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美容教育という特殊性・教育の本質

美容師・カメラマンのジョウホウです。僕は数年前からバンタンデザイン研究所大阪校で講師をしている。

そこでは高校を卒業して美容師やヘアメイク、ファッションデザイナーなどのクリエイターを志す子達がいる訳だが中にはフリーターや大学生、社会人などを経て入学してくる子たちもいる。

そんな中面白いのが、以外にもこの学校には高等部が存在する。
中学生の間に職業としてのクリエイターに興味を持ち、入学してくるのだ。

今回はそんな高等部の子たちについてちょっと書こう。

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専門学校高等部や通信制高校という選択

高校生や専門学生というのは大人でもなく子供でもない成長段階の途中だ。近くで見ていて思うのだが、ごく短期間で心身共に成長し、感受性が豊かで羨ましく思う。

ただこの年代の専門学生の子たちはハッキリ言っておバカさんである。
(これを読んでいる学生さんは気を悪くしたらすいません。)
というのも、大体の子は勉強が苦手で中学までははみ出し者だった子もいたかもしれない。 「勉強」という括りの中での偏差値は、はっきり言って低い子が大半だ。
もし勉強が出来ればクリエイター系の職業を選択することは高確率で出てこない。多くの学校が未だに学力至上主義で偏差値の高い高校への進学を良しとしている。
大半の人はここに疑問を抱かないだろう。
確かに勉強が出来るというのは将来職業を選択する上で大きなアドバンテージになる。
研究職など大学を出ていないと就けない職業はたくさんあるだろう。
勉強は大事である。

さてそんな中、この子たちは貴重な高校の3年間という時間を所謂 ”普通” とは違う環境に身を置いている。クリエイターになるための知識とスキルを身につけるためにこの道を選んだ。はっきり言って相当な覚悟をした子もいるだろう。
上記でも触れたが入学を決めた時点で選択できない仕事がある訳だ。
大卒の資格が必要な職業はアウトだ。
通信制高校とのダブルスクールになるため卒業時には高卒認定は貰えるのだがその後大学受験は厳しいだろう。
それこそ人並みならぬ努力が必要だ。

高校生のポテンシャル

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そんな中この子たちとコミュニケーションをとっているうえで気づいたことがある

まず最初に驚かされるのだが、技術面での習得の速さだ。
驚くほど速い。
その日に教えたことはクオリティに差はあれどその日に出来てしまう。
恐らく「とりあえずやってみる精神」なのだろう。教えられたことを先入観なく見たままやる。これは18歳以上の専門学生には意外と難しいようだ。
実際不思議なのだが、教えた事と違うやり方で練習して我流になってしまう子が、18歳以上(以下、基礎科生・本科性・研究科生)では毎年ある一定数いるように感じる。大した問題では無いのだが同じことを何回も教えなければ直らないのだ。

中学や高校といった思春期は、ある程度、考え方の傾向が形成される期間でもある。
この期間に経験したことは後の人格形成に大きく関わってくるのだろう。
そしてこの期間こそがよく聞く「頭が硬くなる」期間なのだ。
柔軟な頭を持ってる子たちは、まだ判断基準が無く、初めて教わることはそれが基準になる。
しかも、講義系の授業を嫌がる子たちは多いが、実技中心の美容教育では初期のコミュニケーションさえちゃんとすれば授業自体を嫌がる子は少ない。

余談だが、講師もしている理学療法士さんの話では、受け持っている授業は100パーセント講義のみで正直辛いらしい。
一コマ90分間、全員の集中力を持続させる面白い授業はまず無理だと言っていた。
内容が堅苦しい・難しい・そもそも面白くない。
間に小話を挟んだり休憩を入れたりと、工夫をしなければもたないそうだ。
きっとその生徒さんたちものめり込みさえすれば驚くほど伸びるのであろうがそこに持っていくには教育者の苦悩があるのだ。

考える力とゴールデンエイジ

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↑ 生徒作品 https://www.instagram.com/sumiren_0126/

もう一つ高校生のポテンシャルを感じる部分がある。先程は技術面についてだったが、今度はメンタルな部分が大きな割合を占める、発想力や想像力についてだ。

僕が教えているのはヘアメイクや美容師に対してなのだが、自身はカメラマンでもあるので、生徒たちのヘアメイク作品もたまに撮ったりしている。
そこで感覚的にではあるが感じていることがある。

