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東一西
2017年8月6日 11:23
「もう動けませんね。これで終わりです。そろそろ黒田さんの岡っ引き達が追いついてきます。あなたはこれから岡っ引き達に捕らえられ、大越さん殺害の罪で市中引き回しの後、首を刎ねられ処刑されます。彼らにこの僕・次郎が烏天狗だと言っても誰も信じませんよ。僕は人一倍真面目で仕事ができる人物だと信じられていますからねえ。あなたの戯言など誰も信じませんよ。茜さんにすらね。」次郎がそう言った時、皐は俯いたまま「
2017年8月4日 20:14
話を少し戻そう。黒田達に囲まれた時、廃屋の中で茜と皐はある作戦を企てていたのだ。追いつめられた時、皐は、「茜さん、投降しましょう。」と茜に言った。その後の二人にはこんなやりとりがあった。「何でよ!正直に話せば黒田さんも分かってくれるはず。あんたが父を殺した犯人じゃないってこと・・・」「いいえ。それはないでしょう。」と茜の提案をキッパリ断る皐。「茜さん、正直に言います。驚く
2017年8月1日 23:41
「茜えー!いいんだな?このまま俺たちが押し入って忍者同心もろとも縄にかけることなるぞ!」廃屋の中から返事がないのを確認して、右手を上げる黒田。この右手が降ろされれば一斉突入の合図である。まさに黒田が手を振り下ろそうとしたその時、廃屋の中から茜が皐の両手に縄にかけた状態で出てきた。それをみてニヤリと笑みを浮かべる黒田。「いい子だ、茜。聞かせてもらおうか、どうして忍者同心と行動を共にしてい
2017年7月26日 20:32
「はやく!はやく!」茜の身に何か起これば 皐は死んだ大助に何と詫びればいいのか。脚の筋肉を100パーセント使い全速力でしばらく走ると、茜の姿が見えた。「あっ!皐!ちょっとあんた早すぎるわよ!」顔を合わすなり文句を言う茜だったが、その無事を確認できた皐はホッと胸を撫で下ろし、いつもの屈託ない笑顔をみせた。「茜さん、良かった。無事で」「えっ?どう言うこと?烏天狗は?」「すいま
2017年7月6日 22:17
事件が解決したのは良かった事だが、雪と信三にとってはショッキングな出来事であった。まさか自分とこの従業員がこんな殺人計画を立てていたなんて。しかもそれは雪のためにやった事である。雪と信三はなんともいたたまれない気持ちになった。2人にとってはもしかしたら、あのまま心中事件として片付けてくれた方が良かったのかも知らない。しかし、茜には事件である以上は見過ごす訳にはいかなかった。それが同心としての正義で
2017年7月2日 14:45
「じゃあ決まりですね!この家を徹底的に捜索させて頂きます!うーん、なんか宝探しみたいで楽しいですね、茜さん!」ワクワクする皐であったが、茜はそんな皐の頬をまたぎゅーっとつねって叱る。「子供みたいな事言うんじゃない!これは遊びじゃないのよ!」いつもの茜と皐の戯れを見ていた虎吉だが、内心不安でどうしようもなかった。無邪気に楽しんでいる2人だが、これだけ大風呂敷を広げて、もしもこの屋敷から何
2017年6月28日 19:51
「なっ!殺害ですって?」と雪。「てめえ!何言いやがる!俺たちを疑ってやがるのか!」と信三。「皐!あんた!非常識すぎるわよ!」と茜。「バカか!お前は!」と虎吉。皐はみんなから集中砲火を浴びて焦ったが説明を続けた。「い、いや、あくまで可能性としての話でですねえ。でも完全に無いとは言えませんよ!雪さん、伸三さんからすれば殺しの動機としては十分ですし、何よりあの二人の死に方は少し不自然
2017年6月26日 23:24
次郎に案内された心中の現場は、橋からそんなに遠くなかった。男女の遺体は大きな木にもたれかかり、座ったまま息絶えていた。また、遺族の者と思われる冷たい表情をした30代の女と50代の男が離れた場所に立っていた。「死んだ女性の方は外傷はありませんが体に発疹ができています。一方男性の方は腹を自ら割いて死んでいます。腹に刺さったままの小刀に男の右手が握られたままなので、彼が自決したことは断定できます
2017年6月25日 08:58
多くの人が忙しく行き交うこの街は江戸・・・とどこか良く似たまた別の世界・瀬戸(せと)。禁断の愛に苦しみ自ら命を絶ってしまう事もしばしば。この材木店を営む竹田屋でもそんな悲しい事件が起きてしまう。竹田屋は質のいい材木で評判の材木店で、街から少し離れた所に山を所有し、そこから材木を運んで来ている。竹田屋の主人・信三(しんぞう)の娘婿・道広(みちひろ)は休業日にも関わらず、山まで出かけて調査をす
2017年6月19日 21:57
自作小説の力持ちの岡っ引き、虎吉(とらきち)の全体図です。江戸時代をモチーフとした、異次元の世界・瀬戸(せと)を舞台に活躍する同心・茜(あかね)とクセの強い岡っ引き達が繰り広げるドタバタ捕り物時代劇です。ご興味がありましたらご一読ください。第一話 女同心と忍者同心の出会い 第二話 陥れられた少年第三話 人斬り・烏天狗の犯罪第四話 黒い気
2017年6月15日 22:25
今夜の月は下弦で美しく輝いている。虫達のさえずりが僅かに聞こえる静かな夜だ。長上寺の門番の双子の僧は退屈そうに見張りをしていた。「今日も馬鹿な客ばかりだったな。右慶(うけい)。」左の若僧が右の若僧に言った。「ああ、金を落としてくれる頭の悪い客ばかりだ。左慶(さけい)」右の若僧が言った。暇つぶしにこういった短い会話をしていいた双子の若僧・左慶と右慶だが、突然聞きなじみのない声
2017年6月14日 20:43
肩を落とした茜はトボトボと帰路についた。黒田の同心屋敷からそう離れていない場所に、茜の住まう同心屋敷がある。元気なく門をくぐり、茜は庭を通って玄関の戸を開けた。「母さん、ただいまー。」父・大助が殺された後は、茜は母と二人でこの広い同心屋敷に住んでいる。「おかえり、茜。疲れたろう、先にお風呂入るかい?」柔らかい笑顔が特徴の茜の母は、名はお藤(おふじ)といい、大助が亡くなった後も気
2017年6月13日 21:18
「同心さん、あんた最近、十分に休めてないのでは?疲れがたまってますよ。」道念は神妙な面持ちで言った。「それくらいのことなら誰でも言えますよ。その程度では『気を証明』したことにはなりません。」という皐に道念はニヤリと笑みを浮かべる。「これからですよ、私の力は。同心さん、あなた右手首を痛めてはいませんか?」「えっ!?」茜は思わず口を抑えた。「あ・・・茜さん、当たってるんです
2017年6月12日 20:47
道念の寺は街から少し離れた山の上にある。山道はそこまで険しくなく低い山であったので、老若男女簡単に登れる所だ。街を出て一時間程度で着く事ができた。寺につくと豪華な装飾を施した門の両脇に門番である、頭を剃り上げた若僧がそれぞれ棒を持ち、仁王立ちしている。顔が良く似ているので、茜は双子かな、と思った。門は開いていたのでそのまま通り抜けたが、それが同心という事もあり、若僧達は言葉こそ発しなかった