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青春という言葉に気持ちが明るくなる方にも、絶望に似たなにかが湧き上がる方にも。

2020年5月26日に発売予定、小説家・奥田亜希子さん初のエッセイ集『愉快な青春が最高の復讐!』から、10章あるうちのおよそ6章分を、noteにて順次公開していきます。

奥田亜希子『愉快な青春が最高の復讐!』
装丁:川名 潤 装画:池辺 葵

愉快な青春が最高の復讐! 書影表1 帯有

本作は、「大人になってからの青春」を綴った一冊です。そこには、パーティーやBBQ、フェスといった要素は皆無、何なら学生ですらありません。それでも、奥田さんが体験したある種の熱狂は、紛うことなき「青春」と呼べるものです。

登場するのは、奥田さんと、奥田さんが会社員時代に出会った、同期五人。平日は毎晩のように誰かの部屋に集まり、一台のベッドにぎゅうぎゅう詰めで眠る――会社のロッカーに共用の風呂道具を入れて、仕事帰りにみんなで銭湯に通う――北は北海道から南は長崎まで、弾丸旅行へ行きまくる――。
謎のバイタリティに溢れた6人を見ていると、自然とこちらも元気が出てくるはず…です。

小学生の頃から日記を取り続けてきた、記録魔である奥田さんだからこそ鮮明に振り返ることのできる、あまりにもさっぱりとした自虐エッセイです。
どうか笑ってあげてください!


まえがき


 新社会人時代の同期五人のことを、人に「同期」と説明する癖が抜けない。
 おかしいことはなにもない。私たちは確かに約十五年前、二〇〇五年の内定者懇親会で初めて顔を合わせた間柄で、私自身はその会社に一年しか勤めなかったけれど、その間、彼女たちと一緒に働いていたのは、掛け値なしの真実だ。それでも、私が彼女たちと遊んだ話をすると、相手はしばしばびっくりした顔でこう言うことになる。
「えっ、同期とそんなことするの? 仲がいいんだね」
 そのたびに、またやってしまった、と思う。

 私は同期と徹夜カラオケをしたことがある。
 旅行に行ったことがある。
 官能映画を観たことがある。
 交換日記を回していたことがある。
 色違いのつなぎを着て、夜通し歩いたことがある。
 丸めた新聞紙をガムテープで固めて、人間の大きさの人形を作ったことがある。

 たぶん、最初から「友だち」と話していれば、相手を戸惑わせなくて済んだのだ。「友だち」だったら一緒にどんな遊びをしても、「仲がいいんだね」とは言われない。だってそれは、そもそも親密な人間関係を表す言葉だから。話が相手の耳にすっと入るよう、次からは気をつけようと思っても、結局忘れる。同期は同期。その感覚がいつまで経っても消えない。
 そうして私は今日も、「同期と高尾山に登ったんだけど」「同期と着物で集合して神社に行ったときに」と口にして、人に驚かれている。

 収録されている二編のうち、表題の「愉快な青春が最高の復讐!」は、そんな同期との思い出を中心に、私の青春について書いたものだ。全十回、集英社のPR誌「青春と読書」に連載していた。自分には縁遠いものと諦めていた青春が、社会人になったと同時にスコールのような勢いで降ってきた。その驚きは、いまだに胸の中に生きている。もう一編の「記録魔の青春を駆け抜ける」では、途中何度か奇声を上げつつ、小中学校時代も含めた過去の日記を可能なかぎり振り返った。

 青春という言葉に気持ちが明るくなるウルトラハッピーな方にも、殺意や絶望に似たなにかが湧き上がる方にも、この本を楽しんでもらえたら嬉しいです。

奥田亜希子(おくだ・あきこ)
1983年(昭和58年)愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒業。2013年、『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞。著書に『透明人間は204号室の夢を見る』『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』『愛の色いろ』がある。本作は著者初のエッセイとなる。

<続きはこちら>
■青春を味わうには資格が必要だと思っていた。(第1回)
<番外編>
■「モテない」語りの最終兵器は奥田亜希子が撃つ! (書評)
■山本さほさんによる漫画(書評)

単行本には、同期旅の模様など、写真を多数収録!

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