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アラベスクは感情を揺さぶる。田園風景広がる畦道を思い出させてくれたり、排気ガス香る高層ビルの隙間風を思い出させてくれたり、あるいは世界の隅っこで泣いている誰かを思い出させてくれたり。

 目を閉じてアラベスクを聴く。TVの雑音からたまたま流れてきたアラベスクに耳を傾けることはあっても、クラシックを普段から聴く人以外はそんな機会なんてそうはないだろう。

 できれば、風が通る場所がいい。葉が触れ合って、名前も知らない虫が鳴いて、たまに少し離れた部屋からTVのナレーションが聞こえてくる。カーテンレースがふわっと浮いて、頬を抜けていく。そんな場所。

 畳の部屋がいい。
 あるのは一人用の灰色のソファとMacBook、そして苦いコーヒー。

 眠たくなったら寝ればいい。静かではない。いろんな音が合わさっている。スズメだって鳴いてる。

 時間の流れが遅い。目に見える風景が変わらないからだ。
 田んぼにしらさぎが降りる。一瞬目を離すと何処かへ飛んで行った。それでも時間はゆっくりと流れる。

 不思議だ。東京にいるときは、24時間でも足りないのに、この場所は1分が長い。同じ時間なのに、どうしてこうも違うのだろうか。

 時間が、お前はもっとここに居なさいと言ってるように風を走らせる。

 風、新緑、小川のせせらぎ、土の匂い。そのどれもが時間をゆっくりと動かしてるように感じる。

 その空間にアラベスクはよく合う。心地の良い旋律が時間を正常に動かしてくれる。そうアラベスクはエネルギーだ。この空間を動かすために奏でられるエネルギー。
 それは感情を揺さぶる。葛藤を感じさせる。なぜだろう?

 田園風景広がる畦道を思い出させてくれたり、排気ガス香る高層ビルの隙間風を思い出させてくれたり、あるいは世界の隅っこで泣いている誰かを思い出させてくれたり。

 空間によって、様々な風景を見せてくれる。

 外は少しだけ雨が降り出してきた。
 今度はどんな風景を見せてくれるのだろうか?

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