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韓国映画『声もなく』~最も辛くて過酷な時に、その隣では~

2月17日木曜日に、シネマート新宿で観て来ました。シネマート新宿は、アジア・韓国映画を多く公開しているのがユニークですね。『声もなく』は韓国犯罪ノワール映画のジャンルに当てはまると思うのですが、女性のお客さんが多かったこと、それもペアで来ていたことも印象的でした。

監督と脚本はホン・ウィジョンさん、主演はユ・アインさん。

私は、イ・チャンドン監督の『バーニング』でのユ・アインさんの無気力な役どころ、徐々に感情が静かに爆発していく演技が印象に残っており、その雰囲気を『声もなく』ポスターから感じ取り、この映画を観に行きました。

(見出し画像参照 https://twitter.com/koemonaku

あらすじ

普段は鶏卵販売をしながらも、犯罪組織から命令され死体処理などの裏稼業で生計を立てる、口のきけない青年テイン(ユ・アイン)と相棒のチャンボク(ユ・ジェミョン)。ある日、犯罪組織のヨンソクからの無茶な命令で、身代金目的で誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を1日だけ預かることになる。ところが、依頼をしたヨンソクが組織に始末され、ふたりは予期せず誘拐事件に巻き込まていくことに…。

(あらすじ参照https://www.cinemart.co.jp/theater/shinjuku/movie/001030.html

私の感想

私は、この映画を観終わって、2つの相反する要素が隣り合う世界観が魅力的だなぁと思いました。

犯罪に手を染める口のきけない青年が、ふとしたことをきっかけに少女を預かることになるんですが、ハートフルな交流を描く映画ではないんですね。

この映画の舞台背景には頻繁に、色が混ざり合ったような茜色の空模様が、印象的に映されます。

それと同じように青年の生活に、少女の価値観が浸透していく。その様子を淡々と描いていくんですが、それが芸術的でもあり、感動的でもあります。

特に印象に残ったシーン

2つありますね。

1つは、テインが少女の目の前で、死体処理の仕事をしているところです。運んでいる死体から血が滴り落ちると、少女がその血の周りに花びらを描くんですよね。最も残酷な瞬間であると同時に、最も美しい瞬間、場面でした。

もう1つは、テインと相棒のチャンボクが、身代金要求の手紙に同封するために、少女の写真を撮るところです。辛そうな状況を知らせる写真にしなきゃいけないのに、誘拐後の生活を楽しむ少女がつい笑っちゃうんですよね。こうした犯罪とユーモアのバランスが抜群に上手いんですよ、この映画!!

私も、過酷な状況であるはずなのに、ふと気が抜ける瞬間ってありました。私がある日、翌日に転職面接を控えていて、ファーストフード店で問答をひたすら暗記していた時。近くの席では、そのお店のバイト面接をしている大学生の男の子がいたんですよね。

その男の子は、凄くマイペースにシフトや大学生活などの受け答えをしていて、店長も「全く仕方ないよなぁ」という感じで面接していたんですよね。

その男の子の、敵なしのマイペース感がなんだか面白かったりして、緊張していた自分の心の中がなんだかつい和らいでしまった経験がありましたね。

どんな人に見て欲しいか

私はこの映画、手一杯で忙しい、困り事があって映画どころではないっていう人にこそ観てもらいたいですね。

実は辛いなぁっと思ったその隣では、ユーモアがあったり、つい楽しんでしまうものがあったりする。それが人の生活の面白いとこだと思うんですよ。

『声もなく』は観ている人に、そういう相反する価値観の面白さや魅力を、セリフではなくて、まさに映像でしっかり自然に伝えて来てくれるんです。

ぜひお薦めしますよ🎬

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