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秋晴れの一日と今日の一冊

 11月3日。抜けるような青空と、この時期ではあり得ないほどの暑さの中、福岡市中央区にある大濠公園および周辺にて「福岡市民大茶会」が開催されました。

 今回で55回目を数えるこの茶会、大濠公園内にある日本庭園茶室をはじめ、福岡市美術館や、近隣の護国神社境内等で様々な流派が茶会を開き、多くの人で賑わう秋の恒例行事となっています。

参加の流派は
・表千家
・裏千家
・南坊流
・宗徧流
・大日本茶道学会
・遠州流
・武者小路千家
・古儀茶道薮内流
・表千家不白流
(順不同)

  これほどまでに沢山の流派が一堂に会し、茶会を開催する行事はなかなかありません。事前に茶券を購入し、はやる心を抑えつつ大濠公園へ向かいました。

 慶長年間、黒田長政が福岡城を建築する時、博多湾の入江であったこの地を外濠として利用、昭和2年ここで開かれた東亜勧業博覧会を機に造園工事を行ない、昭和4年県営大濠公園として開園したものです。 
 大濠公園は福岡市のほぼ中央に位置し、総面積が約39万8千平方メートルあり、うち約22万6千平方メートルの池を有した、全国有数の水景公園です。公園内には、池の周辺約2キロメートルの周遊道、野鳥の森、児童遊園、能楽堂、日本庭園、および4つの橋で結ばれた中の島や浮見堂、ボートハウス等を配し休養、娯楽や体育の向上に利用されています。

大濠公園HPより)

 この日の大濠公園は11月12日に開催される「福岡マラソン2023」に向けて練習を行うランナーの方も多くいらっしゃり、早朝にも関わらず多くの人で賑わっていました。

 市民茶会の開催時間は午前9時~午後3時までとなっており、大濠公園日本庭園前の総合受付には9時前に到着しました。が!!既にこの人・人・人!!
皆さまお目当ての茶会に参加するために、気合十分?!準備は抜かり在りません。

 一枚の茶券に二席分の茶券がついていますので、当然二席以上の茶会に参加したい場合は複数の茶券(当日券あり)が必要となります。流派によってその日開催の茶会の回数や参加人数に上限がありますから、自分の希望する時間に席が空いているかどうかも確認が必要です。 実際、多くの流派であっという間に一日の予約が埋まっていた様で、9時前に並ぶのも思わず納得でした。

 受付で茶会の「会記」をもらいます。今回の「会記」は参加流派全ての会記が記載された冊子タイプのものでした。

 「会記」とはいわばその日の茶会の記録。茶会のご亭主(主催者)はその日の為に様々な準備をしてお客様をお迎えします。そう、茶室に飾るお軸や茶花は勿論、茶碗、茶杓から、お出しするお菓子、菓子器(お菓子を入れる器)、香合、煙草盆に至るまで心を配るのです。

 「会記」には茶会の為に準備したお道具類の作者や産地、形状や銘、箱書き等々が一つ一つ細かに記されていて、茶会に合わせ、亭主がどういった意図でその道具組みを考えたのか?を知ることができ、またその取り合わせの意図に気付き、思わずはっとしてしまう嬉しさもあったりと、茶会の最中は勿論、後日改めてその茶会に思いを馳せる楽しみもあるのです。

 会記に目を通しながら、既にワクワクが止まりません。先ずは一席目、裏千家のお席へ。

 裏千家は現在様々ある茶道流派の中でも人数、規模共に最大を誇る流派の一つです。裏千家の茶席は護国神社境内で行われていましたので、受付後、さっそくそちらへ移動。

 丁度七五三の時期とも重なっていた為、境内は薄茶席に参加する方々以外にも、晴れ着を着た子供さんやそのご家族がいらっしゃったりと、とても賑やかな雰囲気となっていました。今回の裏千家の茶席は野点(のだて)。読んで字のごとく、屋外で行う茶会です。椅子に座ってお点前をし、椅子に座ってお茶をいただく「立礼式(りゅうれいしき)」で開催されました。

 茶席というと、茶室ににじって入り、正座をして・・・というイメージがあると思いますが、立礼式であれば、通常では開催が困難な場所でも茶会が行える点、また正座に慣れていない海外の方や正座がし辛くなった高齢の方などからも非常に好評だとの事。時代や状況によって柔軟に対応できるのも魅力の一つですね!

