213日目。【短編】朝の電車。

ふと、山手線に乗り続けていたらどこまで行けるのか確かめたくなった。

1日乗車券を買い、(勿論、初乗り運賃で乗り続けることはしない)朝6時頃、乗り込んだ。

目の前のお姉さんは寝ている。

隣のお兄さんは怖い顔でタブレットを触っている。

僕は死んだ目でスマホを触っている。

誰も何も見ていない。

7駅ほど行ったところで、隣のお兄さんは降りていった。

お姉さんは眠り続けている。

このまま放っておけばずっと寝てるんじゃないか。

スマホを触るのも飽きたので、外の景色を見た。

見たことのない景色だ。

職場の最寄り駅を過ぎたからな。

変な形のビルだ。

バブルっぽい。

道の太さも変な感じ。

すれ違えるのかなアレ。

お姉さんはずっと起きない。

まだまだ駅はあるもんな。

どっかで起きるだろう。

あっ、聞いたことあるけど全く降りたことない駅だ。

本当に山手線の駅かってくらい小さいな。

結構人は乗ってくるんだ。

それでもガラガラなのには変わりないけど。

もうそろそろ半分が過ぎようとしている。

これでやっと半分。

結構体感時間長いなぁ。

半分だけで冒険みたい。

隣は、お兄さん→おじさん→おじさん→おばさん、の変遷だった。

誰も興味ないか。

失敬。

あれ、目の前のお姉さん、まだ起きないけど。

山手線半分寝てるってことは寝過ごしじゃないか？？

おっとどうしよう。

急に「寝過ごしていませんか？」って言われるのも怖いだろうな…。

う～ん、もう5駅で一周だ。

一周して起きなかったら、勇気を出して起こしてみよう。

…起きない。

仕方ない、起こすか。

「大丈夫ですか？寝過ごしてませんか？」

そう言われて、目が覚めた。

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