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なぜ都市伝説やオカルトを信じることが危ないのか

私は都市伝説やオカルトがわりと好きな方だと思いますが、かといってその内容を信じているわけではありません。

あくまでも小説を楽しむのと同じような感覚です。


一方、世間に目を向ければ、都市伝説やオカルトには細心の注意が必要だと痛感することが度々あります。

では、なぜ、それらが危険だと考えているのか?

今回はそんなお話をしようと思います。


まとめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

①想像を「楽しむこと」と「信じること」を区別する

想像を楽しむことには全く問題はないが、信じ込んでしまうことには大いに危険がある。

②正しい情報を信じられなくなる危険

想像の話はたいてい面白い一方で、現実はたいてい地味。そこで、面白い話の方に耳を傾けやすいのだが、すると事実から大きく離れてしまう。

③何でも裏の組織が悪さをしていると考える危険

怖いのは、「秘密結社が世界を操って悪さをしている」といった根拠の無い考えを信じること。すると、世界のあらゆることが(たとえ善意でも)悪意のあるものだと疑い、適切な行動がとれない。

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①想像を「楽しむこと」と「信じること」を区別する

まず、前提として、都市伝説やオカルトそのものを卑下する意図はないということを伝えておこうと思います。

あくまでも、楽しむことには問題はないですし、私もそうしたスタンスです。

しかし、都市伝説やオカルトの内容を「楽しむこと」と「信じること」を区別しないと、非常に危険です。

これから具体的にそうした説明をしていきます。


②正しい情報を信じられなくなる危険

想像の話はたいてい面白い一方で、現実はたいてい地味です。

そこで、都市伝説やオカルトはとても面白い話を提示してくれます。そして、私たちはつい、つまらない現実よりも、面白い作り話に耳を傾けてしまいやすいのです。

都市伝説にはあらゆるお話があります。

人類最初の月面着陸は陰謀だったといったもの、あるいは地球が本当は球体ではなく平面であるという中世の科学者のような発言、さらには、地球には何種類もの宇宙人がすでに訪れていて、中には爬虫類型の二足歩行のものもいるといったものまで様々です。

どれも面白いお話なのです。少なくとも地味な現実よりはよっぽど、映画のようにドラマチックだと思います。

すると、私たちはつい、面白い想像の話の方を信じたがるものです。

しかし、あらゆる作り話を信じる癖がついてしまえば、非常に危ない見方を身につけることになってしまいます。

あらゆることを根拠の無い物語で考えるようになってしまうのです。

たとえば...

・なぜ新型コロナウイルスが広がったのか→どこかの国の生物兵器だからだ!

・人間が初めて月に着陸した→それはアメリカ政府の陰謀だ!

・なぜシュメール人は最初の文明を築けたのか→宇宙人だったからだ!

といったように。

しかし、現実はもっと複雑であるうえに地味です。

新型コロナウイルスはコウモリ由来で広がったと考えられているし、月面着陸はひとえに数万人もの人々の協力のすえの偉業であり、シュメール人の技術はかなり素朴なものでした。

要するに、「正しい情報」を信じず、「それらしい物語」を信じるようになることは事実から遠ざかる行為なのです。


③何でも裏の組織が悪さをしていると考える危険

②の中でも怖いのは、「秘密結社が世界を操って悪さをしている」といった根拠の無い考えを信じることです。

すると、世界のあらゆることが(たとえ善意でも)悪意のあるものだと疑い、適切な行動がとれません。

誰かが簡単に思いつけそうな作り話を信じることは非常に危険です。

新型コロナウイルスのワクチンについても、多くのフェイクニュースがあります。

それらはたいてい、根拠もなくひたすら危険を煽るものです。たとえば、「ワクチンは、ウイルスを注入するから危ない!」「どこかの国では、ワクチン接種が始まった途端にコロナの死亡者が激増した!」といったものです。

特に、「それらしいデータ」が提示されると信じてしまいがちです。

まして、「社会は裏で悪い人たちに操作されている」と思い込んでいれば、何も信じず、「これは悪だくみに違いない」と何でも疑い、危険を煽ることで、「裏に隠れた真実」を見抜いた気分になってしまうのです。

すると、公的機関の情報を参照することなく、SNSの怪しい人の話をうのみにしてしまいます。ワクチンに関しては、今まさにそうしたことが起こっています。

ワクチンを反対する人たちは、感情で動いており、公的機関の情報を参照したり、ワクチンの仕組みを学んだりしている人がどれだけいるのか疑わしいです。


しかし、以下のことを知ったうえで、賢明な判断をすべきです。

・今回のワクチンによって感染することはない(参考)。

・副作用はたいてい軽度の痛みや発熱に留まる(参考)。

・どのワクチンにも必ず副作用はある(参考)。

・20世紀初頭のスペイン風邪では数千万人が死亡(第一次世界大戦の戦死者よりも遥かに多い死亡者数)。一方、20世紀後半の天然痘においては、撲滅ができた。その理由はひとえにワクチンだった。

・世界のトップの医学者が研究を推し進め、接種に許可を出している(また、本人たちも接種している)。


接種を拒む人たちは、事実よりも物語で考えてしまいます。

そのため、こうした根拠を探るのではなく、SNSで見た「ワクチンは危ない!」という一言をうのみにしてしまうのです。

そして、少なくない数の人たちが、こうした怪しい作り話を信じ込んでしまう大きな理由の1つは、「裏に隠れた組織が世界を牛耳っており、悪さをしている」ということを信じているからです。