 大寄せの茶会(沢山の人数をお招きして行う茶会)では正客(メインのお客様)次客(そのお隣に座るお客様)以外のお客様には「点て出し」といって水屋(茶会の準備等をする場所)で点てたお茶が出される事も多いのですが、今回はお稽古をされていらっしゃる小さな子供さんたちがお盆を手にお茶を運んで下さいました。きちんと着物を来て、一生懸命運んで下さるその姿の微笑ましさといったら!!思わず笑顔になってしまいます。その後、再度場所を移動して、大濠公園日本庭園内茶室に。

 こちらでは古儀茶道薮内流のお席が設けられていました。藪内流は400年余りの歴史を持つ流派。こちらは茶室でのお席故、順に茶席に入ります。筆者は表千家、裏千家の茶会に参加したことがあるのですが、古儀茶道薮内流は初参加。

 どのようなお点前なのか、興味津々だったのですが、まさに驚きの連続です。

 お点前をする方がお道具をもって点前座(お茶を点てる際に座る場所)に進む際、裏千家では建水(けんすい:お点前の最中に茶碗をすすいだ湯や水を入れる入れ物)の上に柄杓を乗せ、左手で持ち運びますが、薮内流では右手と左手にそれぞれ柄杓と建水を持って茶室に入るようでした。また、帛紗の捌き方(ふくさ:道具等を清めるための布。使用時に決まった手順と動作で折り畳む)も表千家や裏千家とはまた違う手順であることも初めて知り。

 何より目を見張ったのが、その所作の大きさです。足の運び、手の動かし方などが大振りで、思わず「男性的な動きだな」と思って見ていると、ご亭主と正客の方との会話の中でも同様の話が出ていました。

 薮内流はいわゆる千利休が完成させた「侘茶(わびちゃ)」と古田織部の「武家茶」が上手く融合された点が特徴であるとのことで、「男性的」「武家点前」と称される事が多いそう。ご亭主が「舞を舞うようなお点前、と言われる事もあるんですよ」とお話されていて、思わず納得してしまいました。

 また、お菓子やお茶を運んで下さる方々がほぼ男性で、それにもちょっとビックリ!

 偶然なのかもしれませんが、ここまで男性の方が沢山いらっしゃる(と思われる)茶会に参加したことが無かったので、こちらも流派の違いのようなものを感じました。茶道には様々な流派があり、それぞれにお点前の手順等、違いはあれど一貫して「相手への思いやり」や「気配り・心配り」の精神があります。

 「和敬清寂」この言葉を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?

 茶道の心得の一つで「互いに和をもって敬い、何事においても清らかな心を持ち、何事にも動じない心を持つ」という意味があります。茶席に入る際、白足袋(洋装の場合は白靴下)を身に着けますが、白足袋や白靴下の「白」は「清浄」を表す意味合いがあり、「清浄」を身に着けて茶席に入るというのも「和敬清寂」の「清」に当たります。

 またアクセサリーや時計などは茶席では全て外しますが、これはご亭主が茶会の為に心を込めて準備した大事なお道具等に傷をつけてはいけないという配慮があります。

 お茶を出された際に、「お点前頂戴いたします」と感謝を伝える事や、お菓子やお茶をいただく際、お隣の方に一言「お先に」と声を掛ける事、茶道の所作には一つ一つに「相手に対しての思いやり」や「気遣い」が溢れています。現代では、お茶のお稽古等をしていなければ、なかなか茶会などに参加する機会がありません。

 しかしながら、こういった「気遣いや思いやりの心」は茶道の経験の有無に係わらず、普段私達が生活を送る上でも、大事なことなのではないでしょうか。一人一人が「思いやりの心」を持てば、世の中がもっと良くなると思わずにはいられません。

 今回、市民茶会に参加して、改めて普段の自分の所作を振り返る事が出来たこと、また「思いやり・気遣い」の重要性を再認識できたのは得難い体験であったと思います。

そんな秋晴れの一日にお勧めの一冊。『おとなも学べる こども礼儀作法』。

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 礼儀作法と聞くと、思わず「食事のマナー」であったり「敬語の使い方」であったり、なんだか堅苦しいイメージを持つことも多いかと思います。勿論そういったことも大事な事ではありますが、何より大事な事は「相手を思う」気持ちを動作に込めて伝えるという事なのです。

 弊社『おとなも学べる こども礼儀作法』は様々な場面でどう振舞うと相手も自分も心地良いのか?をイラストやQ&A方式で分かりやすく解説した一冊となっています。

 これがあればあなたも「気配り・心配りの達人」になれる事間違いなし!
勿論大人の方が読んでもとっても分かりやすい内容ですので、是非お手に取ってご覧ください。

【書籍情報】
📚 おとなも学べる こども礼儀作法 
尾崎文春(日本作法会代表):著
《日本子どもの本研究会選定図書》《全国学校図書館協議会選定図》

 礼儀作法というと堅苦しく考えてしまいがちですが、基本は「相手を大切にする心」です。どうすれば「相手を大切にする」ことができるのか、「礼儀作法 まちがいさがし」などを通してゲーム感覚で基本をおさえ、どのような場でも応用がきく力を育てます。
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