生徒たちに対して撮影のコンセプトやテーマを決めるのだが、あまり縛りなく、自由に考えさせる場合が多い。
その際、専門学生(18歳以上)はテーマを決めるのに時間がかかる。
やりたいこと・やってみたいこと・内側にある「欲」みたいなものがなかなかアウトプットされてこない。
こちらからアドバイスしたり質問したりして誘導してあげることが多い。

一方、高校生に関しては生徒側からどんどん質問が来る。ある程度やりたいことが形になりそれをどうやったらデザインに落とし込めるかの技術・手法についての質問が最初に来るのだ。
頭の中ではもうコンセプトが出来上がってるらしい。
一人一人の差はあれど専門学生・高校生というくくりで見ると大きな違いが出ているように感じる。

そしてここ数年、面白いことが起こっている。

卒業展示会が毎年行われるのだが、これは全卒業生によるファッションショー形式の無差別級コンテストの様なものだ。
グランプリ、準グランプリ、成績上位者が一目瞭然になる。

話の流れからもうお察しの方もいるだろうがそこでのグランプリは「高校生」でした。
そして準グランプリ、成績上位者も高校生が名前を連ねていた。
本科生・研究科生は何をしているのかと問いたいところだが、これが発想力・想像力の差なのだ。クリエイティビティの高い分野に関して学ぶのは早ければ早いほうがいい

高校生のバイタリティ

しかも明らかに制作過程での熱量に差があった。
本科生・研究科生は大体が一人1~2体だった
それに対して高等部の子たちには驚かされた。

ある子は一人で3体作ると言い、じゃあ私は4体、じゃあ私は・・・、というノリで話をしてる高校生がいたのだが、製作期間も限られているのにさすがにそんなには無理だろうと思っていた。

だが実際当日の様子をInstagramのストーリーズで見ていると4~5体のモデルが歩いていた。
正直驚いた。こいつらすげーなぁと。
クオリティもそれなりに高いし、その子の個性・世界観がしっかり出ていて見ていて面白い。
本当によく頑張った。
卒業式では正直に感想を伝えた。

バンタン史上初の快挙

もう一つ事件があった。

バンタンにはもう一つ、「カッティングエッジ」というファッションショーがある。
2006年から始まり卒展と並ぶ2大コンテストなのだが、大阪校の2019年のグランプリ受賞者は凄かった。
なんと2018年、2019年の2年連続のグランプリを勝ち取ったのだ。
これは東京のバンタンも含め史上初らしい。
正直この子については、いつも準備が足りず、頭の中にあるものを形にするのにかなり遠回りをするタイプで、講師陣のサポートがなければ作品は完成しなかっただろう。だがアイディア・想像力といった点では間違いなく断トツだった。2月の卒展も楽しみだ。(今回もちゃんと完成するかは不安であるw)

中高生に向けて

さてこの時期受験生は必死に勉強して入試に備えているだろう。どうか体調に気を付けて頑張ってほしい。
今すでにちゃんと目標があるならそれに向かってそのまま邁進して欲しい。
受験生でもいまだ進路に悩んでいたり、受験生ではなくまだあまり進路について漠然としている子たちにはぜひ選択肢としての専門学校高等部や通信制高校を知っておいてほしい。
やりたいことがあるならそれを思いっきりできる環境を自ら探してそこに行くべきだ。早ければ早いほうがいい。
最近の有名なところで行くとフィギュアスケートの「紀平梨花」さんも通信制高校だ。2018年4月から通信制高校に籍を置いている。普段は関大のKFSCというチームに所属しそこで日々猛練習をしている。スケートに打ち込むための通信制高校という選択だ。
もう一人紹介しよう。
「みちょぱ」こと池田美優さん。彼女ももう卒業しているが通信制高校だ。
モデル業が忙しくなりそちらに専念するため途中で通信制高校に入学している。
他にも山ほどいるが紹介しきれないので名前だけ挙げておこう。

