思考の足跡(ログ)を残す「ビジュアルシンキング」
デザインの仕事をする中で、意外と“思考する”ということを意識的に目的として視覚化する割合って少なかったりします。
もちろんアイデアスケッチをするときは「思考する」ときですが、それ以上に相手に“見せる”ための視覚化に時間を取られる事のほうが多々あります。きっとデザイナーとの付合いで、目にするものは後者のクオリティを高めたスケッチのほうが多いと思います。なので、成果物だけを見ていてもデザイナーの思考プロセスを見てとれる機会はなかなかないと思います。
そうすると「デザイン」って、要求を出せば何かしら“良い感じの答え”が返ってくるみたいなブラックボックスになってしまいます。また、「デザイン思考」について学んでも、『デザイナーってそんなことも考えてるんだぁ』くらいの気づきで終わってしまうような気がします。
思考の足跡(ログ)を残す
そう言う意味でも、リアリティを持ってプロセスを視覚化して見せる事は、自分たちの価値を理解してもらうためにも大事なことだと思います。
「ライブデザイニング」という方法もあるようで、まさにその場で行うライブ感には相当なリアリティと説得力があると思います!とは言え、なかなかいきなりリアルタイムで行うのは結構ハードル高いと思います。まずは足跡(ログ)を付けていくことから始めると良いのかもしれません。
思考とビジュアル化をくり返して、思考を深めていくというものが「ビジュアルシンキング」ですが、思考した経緯をビジュアル化した状態で残しておくことも、仕事をしていく中で必要になると思います。
じゃあ、具体的にどんな感じなの?
実際、シミュレーションとして仮テーマを作ってやってみました。
「料理が楽しくなるキッチンツール」
おおむね、これくらいのフワッとしたテーマからスタートすることが多いです。一応、この中にはテーマとして「どんなプロダクトを?」と「(対象者が)どうなるために?」というところをザックリと定義しました。ありきたりなテーマ設定です。
ここから、具体的に「誰が使うの?」「”楽しい”とはどんな状態なの?」と言ったところを深めていきたいと思います。フワッとしたテーマから、具体的なコンセプトを彫り起こしていくような作業です。
ここでは、まずターゲットをあげています。1行程ずつ1枚にまとめて描くことが見やすさのポイントかなと思います。想定されるターゲットを左から一人ずつあげていきました。
ここから会社としてのミッションや、新規の市場を狙って、などなど…戦略のもとでターゲットを絞っていきます。そのためには、ターゲットの属性を散らしておいたほうが良いですね。
ここでは、なにか問題を抱えてそう&自分が一番共感してインサイトを発想できそうな人を選んでいます。(わたしもお菓子づくり好きなので)
そして、ターゲットのインサイトに迫っていきます。
「お菓子づくりは、ストレス発散!私にとってはスポーツだ!」
「お菓子づくり=スポーツ」というメタファーが出てきました。
決して楽(ラク)ではないし、体力も消耗して疲れるけど、やりきった充実感と清々しい気持ちになってるという体験は「スポーツ」と似ているなぁ…という気づきから、発想されました。
つまり、自分のパフォーマンスを存分に引き出してくれて、適度な手応えと成果が実感できることが、「キッチンツール」というプロダクトを通じて得られる、この人の”楽しい”であると定義しました。ストレス発散は、その結果であり「ストレスが発散できる=楽しい」とはなりません。むしろ、普段から使っている事で、ストレスを溜め込まないというほうが良いですよね。
それをコンセプト(実現したい姿)として構築します。
「体によく馴染むスポーツギアのように、使う人のパフォーマンスを引き出して、自分の思いに共鳴してくれるキッチンツール」
この中には、以下のような実現する際に解決すべき課題を抱えています。これは、ふわっとしたテーマの段階では見えていなっていなかったデザイン要件です。
・使う人の身体に合うようになっている事(手の大きさ、筋力etc...)
・使う人の力の補助や技能を高める事(パフォーマンスを引き出す)
・使う人の思い通りに扱えて、ツールと共鳴しているように感じられる事
このあと、これを解決するアイデアを「アイデアスケッチ」によって拡散させます。
…続きが気になるところではありますが、今回はアイデアスケッチに至るまでの「どんな"実現したい!"という姿をデザインするのか?」と言うところまでの思考の足跡(ログ)を残しました。
絵にしなくても文章でも事は足りるし、パワポでまとめれば良いじゃん。ではありますが、思考したことを残すには、「ビジュアルで」「自分の脳と直結された体(手)を使って」行うことはライブ感と同じように、相手へ活き活きと伝わるように思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?