米軍がみた日本軍「5つの敗因」
アメリカと戦争して無残にも敗れた日本。その敗因は何だったのか?
これについて米軍が戦後まとめたレポートがあります。
昭和21年4月に米軍がアメリカ政府に提出した『日本陸海軍の情報部について』という調査書です。
米軍が分析した「日本軍の5つの敗因」とは以下の通り。
(1)国力判断の誤り
(2)制空権の喪失
(3)組織の不統一
(4)作戦第一、情報軽視
(5)精神主義の誇張
どのようなことが書かれているか、『大日本参謀の情報戦記ー情報なき国家の悲劇』からの引用します。
※()内は筆者
(1)国力判断の誤り
軍部の指導者は、ドイツが勝つと断定し、連合国の生産力や士気、弱点に関する見積りを不当に過小評価した(ドイツ勝利の判定は分析ではなく親独感情によるただの“願望”)。
(2)制空権の喪失
不運な戦況、特に航空偵察の失敗は、もっとも確度の高い大量の情報を逃す結果となった(ミッドウェー海戦の大敗は航空偵察の軽視および失敗がもたらした)。
(3)組織の不統一
陸海軍間の円滑な連絡が欠けて、せっかく情報を入手しても、それを役立てることができなかった(陸軍の知らないところで海軍の作戦や基地設定が進むなど、メチャクチャな例多数)。
(4)作戦第一、情報軽視
情報関係のポストに人材を得なかった。このことは、情報に含まれている重大な背後事情を見抜く力の不足となって現れ、情報任務が日本軍では第二次的任務に過ぎない結果となって現れた(エリートぞろいの作戦課は情報課を落ちこぼれ組とバカにし、情報課から有力な情報が寄せられても歯牙にもかけなかった)。
(5)精神主義の誇張
日本軍の精神主義が情報活動を阻害する作用をした。軍の立案者たちは、いずれも神がかり的な日本不滅論を繰り返し声明し、戦争を効果的に行うためにもっとも必要な諸準備を蔑ろにして、ただ攻撃あるのみを過大に強調した。その結果彼らは敵に関する情報に盲目になってしまった(戦力不足や補給不足、時代遅れの装備の問題を無理やり精神主義で補おうとした)。
著者であり、大本営参謀参謀本部情報課の情報将校として日米戦争を戦った堀栄三氏は、この米軍レポートを読んで「あまりにも的を射た指摘に、ただ脱帽あるのみである」と述べています。
日本軍の問題点というより、日本組織(政府、官公庁、私企業、各種団体)に通底する問題として、現代にもくみ取れる教訓があります。
ちなみに、日本も幣原喜重郎内閣が昭和20年11月に日本の開戦・敗戦理由を分析するための調査委員会を設置しますが、調査目的や活動内容、人員構成の調整がつかなかったことや、ソ連やイギリスなど連合国の反対もあり、廃止となってしまいます。
戦後の日本は、開戦の理由も敗因も国民全体で共有しないまま、つまり何が悪くて何が問題だったのかよくわからないまま、とりあえず先に進もうと戦後社会をスタートさせ、今日に至っているというわけです。