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ちなみに現役時代の小錦の身長は187cm、体重は274kgという記録があります。BMIという指標がありますが、計算すると「78.36」なんて、とんでもない、おそろしい値になります。けど、体脂肪率は「25.7%」。私は太ってる部類ですが、私より全然少ない。この方の場合、大半は「脂肪」じゃない、ってことなんですね。

ちなみに、元関脇の寺尾って力士がいましたが、現役時代の体脂肪率は「11%」、元横綱の千代の富士に至っては「10.3%」だったそうです。

千代の富士

あくまで「脂肪の量」を「太ってる」という基準にするならば、力士のみなさんは必ずしも太ってる方ばかりとは言えないのかもしれませんが、見た目はあきらかに太ってますよね。でも、その見た目も、昔の力士はそんなに太ってなかったそうなんです。

伝統的には「がっしりとした体格」の力士が多かった

伝統的には、痩せている力士は少ないが、太っている力士も少なかった。腹が出ている力士は少なく、女性の胸のようにおっぱい化している力士もいなかった。そんな感じだったようです。

こちらはもっとも古いであろう力士の写真です。大きくて筋肉質の体格の男性たち。写真が残っているくらいですから、明治期以降の方だと思いますが、その前、江戸時代の力士も同様の感じだったそうです。

力士

女性たちからおモテになられたそうですよ。なんかわかる気がします。

じゃあ力士は、なんで太っているのか?

格闘家は筋肉量が多いほうが有利ですね。一般的な考え方としては…。そのほうが力、出ますので…。
ただ、多くの格闘技には、体重による階級があるので、無差別級以外は肉をつけすぎると上の階級の、より強い選手と対戦することになります。相撲には階級がないので、筋肉がつけばつくほど有利という理屈も成り立ちます。まぁ、一般論ですが…。

じゃあ、なぜ脂肪をつけるのか、単なる筋肉マッチョではないのか、と言うと、総重量が大きいほうが吊られたときやぶつかったときに有利だからです。
相手が投げたり吊ろうとしたとき、軽ければ簡単ですけど、重ければなかなかできません。重いものほど動かしにくいですから…。

それと、もうひとつは、ぶつかり合いのときの運動量ですね。
ものを動かす力の大きさである運動量は、重さ×速度で決まります。だから、同じ突進するのでも体重が重いほど相手を突き飛ばしやすくなりますし、突進されたとき体重が軽いほど簡単に遠くまで飛ばされやすく、こらえにくくなります。

こうしたことから、筋肉・体重とも力士は大きいほうがいい面があるわけです。
もちろん、体重が大きいと足腰に負担がかかり、ケガをしやすくなったり、こけやすくなったりという欠点もありますね。

今の力士は、太り過ぎなのか?

昭和30年代以前の大相撲は、当時の食料事情もあり、幕内力士の平均体重は115kgぐらいだったと言われています。
しかし、昭和40年代以降になると、大鵬や柏戸など大型の力士の台頭が顕著になります。
そうなると、いくら相撲が上手な力士でも体力的・体格的に差が生じて、次第に勝てなくなっていき、小兵力士は減っていきます。要するに「自然淘汰」されていくわけですね。
そして、柏鵬(つまりは柏戸・大鵬)以降も、北の富士、玉の海、輪島、北の湖など、千代の富士を除けば、おおむね体格に恵まれた力士が横綱となり、第一人者として土俵に君臨するようになりました。

昭和30年代以前にも、一応大型の力士はいたそうですが、これは体質的に大きくなりやすいだけで、スピードやテクニックなどで劣り、あまり大成する力士はいなかったそうです。
しかし、前述の横綱たちは、単に大きいだけでなく、スピードやテクニックも超一流でした。なので、小兵力士がつけいる隙はなかなかありませんでしたね。

しかも、昭和の終わりから平成にかけては、小錦、曙、武蔵丸など、今までにはいなかった規格外の超大型力士が台頭してきました。これらのハワイ勢に対抗するため、力士の大型化に拍車がかかりました。
そして、現在に至り幕内の平均体重は、150kgにも達します。

一昔前であれば、確実に巨漢の部類に入る力士が、今となっては平均的になってしまっています。
外国人であれば、150kgでも割と動けるのですが、日本人となるとそうはいきません。動きが鈍くなり、スピード感がなくなる傾向があります。
体力的に長い時間相撲が取れなくなるため、突き・押し・引きなど、淡泊な相撲が増え、見るほうとしては、いささかつまらなくなりつつあります。

個人的には、日本人力士は120~130kgぐらいが、いちばん動けて、かつ見た目にもバランスがとれてて良いんじゃないかなぁ、とは思うのですが、それだと大型の外国人力士に力負けしてしまう。かといって、ただ単に体重を増やすだけだと、動きが鈍くなってしまうし、稽古不足にもなりがちで、ケガも増える。そして、また、淡泊な取組が増えてしまう、と…。「悪循環」ですね。

今の大相撲界が抱える課題のひとつかと思います。


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