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出ていく若者をどう引き留めるか?ではなく、若者にとって魅力的な富山になるためには?を議論しよう。


先日「若い女性の転出止まらない富山 一旦出たら戻りたくない富山 親が聞いたらショックな本音も・・・」というニュースが物議をかもしました。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/825227?page=2

私は2019年から学生と関わる事業を手がけ、2022年に株式会社就活ラジオを立ち上げて、就活領域における学生の支援を始めました。今までヒアリングした学生の数は、300人を超えます。今回のnoteでは、学生のリアルな声に触れ続けている私が感じる富山の現状について綴りたいと思います。とくに最後に綴った『対策への違和感』については、私の個人的な見解ではありますが多くの方と議論し深く掘り下げたいと思っております。皆さんのご意見お待ちしております。



若い女性が減っている富山

今回のニュースで言及されているのは、富山から若者が流出しているという点です。2022年の住民基本台帳人口移動報告によると、富山県は女性で972人もの転出超過。その中でも特に、20〜24歳の女性転出超過は690人にも上ります。この数は男性の転出者数が303人に比べて3.2倍と、ニュースのタイトルにもあるように、若い女性の転出が止まらないのが現状です。


ものづくり県富山だからこその課題

富山県は1人あたりの製造品出荷額等や付加価値額が全国平均を上回っており、日本海側屈指の工業集積を誇るものづくり県。第2次産業、その中でも特に製造業の比率が全国平均に比べても非常に高く、製造業に支えられていると言っても過言ではありません。高度経済成長を支え、富山の経済の安定にも大きく寄与する製造業ですが、時代は変わりいまの若者には魅力的な仕事では無いのかもしれません。


日経新聞:人口100万人割れ間近 悩ましい「製造業立県」

「大学を出て”作業着”を着るなんて考えられない。」
これは私がヒアリングした、とある製造業に務めた女性が、大学の同期から言われた言葉だそうです。大学を卒業後、地元でも有数の大きな会社を営むご実家に就職を決めました。そんな時、当時の同級生に就職先の話をした際に「大学を出て”作業着”を着るなんて考えられない!よく行くね」と言われたそうで「当時はすごく悔しかった」と仰っていました。

富山大学経済学部・中村真由美教授も「一般に女性はサービス業で働く傾向があるが、富山県は製造業がさかんということで、サービス業で働くような選択肢が限られている」と記事内で言及しています。

また製造業では技術力を求められる故に、どうしても年功序列の構造が出来やすく、それに伴った給与や人事の体制が長く続いているのが現状です。これは体制だけでは無く、働く人の意識まで根付いており、もはやカルチャーとして受け継がれています。

実際に新卒採用における給与を上げる提案をした際に「新卒を上げるとそれより前に入社した全社員の給与を上げなければいけない。あげたくてもあげられないんだ。」という話をされたことがあります。これでは業界の中での優位性はあっても、優秀な人材を獲得する上ではかなり不利です。

また、DX化も遅れている現状があり、利益率、生産性の向上が遅れているという見方もできます。現代において労働集約型のビジネスから付加価値を提供し利益率の高いビジネスが求められている中で、ビジネスの構造的なところに根本的な課題があると言えます。


今の若者の特徴と、求められる職場

今の若い世代は、下記のような特徴があります。

・生まれた頃からインターネットやデジタルデバイスが一般的に普及しているデジタルネイティブ世代
・モノ消費からコト消費への志向に移り変わっている世代
・幼少期に東日本大震災の被害を見聞きして育った世代

多様な価値観に触れる機会が多く、社会問題への関心が高いのが、今の若者だと言えるでしょう。2022年にリクルートマネジメントソリューションズが行った新入社員意識調査では「あなたが仕事をするうえで重視することは何ですか?」という質問に対して「貢献」「成長」「やりがい」がトップに来ています。金銭や競争といったような外発的動機よりも、貢献・成長・やりがいといった内発的動機を重視する傾向が強いことがわかります。

たとえ大きな会社で業界シェアNo.1だとしても、仕事の内容ややりがい、やることの意義が感じられるかなどを重視しているのが今の若者の傾向と言えます。


対策への違和感

私が疑問に感じたのは、この問題に対する解決策です。まずは女性の管理職を増やすという点について。これは近年、経営者の集まりでも本当によく耳にしますが、実際に企業を回って人事の方にお聞きしても「管理職を目指す女性社員は多くない、むしろ管理職のポジションを用意すると辞めて行く」と聞きました。

これは極端な例かもしれませんが実際に管理職を目指す女性、もっと言えば男性ですら多くないのが現状ではないでしょうか。現代の若者には「管理職=働きがい、やりがいがある」よりも「管理職=仕事も責任も増えて大変」という認識がされている現状があります。

一方こんな声もあります「本気で管理職を目指して頑張ってきて、やっと管理職になれたのに、周りからは女性活躍の風潮があるから会社がポストを用意した。と思われているのが悔しい」これも実際に聞いた話ですが、本気で成長を目指す女性も若者も、自分の力で上り詰めても制度のお膳立てだと言われるのは納得がいかないのも分かります。

この様に、女性や若者が富山を離れていく、その打開策として「管理職を用意する」というのが本当に解決策なのか?問題は管理職に女性が少ないことなのか?これは本当に深く考えるべきだと思っています。現場で働く人の声、若者の声を聞いて、彼らが何を望んでいるのか?何を懸念しているのか?深く知ることがまずは先決なのでは無いでしょうか?


次に、中学生や高校生の頃から情報を届けるということについてです。現在の取り組みの紹介をしたり、現状のまま若者に周知したりしたところで、彼らから選ばれるようになるのか疑問が残ります。

私は企業における採用と学生の就職支援という双方の立場にたってお仕事をさせていただいております。その中で感じるお互いのギャップは大きく、いま富山県で起きている若者の流出、とくに女性についても、きっと見えていない、理解出来ていない、そんなギャップが大きくあると思っています。

もっと現状を把握し、若者が何を望んでいるのか?その上で企業がどのように変化しなければいけないのか?をしっかりヒアリングすることが大事なのではないでしょうか。これは彼らのわがままに付き合えという事では無く、選ばれる企業・地域になるためにはその意識を変えていかなければならない。そんな時代に突入したのだと思います。


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