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2045年の日本社会と宗教者のリーダーシップ

今年から始まった「未来の住職塾NEXT」では、従来の未来の住職塾で中心テーマとしてきた「お寺のマネジメント」に加えて「宗教者のリーダーシップ」を扱っています。

従来の未来の住職塾でもリーダーシップという科目がなかったわけではなく、ビジネススクールで取り扱うような一般的なリーダーシップ論を、お坊さんの文脈に翻訳して概説するということは行っていました。ビジネススクール留学から帰ってきたばかりの私にできることは、「翻訳」作業が精一杯でした。

しかし今回、あえて「宗教者のリーダーシップ」と銘打ったのは、単なる一般的なリーダーシップ論ではなく、宗教者として必要なリーダーシップというものを、今こそ示してみたいという思いがありました。宗教リーダーはビジネスリーダーとはまた違った役割が社会から期待されているだろうし、実際そうあって欲しいからです。

そしてまた、社会の中で「宗教」というものの位置付けそのものが変化しつつあります。Post-religion化が進む世界において、宗教者への期待役割も従来のものから変わらずそのままということにはならないでしょう。今、この世界において、宗教者として生きるといことはどういうことなのかを、問い直す機会を作りたいと考えました。

越境する力

現代の、そしてこれからの宗教者に求められる力として、私は「越境する力」が大事になると思います。xx教、とか、xx宗、とか、xx教団、といった既存のムラ社会の中だけで通用する言葉に耳を傾けてくれる人の層は、これからどんどん小さくなっていきます。誰かが言ったことの受け売りではなくて、自分の身体で経験し、自分の頭で考えて、自分の言葉で語ることが、これまで以上に大切になっていくでしょう。

その力をつけるためには、居心地のよいムラ社会から飛び出して、慣れ親しんだムラの言葉がまったく通用しない、異世界にどんどん身を投じる体験を重ねることが効果的です。若者に旅や留学に出ることが推奨されるように、お坊さんも積極的に異世界に出ていって欲しいと思っています。未来の住職塾も、異なる宗教宗派の宗教者と接するという意味でそういう場の一つですし、Interfaithの集いや、海外宗教者との視察交流などもいいでしょう。

お坊さんのムラ社会として最もわかりやすいのが「宗派」ですが、私がムラ社会を出ましょうというのは、宗派を捨てろ、ということとイコールではありません。少なくとも、宗祖軽視のススメ、とは違います。未来の住職塾NEXTの「宗教者のリーダーシップ」で「Unplug and Reconnect」をコンセプトに掲げているように、日頃から縛られているものを解いて(錆びついたプラグを抜いて)、あらためて自分自身や他者や宗祖とつながり直そう、ということです。宗祖との関係の再構築といっても良いでしょう。

思い切った発想転換を促すため、「未来シナリオ」を一本書きました。「2045年の日本社会と宗教」と題し、未来の日本社会と宗教はどうなっていくのか、というひとつのシナリオです。もちろん、私が創作したシナリオにすぎませんから、未来がこのようになっている保証はまったくありません。あくまでもフィクションです。よければ読んでみてください。

未来シナリオ

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