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「遅いインターネット」もやっぱり掃除で

以前からその発言に注目してきた宇野常寛さんの新刊『遅いインターネット』を読み始めたら、あまりにも自分の問題意識と重なるところが多過ぎて、一気読みした上で、二度目読み。僕がこれまでこのnote方丈庵で書いてきたことがすべて宇野さんの受け売りだったんじゃないかと思われそうなくらい、重なるところが多い。同じ時代の空気を吸っているわけだから、不思議ではないのかもしれないけれど。とにかく、このnoteを読んでくださっているあなたには、必読の本として心からオススメしたいです。

宇野常寛さん『遅いインターネット』

たくさんの共感とインスピレーションを得て、とてもすべては書ききれないけれど、記憶がフレッシュなうちに思いつくところをメモ。本そのものがとても分かりやすく読みやすく噛み砕いて書かれているので、僕がさらに解説を加えるような野暮なことはせず、以降は本を読んだ前提で書くとします。

Anywhere住人とSomewhere住人。そしてNowhereへ

トランプ大統領が誕生した時、日本の外にいる僕の友人たちの間では「トランプが大統領になるなんて、最悪だ」とこぼすのが半ば挨拶のようになっていました。”Make America Great Again”を合言葉に、メキシコとの国境に壁を作るとか、移民の入国制限を厳しくするとか、自国ファーストのナショナリスティックなその姿勢は、問答無用に「悪」であると友人たちに受け止められていたし、僕自身も同じ感覚を持っていました。そして、トランプ大統領がなぜ当選したのか、まったく理解できませんでした。

でも、その後少し頭を冷やして分かったのは、支持する人がいるから、当選したのだということです。トランプ大統領を支持したのは、アメリカの東海岸や西海岸の富裕でリベラルな層ではなく、好調な経済の恩恵を受けていない比較的所得や教育の高くない地域の人でした。そして、僕の海外の友人といえば、その大部分が世界経済フォーラムのYoung Global Leadersのコミュニティで出会った人たちなので、アメリカ国内で言えば、東海岸か西海岸に圧倒的に偏っているし、アメリカ以外でも、世界中の都市部を拠点に国境を超えて活動するグローバル感覚が当たり前になった人ばかり。ダボス会議自体、経済的にも価値観的にもAnywhereな人たちしか集まらないし、そこでの議論も「あらゆるボーダーのない世界=良い世界」ということが前提となっているので、僕自身も(経済力はないくせに)その影響をかなり受けているんだなと自覚しました。でも、「壁のない世界」を恐れ、「壁のある世界」を求める人=Somewhereの住人たちも存在する。宇野さんのnoteにそのあたりのことが書いてあるので、よければご参考ください。

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