あらゆる陰謀論の作り話を信じる人の中には、たいてい、イルミナティやフリーメイソンといった秘密結社が世界を裏で牛耳っていると本気で信じている人がいます。


しかし、世界をコントロールする秘密結社というのは、1つの大きな欠点を抱えています。

それは、世界がとてもシンプルだという誤解です。

たしかに、もし世界がシンプルだったのなら、小数の秘密結社が世界を把握できるでしょう。悪だくみをするために、自分たちが思いついたシステムを世界中に一瞬にして張り巡らせることができるだろうし、世界を牛耳るのに必要な知識を、たまたまその小数の組織が全て兼ね備えていることもあるでしょう。

しかし、世の中はあまりにも複雑なのです。起業家一人の苦労話でも聞けばすぐにわかるように、たった数人を動かすのでさえ、骨の折れることなのです。まして、世界中の80億人近い人たちをコントロールすることは不可能です。さらに、今の時代、誰一人として、心理学、疫学、経済学、政治学、AI技術などのあらゆる分野を理解できる人はいません。

国のトップの人たちも、数多くの専門家と何度も意見を交わしつつ答えを決めるわけですが、それでも分からないことは無数にあり、過ちも犯してしまうものなのです。

まして、小数の隠れた秘密結社には、できることはほとんどありません。世界を把握することは原理的に不可能であるうえに、隠れていては世間に影響を与えることができません。

世界を裏で牛耳る組織を信じるのなら(実際には数人でも思い通りに動かすことは難しいのが現状であるのにもかかわらず)、小数の秘密結社に世界80億人近くをコントロールすることを求めていることになるのです。


では、このことを知っておくメリットは何でしょうか? それは、怪しい情報ではなく、公的機関の情報をしっかりと信じるリテラシーが身につくことです。

ワクチンは格好の例です。「悪の組織が裏で危険なワクチンを作って人々に害を与えようとしている」という物語が、明らかに正しくないというのは、上記の説明で分かっていただけると思います。

新型コロナウイルスが蔓延し始めた際に、仮に悪意を持った人が悪だくみをしようとしても、実行は不可能なのです(あるいは、新型コロナウイルス自体が生物兵器だというのも作り話であり、証拠がありません)。

私たちのイメージとは違い、大きなプロジェクトにはあまりにも大勢の人たちを動かす必要があります。たまたま悪いことを思いついた集団がいたとして、その人たちはどのように、世界中の数多くの医学の専門家たちを騙せるのでしょうか? 世界に名だたる専門家たちを出し抜ける力のある人はおらず、そもそも、医学に優れた成果を残している人たちでなければ相手にすらされません。

また、ワクチンを作っている企業にとっても、安全性を追求することと利益を得ることが一致します。十分な安全性が確認できなければ、研究に費やした時間も費用も無駄になる一方で、安全なワクチンを作れば、人々を救えるうえに、大きな利益にもなるのです。

そのため、どう考えても、危険なワクチンを作り、世界中の専門家の目を掻い潜り、数十億人に接種させるという動機が生まれるとは考えにくいし、なにより実行不可能であるというわけです。


本投稿の結論としては、都市伝説やオカルトといった作り話に関しては、やみくもに信じると、とても危険な思想を持ちかねないということでした。

どれほどあり得そうだと思えるものや、面白いものであっても、作り話には注意が必要です。特に、怪しい情報やデータを持ち出してきた場合はなおさらです。

正しい情報源を信頼するというリテラシーが非常に重要なのです。


【参考サイト】

・首相官邸サイト:https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

(ワクチン接種の状況など)

・厚生労働省:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/

(ワクチンの効果や安全性など)

・Web河出「世の中が一つの大きな陰謀のように見えるとき(ユヴァル・ノア・ハラリ)」:https://web.kawade.co.jp/bungei/4718/

(陰謀論やフェイクニュースがどのような仕組みで広まるのか、など)


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【筆者の詳細について】

―加藤将馬:著者、講演家、幸福学&ビッグヒストリー研究家

・加藤将馬のウェブサイトはこちら

【著書の紹介】

宇宙と人類、138億年ものがたり ―ビッグヒストリーで語る 宇宙のはじまりから人間の未来―

紙の書籍:1260円→電子書籍版:0円(変更の可能性あり)


本書は、宇宙と人類の歩みを考察する一冊です。
「宇宙が生まれた頃はどのような姿だったのか?」「なぜ19万年間も狩りをしていた人間は、今では宇宙進出を始めているのか?」「気候変動やAIなど、これからの人間社会はどうなってしまうのか?」といった大きな問いについて説明します。
 そして、本書の最大のテーマは、「人間は文明を発達させて地球の覇者となったのにもかかわらず、なぜ世界には数多くの自殺者がいて、不幸が消えていないのか」というものです。
 138億年にわたる壮大な物語を堪能していただくと同時に、人間社会のあり方にまで思考を巡らせてもらうことを本書では目的としています。そして、私がなぜ本書を書き、ビッグヒストリーを通じて何を伝えたいのか。ぜひ、最後まで見届けていただけると幸いです。

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