広瀬すず/女優
榮倉奈々/女優
市原隼人/俳優
岡田将生/俳優
三浦翔平/俳優
北川景子/女優
永野芽郁/女優
志尊淳/俳優
高橋みなみ/女性アイドル
板野友美/女性アイドル
前田敦子/女性アイドル
小嶋陽菜/女性アイドル
指原莉乃/女性アイドル
川栄李奈/女性アイドル
斎藤飛鳥/女性アイドル
西野七瀬/女性アイドル
堂本光一/男性アイドル
相葉雅紀/男性アイドル
二宮和也/男性アイドル
平野紫耀/男性アイドル
赤西仁/男性アイドル
藤田ニコル/モデル
森泉/モデル
KenKen/ベーシスト
川嶋あい/シンガーソングライター
小林可夢偉/F1ドライバー
広瀬優一/囲碁棋士、第43期新人王
上野愛咲美/囲碁棋士、第21・22期女流棋聖
望月慎太郎/テニス選手、ジュニア世界ランキング1位経験者

こう見るとすごい顔ぶれだ。

ちなみに有名人じゃなくてもこんなデータもある。
通信制高校で勉強に専念し、一流大学に合格したケースも多々ある。
この子たちは打ち込むものがクリエイティブな分野ではなく勉強だっただけで上記に挙げた有名人とやってることは何ら変わりはないように思う。
もしかしたら普通科の高校で足並み揃えて勉強するのが物足りない子だったのかもしれない。
とにかく彼ら彼女らは打ち込めるものを持ち、それに積極的に取り組める環境を選んだのだ。

どうか中高生の皆さん、自分の好きなことを辞めないでほしい。
好きなことは得意なことになるかもしれない。
唯一無二の価値を生み出すかもしれない。
世界を広く見ていろんな選択肢があることを知ってほしい。
そのうえで将来の進路についてたまには考えてほしい。
仕事を始めたときにいっぱいかせげるかもよ。w
ちなみに嫌な仕事でいっぱい稼いで趣味を充実させるのもアリ。
目的をもって考えて将来を見据えてほしい。

教育者に向けて

さて教育者側にも伝えたい。
海外では中学の間にアカデミックな分野とクリエイティビティの高い分野への進路を考えさせ、高校からはある程度違う分野に分かれる制度が一般的だ。
日本のように「とりあえず高校に」というのははっきり言って古い。
僕も今となってはタラレバの話だが、あと3年早く美容の道に進んでいればと今の高等部の子たちをとてもうらやましく思う。

このスポーツが強いからこの高校へ行く。この勉強をしたいからこの大学へ行く。
それはアリだ。
目的を持った進学だ。
可能性を持った学生が何も目的を持っていないのは残念過ぎる。
「とりあえず」なるべくいい高校へ・大学へと促すのは絶対だめだ。
「勉強」というのは前にも触れたが、選択できる職業を増やすという意味でものすごく大事だ。
そこをはき違えないで欲しい。
一人一人のことを考え一人一人にあったいろんな道を示してあげてほしい。
卒業までにその子が打ち込めるものを見つけられるように一人一人に向き合ってほしい。

大体の目安だが普通高校では年間の授業日数は200日前後だ。
実際問題不可能ではあるのだが、40人クラス・全員がちゃんと出席したとして一人にじっくり向き合うことができるのは5日間しかない。
しかもそのうち話し込むとなると放課後の30分ぐらいだろうか。
30分×5日×3年=450分(3年間で7時間30分、1年間で2時間30分)
これが普通高校における生徒との真面目な対話ができる時間かもしれない。
この時間を計算して自分でゾッとした。
こんなに短いのか。

勉強させるのも、もちろん大事だ。
だがそれ以上に大事なものが間違いなくある。
どうか生徒に向き合う時間を大事にしてほしい。

教育の本質

僕は今、仕事もプライベートも楽しいこと・好きなこと・興味のあることしかやらない。
「教育」についても興味があるから始めたし、楽しいから続けている。
教員免許は持っていないし、ほかの講師には初対面で生徒に間違われるし、この数年の教育者としての評価はどうだか分からないが、今は自身をもって「教育者」をしている。
これからも美容に限らず全ての学生がどうか今後、楽しいことをしていられる、打ち込めるものがある、そんな人が一人でも増えればいいなと思ってここれからも生徒たちに向き合っていく。


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