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映画感想『タイムカット』

2024年から2003年にタイムスリップし、姉が殺された事件を解決していく話でした。今まで見てきたタイムスリップは大体二十世紀以前に行くものだったので、遂に二十一世紀がタイムスリップ場所になるなんてと、時代の流れに感慨深くなりました。

大切なのは


余談はさておき、映画を観る前から、何故タイムカットというタイトルなのか少し疑問でした。timeをcutするというのは、タイムスリップとは何だか違う気がしていたのです。しかし、映画を最後まで観た時に、なんとなくその意味が自分なりにわかってきた気がします。

タイムスリップをした時に主人公たちが毎度ぶち当たるのは、過去の出来事を変えたら未来の出来事が変わってしまうというものです。映画内でも例として挙げられていましたが、バックトゥザフューチャーでは、主人公が両親の出会いを邪魔してしまい、自分の存在が消えてしまうという展開がありました。俗にいう親殺しのパラドックスです。そんな理論があるのことによって、タイムスリップしたとて、やりたい放題できる映画はあまりありません。

しかしこの映画は、そんな課題をものの見事に壊します。未来を変えてしまうから、近しい誰かが殺されるのを黙って認めるしかないだとか、姉が死ななければ自分が生まれないから、姉を見殺しにするなんてできないと、主人公たちは過去を大きく変えることを選ぶのです。

感動しました。結局大切なのは今です。未来を変えちゃいけないだなんて、誰が決めたんでしょう。未来にも滅茶苦茶な奴がいて、不毛で残酷な事件が多発しています。なんとなく未来は守らなければいけないと思っていましたが、どうしてそう思っていたのでしょうか。そこまでの価値が未来にあるのでしょうか。これまでも人間というのは、どんな過去であろうと過去は過去だと受け入れて、未来に向かって今を生きていきました。例え誰かが過去を変えたとして、それを認知できるわけでもないし、結局良くも悪くも生きていくだけです。これは現実的に誰しもがタイムスリップができるようになったら、という話ではありません。たまたまタイムスリップができるようになった主人公が、わざわざ未来なんてものを考える必要がないということです。大切な人とその未来を守るための「今」を生きる決断が、素直に応援できましたし、とても好きでした。

結局、起こった事件というのも、未来からきた男が起こしたものだったので、そもそも守るべきかと悩んでいた未来そのものが偽物でしたし。僕たちにできるのは、今を生きるだけです。主人公のルーシーも、今を選択した結果、過去でそのまま暮らし続ける道を選択しました。いい選択だと思います。

展開の意外性という意味でも、メッセージ的な意味でも楽しめましたし、なるほどこれなら確かに、timeという永遠に続く流れを、cutする「TIMECUT」というタイトルがしっくりきます。cutされた断片断片を生きていくと、大切なものの見方も変わっていきます。未来を変えてはいけないという生き方も決して悪い意見ではありません。

おや

まぁ色々とおや、と思う部分もあり、最初に殺された被害者が必要な犠牲と言わんばかりにぞんざいに扱われたり、ルーシーが関与したせいで死んでしまった警備員がひたすらに可哀想だったり、勝手に最先端の会社に潜入した事実がいつの間にか消えていたり、怪しげで嫌な男はただフラれて落ち込んでいるだけの惨めな男のまま終わっていったりと、結構映画のおかしな点を見過ごしてしまう僕ですら結構ひっかかることが多かったです。

が、それを上回る面白さがありました。それぞれの人間関係の作り方も絶妙でよかったですし、1980年代の曲を使って盛り上げる映画が流行ったのを見習ってか、2000年代の曲をこれ見よがしにつかっているのも、あざといなと思いつつもノリノリになってしまいました。こうして僕も段々と古い人間になっていくのでしょうね……。



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