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松本紹圭の方丈庵

このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじり仲間と対話と巡礼の旅に出ませんか? …
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記事一覧

AIと共にグッド・アンセスターになっていく未来

2030年の自立/自律社会を見据え、企業の未来がどう変わるか。Futurist/Ancestoristとして、考えてみた。 https://www.omron.com/jp/ja/about/corporate/vision/sinic/theory.html Z世代から未来の方向を読み解く 世界的なトレンドとして、プロダクトブランディングからコーポレートブランディングへのシフトがある。「どんな製品か」よりも「信頼できる企業の製品か」が重要。Z世代に象徴される未来世代は

「私とあなたとは、絆がありますでしょ」

今年のはじめ、淡交社さんより『日常からはじまるサステナビリティ: 日本の風土とSDGs』を出版いただいた。出版にあたってご協力いただいた多くの方に、心から感謝したい。 本書は第一章と第二章に分かれていて、第一章では、以下の方々との対談を通して日本の風土に根付くサステナビリティを探り、第二章では「仏教とみる、私たちのウェルビーイング」をテーマに綴った。 対談させていただいた方々は、それぞれに、それぞれの尊い道を歩まれている。人生を通して、自身を含むこの世の豊かさや幸せを問い

生成AI時代における人間の仕事とは

生成AIの発展によって、今後「残る仕事」と「消える仕事」があると言われる。 <残る仕事> 創造性や芸術性を必要とする仕事 a. アート、音楽、デザインなど、独自の感性や想像力を必要とする仕事 b. 映画監督、作家、漫画家、建築家など   人間関係や共感を必要とする仕事 a. カウンセリング、セラピスト、ソーシャルワーカーなど、対人支援を行う仕事 b. 教師、看護師、介護士など、人間関係の構築が重要な仕事   高度な専門知識と判断力を必要とする仕事 a. 医師、弁護士、

限界芸術としての掃除

大蓮寺の秋田光軌さんが「生命の革新」としての限界芸術について論じた論文が、涙骨賞を受賞していたことを、大変遅ればせながら、最近知った。いかに自分が仏教界の話題から遠ざかっているか、思い知らされた。ともあれ、このタイミングで知ることになったのも何かの縁ということで、ありがたいことに全文公開されている論文を中外日報ウェブサイトで拝読した。 大蓮寺は大阪で有数の有名なパドマ幼稚園を経営しているが、秋田光軌さんは、その幼稚園での子どもたちの遊びの姿を通じて「生命が輝く」瞬間を紹介し

Latest news 2024.7.29

◉ UNDP『Signals Spotlight 2024』 掲載 ◉ 朝日新聞デジタル連載「松本紹圭の抜苦与楽」(第7回) 掲載 ▼ 期間限定 無料公開ページ(〜7月30日AM 9:01) ◉ イベント登壇|都市と循環@京都 ◉ Speakin社 冊子掲載

"民藝"という、ものと、こころと

今年のはじめ、淡交社さんより『日常からはじまるサステナビリティ: 日本の風土とSDGs』を出版いただいた。出版にあたってご協力いただいた多くの方に、心から感謝したい。 本書は第一章と第二章に分かれていて、第一章では、以下の方々との対談を通して日本の風土に根付くサステナビリティを探り、第二章では「仏教とみる、私たちのウェルビーイング」をテーマに綴った。 対談させていただいた方々は、それぞれに、それぞれの尊い道を歩まれている。 人生を通して、自身を含むこの世の豊かさや幸せを

バルセロナより

先日、スペイン バルセロナで開催された「The Festival of Consciousness」(2024.7.12-7.14)に、光栄にも、スピーカー参加するご縁をいただきました。参加して思い立ったことを Linkedin に投稿しています。ここでは日本語を添えて、シェアしたいと思います。 2024.7.15   “How can business people contribute to the world peace?”   I have an idea. I h

仏教的対話論

武蔵野大学で関わっているカンファ・ツリー・ヴィレッジでは、2年間、計4回の、対話の場を開いてきた。今もまだ、囲んだ焚き火の跡が生々しく残っているような、そんな気配がキャンパスのそこここに残っている。この場で重ねられた対話を振り返ってみた時、未来世代に何を渡すことができるだろうか。二つ、あると思う。それは、「どのような対話がなされたか」と、「どのように対話がなされたか」だ。今ここで、一旦、振り返って考えてみたい。 1つ目、どのような対話がなされたか。それは、なされた対話の中身

声聞(しょうもん)

ポーリン・オリヴェロス(Pauline Oliveros)という前衛音楽家の存在を知り、彼女の書いた『ソニック・メディテーション(音の瞑想)』という本を読んだ。 本書は、1970年代初頭に作曲家でありアコーディオン奏者でもある著者、ポーリン・オリヴェロスによって開発された、一連の即興的で参加型の音楽実践の解説書だ。オリヴェロスは音楽を通じたコミュニケーションと意識の拡大への興味から「ソニック・メディテーション」を考案した。このメディテーションは、参加者が音を通じて内的および

森田さんと春山さんの対話メモ

森田真生さんと春山慶彦さんの対談に参加してきた。 自然と人間の関係、エネルギーと生命の本質、地域社会の在り方についての深い洞察に満ちたものであった。以下、内容についてメモから思い起こした(再構成した)ものを、シェアしたい。

仏教の視点からJust War Theoryを考える

Ethics of Warという学問分野について Ethics of War(戦争倫理学)は、戦争の正当性や戦争中の行動の倫理的側面を評価・分析する学問分野であり、戦争の開始から戦闘行為、戦後の処理に至るまでの全ての段階での倫理的基準を提供する。この分野は、哲学、政治学、法学、宗教学など多岐にわたる学問領域からの視点を統合し、歴史的な伝統と現代の課題の双方を反映しつつ、戦争に関する倫理的な問題を検討するものである。

武道と仏道

先日、『武道と仏道』をテーマに執筆の依頼をいただきました。私にとって「道」といえば仏道で、武道についてはまったくの門外漢です。武道を語れる身ではないものの、武道と仏道には多くの共通点がるように思います。 ーー系譜を重んじ、師から弟子へ面授で受け継がれること。流派の型が確立されており、エコシステムが回っていること。身体性・精神性を伴う人間形成を大切にし、その過程に段階はあっても、目的は比較や勝負を超えていること。人が集い、道を深める鍛錬の道場があり、場や道具は神聖なものとして、

クリスチャン・マスビアウ氏との対談からの考察

世界でベストセラーとなった『センスメイキング』の著者であり研究者かつ起業家のクリスチャン・マスビアウ氏にお会いした。 ビッグデータが導き出すアルゴリズムは、大きなスケールの傾向を捉えることは出来たとしても、体験的に展開される多くの真実を取りこぼす。AIが人間の生命活動・社会活動を支える時代こそ、地道な観察から読み取る人文科学の知見が必要であるとマスビアウ氏は提唱する。彼は日本の民間シンクタンク日本医療政策機構 のシニアフェローでもあり、今回、マスビアウ氏の来日にあわせて、同

法然と親鸞〜パロールとエクリチュール〜

人が扱う言語について、パロールとエクリチュールという概念がある。 近代の哲学者ジャック・デリダは、音声言語(話しことば・聞きことば=パロール)と記述言語(書きことば・読みことば=エクリチュール)について議論した。 念仏(声)による仏道を示した法然と、師匠 法然の教えをテキストによって説いて残した親鸞の関係性も、パロールとエクリチュールで説明できそうだ。 Voicy でしゃべってみたので、ここはパロールのままシェアしよう。