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映画 観たよ

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わりと映画が好きです。というか映画館に行くのが好きです。忘備録的な感想集。
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2023年2月の記事一覧

愛しさと切なさと切なさと『ボーンズ アンド オール』 (映画感想文)

愛しさと切なさと切なさと『ボーンズ アンド オール』 (映画感想文)

一昨年、朝井リョウの『正欲』という小説が結構よかったんですよね。
簡単にいえば『水フェチ』(水飛沫や水の姿が性の対象になる)という、この世のマイノリティ中のマイノリティ、大抵の人が想像すらしていないような性癖を生まれ持った人たちのお話。

ダイバーシティ、ダイバーシティと大いに謳う世の中ですが「多種多様な人が互いの考え方の違いや個性を受け入れながらともに生きていく」なんてこと本当にできるつもり?

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感動を求める自分が嫌になる『イニシェリン島の精霊』 (映画感想文)

感動を求める自分が嫌になる『イニシェリン島の精霊』 (映画感想文)

ネタバレします。
嫌だったら即退散を!

「感動をありがとう!」とか簡単に言う人は苦手です。
だからといって「感動」が嫌いなわけではありません。むしろ大好物です。オリンピックとか、観るし。
だけど、常に「感動」を欲しがる「感動乞食」ではありたくない、という気持ちがどこかあります。
なんでだろ?
素直に感動すればいいのに?

とにかく面倒くさいタイプの人間なのです。

「感動」に関して、こっちはこん

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やんちゃで可愛い『バビロン』 (映画感想文)

やんちゃで可愛い『バビロン』 (映画感想文)

ネタバレします!
嫌な人は即退散を!

私は映画好きとして今の時期が一年で一番楽しいです。
3月に発表される米アカデミー賞のノミネート作が次々と公開されるから。主要な作品を発表までに観て自分なりに予想をたてたりなんかします。

その一方で「アカデミー賞最有力!」などと煽っているわりにはそうでもない、映画会社の思惑通りにはアカデミー賞に絡めなかったのかな?というような作品も、毎年、必ずあって、そんな

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エゴイストじゃなかった『エゴイスト』 (映画感想文)

エゴイストじゃなかった『エゴイスト』 (映画感想文)

ネタバレします!
嫌な人は即退散を!

私みたいに性格の悪いオカマからすれば、だいたい、ゲイの恋愛映画の主演が鈴木亮平という時点で、まったくをもって気に入らないわけです。「ゲイって鈴木亮平みたいな男っぽい男、好きっしょ?」と乱暴に言われているみたいで。

しかも、恋人役が宮沢氷魚。『his』という映画でもゲイ役をやっていました。色白でちょっと中性っぽい顔立ちとナイーブな雰囲気がいかにもゲイっぽくな

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人は大人になるたび弱くなるよね『FALL/フォール』 (映画感想文)

人は大人になるたび弱くなるよね『FALL/フォール』 (映画感想文)

ネタバレします。
嫌だったら即退散を!

とはいえ、人は大人になるたび強くなるもの、と信じていました。
若い頃は。
大人になるほど、知恵も経験も増えて、死をも恐れぬ強靭な存在になってゆくのだろうと。
だけど、やっぱり、浅香さんが歌うとおり、弱くなってゆくもののようです、大人になるたび、人というものは。
自分が大人になればなるほど、そう、実感します。

私は歳を重ねるほどに「高い場所」に恐怖を感じる

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記憶舞い戻る『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』 (映画感想文)

記憶舞い戻る『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』 (映画感想文)

ネタバレします。
嫌だったら即退散を!

撮影スタッフの若い女性がロンドンの街を何かに怯えながら逃げる冒頭シーンを観て、ふっ、と数十年ぶりに舞い戻った記憶がありました。

それはまだ高校生だったころのこと。

夜の公園のトイレで小を足していると、突然、私より体の大きな外国人2人が入ってきて襲われました。1人に口を塞がれ、もう1人に体を持たれ、彼らは私を一番奥の個室に連れ込もうとしました。

そこは

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