シェア
東一西
2017年8月4日 20:14
話を少し戻そう。黒田達に囲まれた時、廃屋の中で茜と皐はある作戦を企てていたのだ。追いつめられた時、皐は、「茜さん、投降しましょう。」と茜に言った。その後の二人にはこんなやりとりがあった。「何でよ!正直に話せば黒田さんも分かってくれるはず。あんたが父を殺した犯人じゃないってこと・・・」「いいえ。それはないでしょう。」と茜の提案をキッパリ断る皐。「茜さん、正直に言います。驚く
2017年5月27日 20:35
ここは江戸・・・どこか良く似た街、瀬戸(せと)天下を分ける戦争が終わり世が統一されてしばらく経つも、まだまだ世の中は物騒で、同心達は治安の維持に苦心していた。日が暮れた瀬戸の街で雅な羽織を着た女同心・茜(あかね)は窃盗犯を追っていた。「もう逃げられないわよ!観念なさい!」商店が並ぶ表通りを走りながら茜は叫ぶ。「ぐ! ちくしょう!」とつぎはぎだらけの着物を着た小汚い男がしぶと
2017年5月15日 21:36
日が暮れてきた。茜と別れた皐は忍装束に身を包み、中村屋の裏口の方へ回った。中村屋の屋敷は皐月の背丈よりも少し高い塀に囲まれているが、この程度の壁は皐にとっては何の意味もなさない。あっという間に傍の木に登り、そこからひょいと塀の上に飛び移った。「さてと、喜七さんと呉八さんの部屋は・・・と。」中村屋の庭はそれほど広くないがよく手入れをされている。皐は庭の中心あたりにある井戸のそばで女達
2017年5月14日 21:28
「はあ・・・はあ・・・くそっ・・・なんでこんな事に・・・」虎吉はいつも山菜を摘みに来ている裏山まで全足力で逃げてきた。木々が青々と茂り、良質な山菜が取れるこの山は、虎吉にとっては忙しい日々にも落ち着ける、お気に入りの場所でもある。虎吉はいつも休憩に使っている切り株の上に腰かけた。するとその時突然、「さあて何でしょうね?」と、人気のない山で、突然の人声が、しかもかなり近くで聞こえた。