶々展開させていくストーリー。
そこで今回は「キモイorキモくない」の多数決を取ってみましたよ!
結果は……
・キモイ5票
・キモくない7票
ということで、当会ではキモくない作品と認定されました〜笑
ちなみに私はキモくないに1票でした!
このレビューを書くまでは、、、
深読みせずサラッと読めば、純粋でなんなら恋心をひた隠しにして世間体を守る主人公の、愛らしくもあり滑稽でもあるドタバタ失恋劇とも読めるでしょう。
そんな中、読書会でも疑問点として挙げられたのは、芳子の不可解な手紙についてでした。
ここをどう深読みするかで、ガラッと印象が変わってくるようです。
焼いてしまった手紙に書かれていた芳子の秘密とは? 構造に脱帽!
芳子と田中には肉体関係がすでにあったのか?と時雄が問い詰める場面があります。
肉体関係は無かったと信じたい時雄の気持ちは理解できますが、明治という時代だったとはいえ、20歳前後の男女がそんなことできるのでしょうか???
田中とやり取りした手紙を見せろと芳子に迫るのですが、芳子は「あの頃の手紙はこの間皆な焼いて了いましたから」と言い放ちます。
そんな一悶着があってからの翌日。
芳子は食事をしたくないとして部屋の中に閉じこもり、机に突っ伏して、なにやら時雄宛に手紙をせっせと書いているのでした。
ひたすら謝るばかりで、何をそんなに詫びているのか、具体的には書かれていない手紙です。
この手紙について読書会の中では、「手紙の内容がボンヤリしすぎていてよくわからない」といった意見もきかれました。
そこでちょっと、前後の展開に目を向けてみましょう。
・芳子は気分が悪いからと食事をとらないでいる、なぜ?
・田中はなぜ無理矢理に東京に来たのか?
・時雄はあんなにも芳子に執着していたのに国へ帰らせる決断をした。
・芳子の父親は世間体を気にして芳子の帰国を渋っていたにも関わらず考えを真逆にせざるをえなかった。
・芳子は「私共」と複数形をつかって公然の許嫁のように振る舞っていた。
このように登場人物の行動は、よく読むと疑問だらけです。
ぼんやりとした手紙の中には、この作品の肝となる秘密が隠されているように思えてなりません。
もしかしたら、、、
女性であれば、ピンとくるでしょう。
芳子が気分が悪いとして食事をとらない理由について、、、
単に時雄に怒られたから食事が喉を通らない、というのでは、登場人物達の極端な行動の論拠としては弱いのではないでしょうか?
しかし、「つわり」が原因で食欲がないとすれば、、、
登場人物達の奇怪な行動にも納得できるものです。
そのほうがすべての疑問に合点がいきます。
実際に読書会でも、女性の参加者から妊娠説が出されましたが、私もそう思いました。
直接的な表現はないからこそ、肉体関係があった上に「妊娠している」ことを懺悔する手紙であると推測できます。
参考までに!
芳子のモデルとなった実在の人物も、本当に妊娠して子供を産んでいます。
当時の読者はこの事実を知っているわけですから、やはり作品のなかでは直接的な表現を省略していても、妊娠していた事実を含んで読み取ることは可能だったと思います。
さすが~我が国初の私小説!
男子の本音解釈「匂い嗅ぐだけで終わるわけないよなぁ……」Σ(゚Д゚) ぼかされたもう一つの秘密
当会では、読書会終了後に希望を募って二次会という名の飲み会を設けています。
お酒もすすむと、読書会の本編では話しにくかった発言もしやすくなるもの。
注文ミスで、ビールをチェイサーに日本酒をいただくことになってしまい、その勢いで男性陣に聞いてみましたよ!
「本当に匂いを嗅ぐだけで終われるものか?」と。。。
するとやはり、その先の”慰める行為もしっかりするだろう”ということでした。
ですよね~(;´д`)
やっぱり『蒲団』はキモイ笑
これが最終的な私の結論となりました笑。
とはいえ、まあそりゃそりゃそうだ、と明るく受け止められている自分自身には驚きました。
一方で、責任をとろうと上京してきた田中は、むしろ誠実な人物じゃないかと見直したりするのでした。
性的な表現をどこまで許容し解釈するか?
私は読書会を主催していて、一つ大きな思想の変化を遂げました。
それはフェミニズム思想からの脱却です。
読書会でさまざまな男性主人公の心理にふれたり、それに関する男性からの意見を直接聞くことで、私自身の男性の理解につながり大きな成長の糧となっていきました。
今回この作品を取り上げられるようになったのも、そうした私の変化の現れなのかもしれません。
『蒲団』はおしとやかで、むしろ表現に恥じらいが残っていると思います。
この後の時代に続く作品は、露骨で生々しい表現がエスカレートしていくからです。
『知人の愛』
『太陽の季節』
『ノルウェーの森』などなど、、、
さげすんでいたこうした"キモイ作品"も、男も大概だけど女もそんなもの、というそれぞれの弱さを受け止められるようになりました。
フェミニスト的観点から徐々に抜け出せているようです^^
この私の変化は成長なのか?
それとも年をとって感覚が鈍ってきただけなのか?
とはいえ私は不倫には反対です。
まだそこまで達観できてはいません。
田山花袋のように悶々として、自分の中で昇華させるほうが文学的で深みのある人生だと考えています。
己の欲に振り回されその奴隷に成り下がるのは、社会性を要求する文明社会で生きる上では賢い選択と言えないのではないでしょうか?
そんな私ですが、これからも読書会を通して「男女間のキモイ」に向き合う時間を作っていきたいなと、前向きに着地することができました。
ところで突然ですが、ご結婚中の皆さん!悶々としちゃってますか?
……今回は既婚者の初参加の方が多かったなぁ(*´艸`*)
(2023年6月18日日曜日開催)
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文学の素養は一切必要ありません^^
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【第41回課題本】
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