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【最終・感染症後の世界】未来をノックする#3 ビジネスモデルの革新

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

超有名オライリーメディアの創業者ティム・オライリー氏が、感染症後の世界で必要なテクノロジーについて書いた本、「21 Technologies for the 21st Century」をまとめてきました。
いよいよ最後のの第三部、「The Future Is Knocking」についてまとめています。

14. 物理的なものの(再)デザイン
15. ビジネスモデルの革新
16. 材料科学
17. プロセス制御
18. 生命科学
19. 規制・規制市場との関わり
20. より長い時間軸
21. 多様性

前回の記事は以下。

今回は、「ビジネスモデルの革新」について書きます。

15. ビジネスモデルの革新
ビジネスモデル、と聞くとなんとなくワクワクしますね。三谷氏の『ビジネスモデル全史』はとても面白く読めました。
オライリー氏が言うには、ビジネスモデル革新はエネルギー分野と大きく関連しているそうです。

多くのビジネスモデルの革新が必要とされているが、その多くはエネルギーと他の問題の交差点にある。私の目に留まったのは、ソーラーファームを不毛の土地に設置するというだけでなく、ハチの生息地として利用することに焦点を当てた話だ。農業にとって受粉者がいかに重要であるかを考えると、これはエネルギーだけでなく、農業にとっても大きな恩恵をもたらす可能性がある。

SDGs達成のことを考えると、エネルギー分野での革新が急務なので、こういった見方をできるようになる必要があります。
ではどのように見ていけばよいのか?オライリー氏の主張を見ていきます。

スマートグリッドを考えみます。Wikipediaによると、

スマートグリッドとは、電力の流れを供給・需要の両側から制御し、最適化できる送電網である。日本では次世代送電網、スマートコミュニティとも呼ばれる。

上記から考えると、「どのように発電や配電を屋上ソーラーのような地域の電源同士をつなげていくか?」ということを考えてしまいます。しかし、昨日書いた電気自動車等のことを考えると、家庭や自動車のバッテリーストレージも使えるため、これも接続するとしたらどういう接続方法が最適かを考える必要が出てきます。
オライリー氏の経験談から、次世代のエネルギーインフラの形が見えてきます

オーストラリアの電力会社幹部は、「インフラといえば、中央集権型の大きな発電所を建設し、電気を配電するための電線のことしか考えていません。屋根の上のソーラーパネルや、人々の車のバッテリーもインフラの一部だと考えたらどうでしょうか」と言っていた。あなたならどう考えるだろうか?
電力会社が電気自動車に補助金を出したり、電気自動車が電力網の延長線上にあり、実質的には電力会社のインフラの一部であると考えれば、電気自動車に全額を支払うというモデルもあり得るのではないか?

このエネルギー問題を金融面から見ると、金融面でのイノベーションの必要性が出てきます。オライリー氏は、Saul Griffith氏(「The Green New Deal: The enormous opportunity in shooting for the moon.」の著者)の指摘を引用しています。

エネルギー分野でのこのすべての費用をどうやって支払うのか?これは正しい考え方ではない。将来の効率化による莫大なコスト削減を考えると、問題は「この一時的な投資にどうやって資金を調達するか」ということにあるはず。主要なコスト源を50%削減することは、我々の経済の競争上の優位性の源泉であり、何倍にもわたって必ず報われる投資であると考えなければならない。

将来のコスト削減を見越しての投資、ということでしょうか。

上記で説明したエネルギー技術は、いずれも資本コストは高いが、運用コストは低い。これらは革新的な資金調達の絶好の機会なのだ。
アメリカは自動車ローン、住宅ローンを発明・普及させた。この2つの発明が、個々の技術よりも、アメリカ社会の構造を形成する上で大きな役割を果たした。融資を受けると、今すぐ欲しい未来が手に入る。自動車や住宅を購入するために消費者に提供した低利融資や、20世紀のインフラ整備の際に電力会社に提供した低利融資と同様に、21世紀のインフラに低利融資を提供することができれば、この取り組みは誰にでも手の届くものとなり、将来的にはエネルギーコストをより低く、より予測可能なものにすることができるだろう。

誰にでも手が届くようなビジネスにする、というのがエネルギー関連に関してのビジネスモデル変革なのかもしれません。

さて、エネルギーと経済の関連性に関しては、Saul Griffith、Sam Calisch、Laura Fraser著『Rewiring America』(英語)がおススメされています。この本で、「あらゆるものを電化することが、感染症によるパンデミックとそれに伴う経済収縮によって引き起こされた大規模な失業の解決策でもある」ことが説明されています。

彼らは、第二次世界大戦のような積極的な取り組みを3~5年かけて行い、その後2035年までに脱炭素化インフラを集中的に展開すれば、ピーク時には2,500万人もの新規雇用を創出し、エネルギー価格の低下によりアメリカの全世帯で年間1~2,000ドルの節約になると見積もっている。確かに、今後20年間で約3兆ドルの投資が必要になるが、株価を押し上げるために何兆ドルもの資金を投入し、古い経済が「正常」に戻るのを待つ間、人々を飢えから守るという現在の戦略に比べれば、これは俄然賢明に思える。

イーロン・マスクの公式の記事でも書きましたが、全人類が特定の目標に向かって動くと変革が急速に進みます。

エネルギー問題を解決することが気候変動に直接的な影響があるので、エネルギーと経済、勉強続けます。

この本ではアメリカに焦点が当たっていることが多いですが、もちろん、オライリー氏はアメリカ以外にも注目しています。

サハラ以南の太陽光ミニグリッド市場、モバイルバンキング、固定電話を持たない携帯電話へのジャンプ、欧米式の病院インフラの代わりに小さな診療所への血液や医薬品のドローン配送なども本では解説してあります。

21世紀は、現職がおらず、過去の産業を破壊的な未来から守る規制がない場所で初めて実を結ぶかもしれない。

明日は「16. 材料科学」について書きます。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/

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