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酒美あぶく
2024年2月29日 10:18
2024年2月20日 11:28
2023年12月21日 15:12
2023年12月17日 16:36
2023年12月14日 16:37
2023年12月13日 10:53
2023年11月30日 08:48
2023年11月24日 10:49
2023年11月10日 10:57
今日もまた一睡もできなかった。暁暗を引き裂くようなカラスの声がひとつふたつと聞こえる。それが引き金となったかのように、遮光カーテンの隙間から覗く空はしだいに白んでゆく。 春眠暁を覚えず、などと歌ったあの詩人はさぞ能天気な人物だったに違いない。春こそ不眠の季節であるというのに。逆に、春はあけぼの、と歌った清少納言は私と同じく、春には不眠に悩まされていたのだと思う。春は、あけぼの。能天気な人物に
2023年11月6日 11:01
仕事から帰り、玄関のドアを開けると、妻の不機嫌そうな顔が私を出迎えた。思い当たる節はないが、私はできるだけ妻を刺激しないように、玄関のドアをゆっくりと、音を立てないように閉めた。蝉の声がすっと遠くなる。キッチンの方からは、肉じゃがの甘い香りが漂ってくる。 「ただいま」 私が恐る恐る言うと、妻は、 「おかえり」 と言い、それから子ども部屋の方に視線を移して、あからさまにため息をついた。
2023年11月1日 10:46
少年は激昂した。この世の不条理を、彼の瞋恚の火炎で焼き尽くそうと決意した。 今朝のホームルームでのことである。担任の山岸が、まあ、うちのクラスの生徒ではないと思うんだけど、と前置きした上で――これは枕詞のようなもので、彼が本気でそう思って言っているわけではないということは、生徒の誰もが知っていた――、おおよそ次のように言った。 「昨日、近隣の方から苦情のお電話がありました。どうやら、うちの
2023年10月27日 09:54
「橋本さん、今日は引き取りが二件だから、よろしくね」 私の面接を担当した佐々木さんが、何気ないふうを装って言う。よろしく、ということは、私が担当しなければならないのだろう。
2023年10月26日 10:21
空はまるで鏡のように澄明で、ところどころに刷毛ではいたような雲が散っている。季節の割に日射しは強く、皮膚をちりちりと刺激するが、冷たい風が小火を消そうとするかのごとく私の全身を撫ではだく。風は、猫の鼻のような冷たさであった。
2023年10月24日 09:08
猫の声に揺り起こされて時計を確認すると、すでに正午を過ぎていた。朝日を見た記憶はあるのだが、どうやらいつの間にか眠っていたらしい。今日は土曜日だから仕事はない。