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多様なメンバーをまとめるリーダーには「感情のファシリテーション」が必要だ

今日は、マネージャー(管理職)向けに「異なる部門の多様なメンバーを上手にまとめるには?」について書いてみたいと思います。

マネージャーの役割が大きく変わる

新型コロナによる働き方の変化は、特にマネージャーの役割を変えると言われています。

また、一部の会社では、ニューノーマルにあわせて、マネジメントスタイルを変えようとしている会社も出始めています。管理職にプレーイングを求めるのではなく、マネジメント、すなわち組織を率いて成果を出すことを求めるように変わろうとしているのです。

これまでは、自らもプレイヤーとして稼ぐ「プレイングマネージャー」が多かったですが、これからは組織に変革をもたらす役割を期待されるのではないでしょうか。

例えば、現場の仕事は部下になるべく任せ、新規の顧客を開拓するプロジェクトを立ち上げたり、他部門と連携してコスト削減を行うなど、部門を跨いだ仕事が増えてくると思います。

すると、必然的に、自分の部下を管理するだけでなく、他の部門や、時には社外の人など、利害関係が一致しない人たちと働くことが増えてきます。

そんなマネージャーに必須なスキルの一つが、ファシリテーションです。

ファシリテーションが担う4つの役割

ファシリテーションと聞くと、会議の進行係かな、と思うかもしれません。しかし、ファシリテーションの定義をみてみると、会議に限定されてはいません。

ファシリテーションとは、会議やプロジェクトなどの集団活動がスムーズに進むように、また成果が上がるように支援することをいう。会議の場面の例としては、質問によって参加者の意見を引き出したり、合意に向けて論点を整理することが挙げられる。こうした働きかけにより、メンバーのモチベーションを高めたり、発想を促進することが期待されている。

会議も、それ以外の場面でも、一緒にプロジェクトを進めているメンバーに対してマネージャーが、

1.質問などで発言を促す
2.出てきた論点を整理する
3.メンバーのモチベーションを高める
4.メンバーの発想力を高める

といった事を行うことで、仕事の質とスピードを高めて、成果を上げる。
それを可能にするのが、ファシリテーションです。

では、具体的にファシリテーションのスキルとは、どのようなものなのか。

実は、ファシリテーションスキルに関する本や記事は、すでに世の中にたくさんあります。

ですので、具体的なスキルについてはそちらに譲って、ここでは、それらの細かいスキルの大前提となる、「感情のファシリテーション」という視点に絞って、実例を交えてお話ししたいと思います。

この「感情のファシリテーション」は、特にリモートワークで対面の機会が減っている今、大事な考え方です。

これまでは、タバコ部屋や日頃の会話の中で無意識的に「感情のファシリテーション」が可能でした。しかし、対面機会が減っている今、メンバーの感情を察知する場面は減っています。

そんな中、マネージャーは何を意識的に行なうべきなのかについて、考えてみたいと思います。

なぜ海外拠点は、思った通り動いてくれないのか

これは、私が講師を務める「ファシリテーション型リーダーシップコース」という研修プログラムでゲスト講師にお招きした、ある自動車会社のプロジェクトリーダーが教えてくれた話です。

その人は、ある重要な新車のプロジェクトを任されていました。

この新車の新しい挑戦の一つに、売り方の変革というものがありました。従来のような安易な値引きはせずに、しっかり価値を伝えて正規の価格で売る。そのために欠かせないのは販売店、特に海外の販売拠点の協力でした。

早速、欧米の販売拠点に(コロナ前だったので)足繁く通い、新車の売り方改革がプロジェクトにとっていかに重要なものかを理論的に説明します。夜もお酒を飲みながら、信頼関係を築いていきます。担当者も前向きに考えてくれそうです。安心して日本に帰り、各地からの提案を待っていました。

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ところが、届いた企画書は、期待していたものとはほど遠く、従来通りの代わり映えのない内容でした。

あれほど熱意を込めて説明したのに・・とショックを受けたプロジェクトリーダー。何が課題なのか、もう一度考え直します。

そして、出てきた答えは、理論的な側面ばかり重視して、現場担当者たちの感情的な側面を十分考えられなかったのではないか、ということでした。

「今日は何も決めません」と宣言する

販売拠点の現場担当者は、新車プロジェクトという視点ではこのプロジェクトリーダーのもとで働くメンバーですが、実際に仕事の評価を行うのは拠点の社長です。

新車プロジェクトで新しい販売方法に挑戦したいと思っても、拠点の社長に嫌な顔をされるかもしれないと思うと、思い切った企画は出せません。そこに課題があると、このリーダーは考えました。

そこで、このリーダーはもう一度拠点に出かけて行って、こう宣言します。

「今日のミーティングは、何も決めません。自由にアイデアを話し合いましょう。そして、良いアイデアが出てきたら、私が責任を持って拠点の社長に提案します。ですので、安心して発言してください」

すると、現場の担当者も晴れかやな顔になり、本来やりたかった企画が次々と出てくるようになって、プロジェクトがうまく進み始めたということです。

その人には、その人なりのミッションがある

この経験から、このプロジェクトリーダーが特に大事だと感じたのが「感情のファシリテーション」です。

ファシリテーションというと、発言をポストイットに書いて、整理して、まとめる、といった、理論的な側面をイメージする人も少なくありません。また、そのような行為が会議をスムーズに進めるのも間違いありません。

しかし、多様なメンバーが参加するプロジェクトで忘れてはならいのは、「新車を成功させたい」というプロジェクトのミッションとは別に「拠点の社長の評価」という個人のミッションもある、ということです。

もっと言えば、その人は、若手の育成を担う教育係でもあり、一人のお父さん(お母さん)として子育てをしていて、夜は大学院で勉強をしているかもしれません。その人には、様々な人生のミッションがあり、新車プロジェクトにへの関わり方は人それぞれです。

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そんな感情的な側面を捉えた上で、その人が100%の力を発揮できる状況を作ってあげることこそ「ファシリテーション」だということを、そのリーダーは教えてくれました。

マネージャーは、プレイヤーから舞台監督へ

マネージャーの役割が、変わってきています。

「あうん」の呼吸で繋がっていた自分のチームだけでなく、文化や背景が異なる他部門・他企業のメンバーと共に、プロジェクトを推進する仕事が増えてくると思います。

タバコ部屋や何気ない会話で無意識的に行なっていた「感情のファシリテーション」が、リモート時代には難しくなります。

リーダーに必要なのは、まず相手の感情を想像する力。そして、それを「今日は何も決めません」「社長には私が提案します」など、声に出して言う勇気。

プレイングマネージャーから、プレイヤーが生き生き活躍できるステージを作る舞台監督へと、変化していくのかもしれません。


※「ファシリテーション型リーダーシップコース」今年はオンラインで10月から開催します。今年も素敵なゲスト講師をお招きします。

※日経COMEMOのテーマ「#管理職は必要ですか」に参加しています。組織変革者としてのファシリテーター型管理職が必要だと思います。


#COMEMO #管理職は必要ですか


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