またあそぼ

【放送作家の小説家デビューチャレンジ】 本職は放送作家ですが、小説も書けるようになりた…

またあそぼ

【放送作家の小説家デビューチャレンジ】 本職は放送作家ですが、小説も書けるようになりたくて投稿することにしました。 そして、せっかくなら書籍化を目指します。小説家デビューへの道のり見守ってください! 連絡先 shojik6@gmail.com

最近の記事

  • 固定された記事

友人の告白【5分で読める短編小説(ショートショート)】

ある日、僕は大学時代の友人から呼び出された。 待ち合わせ場所に彼女と一緒に現れた友人は学生時代の話を始めた・・・ 「俺が通ってた小学校って、田舎だから一クラス14人しかいなかったんだよ。だから幼稚園から中学までみんな同じクラスで全員家族って感じ。 でも一人、知的障害の同級生がいて、中学入っても一人だけ小学校の勉強してて、おまけに貧乏だったから皆から仲間はずれにされて、いじめられてた・・・。 でも、俺そんなの嫌だったし、休み時間はいつもそいつと遊んでたんだ。 遠足の時もそ

    • 写真【5分で読める短編小説(ショートショート)】

      青春時代、苦楽を共に過ごした友人の蓮人(れんと)が先月、先立った。 あまりにも突然であまりにも早すぎる死に、僕は現実を受け入れることができずにいた。 両親よりも長い時間を過ごし、兄弟よりもケンカをし、どこに行くのも何をするのも一緒だった。 蓮人とは中学、高校と一緒で、同じクラスには一度もなったことはないけど、6年間サッカー部で共に汗と涙を流してきた。 高校を卒業しお互い違う大学に入学しても、用もないのに週に一回は遊んだ。 中学・高校時代、僕たちに浮いた話は一切なく、

      • 坂道【5分で読める短編小説(ショートショート)】

        通称「坂の町」と呼ばれるこの街で私は生まれ育った。 どこヘ行くにもアップダウンを繰り返す「坂の町」、夏は汗だくになり、冬は雪で歩くのもひと苦労。そんな「坂の町」が私は大嫌いだった。 とくにJKの私にとって「汗だく」は死活問題! でも一度だけ、そんな坂を好きになったことがある。 あの日は特に暑く「記録的な猛暑日」なんてニュースで報道されていた。 いつものように学校へ行くため、この街で一番キツイと言われている「一番坂」を苦戦しながら自転車で上っていると急にペダルがフッと

        • 記念日はカレーの日【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          エレベーターを降りると、カレーのニオイが鼻孔をくすぐった。 『今日の夕飯はカレーだ!』心の中でそう言うと、小躍りしながら廊下を急いだ。 妻のカレーはスパイスから作るオリジナルカレー。すぐに妻のカレーだと分かる。ちなみに僕の大好物だ。 しかし、手間暇に加えお金がかかるため、誕生日や結婚記念日など、何かの記念日にしか作ってくれない。 「ただいま~!」 いつもより1オクターブ高い声になっていることに自分で気が付き、ちょっと恥ずかしくなった。 「おかえり~、今日はアナタの

        • 固定された記事

        友人の告白【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          またね…【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          「初めて会った時の事、マジで今でもメッチャ強烈に覚えてるよ。こんなドストライクなタイプの子がこの世にいるんだって思って最初は緊張して、まともに顔見れなかったもん。 で、飲み会が終わって、飲み会って言うと聞こえがいいか。ま、合コンね。そんで、なんとなく2次会行くメンバーと帰るメンバーに分かれて、俺と奈央ちゃんは帰宅組で一緒に駅まで歩くことになったんだよね。 そしたらまさか奈央ちゃんから、『もし良かったら軽く飲みなおしませんか?』ってお誘いがあって。いやいや本当だって!この話

          またね…【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          信じてる【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          ある日突然、私たち平凡な家族の平凡な生活が奪われた。 3年前のあの日、主人はいつも通り7時過ぎに家を出て、息子も8時過ぎにはいつも通り登校した。 私は朝のバタバタした時間が過ぎ、束の間の休息をリビングでボーッと過ごしていた。その時、家の電話が鳴り、平凡な生活の時計の針が止まった。 『はい、近藤です』 『●●署の者ですが、先ほどご主人が痴漢の容疑で逮捕されました』 一瞬、理解が追い付かず受話器を握ったまま黙っていると、『奥さん、奥さん、聞こえてますか?』という呼びかけ

          信じてる【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          誰でもいいから引き留めて【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          私も夫も両親も、誰もが皆、ずっとずっと願っていた待望の赤ちゃん。授かった時、涙が溢れて止まらなかった。 初めて我が子と会えた時、あんなに愛おしくて、愛おしくて仕方がなかったのに・・・気が付いたら「産後鬱」「育児ノイローゼ」になっていた。 昼間、夫が仕事でいないとき、幼い息子と二人きりになるのが怖かった。 一度泣き出すと何をしても止まらなくなり、一緒になって大泣きすることが日常的となった。 そして、ある日、無意識のうちに我が子の首に手をかけていた。 虫の知らせだろうか

          誰でもいいから引き留めて【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          コンビニが世界の全ての私が恋に落ちるまで【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          高校を卒業後、都内のアパレルに勤務した私は、月50時間を超えるサービス残業と上司によるパワハラに耐えられず、わずか半年で退社した。 次の就職先が見つかるまでの「繋ぎ」として、コンビニでアルバイトを始めたけど、何もしないうちにあっという間に一年が経過してしまった。 自宅から徒歩3分の距離にあるコンビニ。出勤時間の30分前に起き、5分前に家を出る。昼の1時間休憩では50分自宅で過ごし、その内30分は昼寝をしている。 自宅とコンビニを往復するだけの生活に化粧もオシャレも必要な

          コンビニが世界の全ての私が恋に落ちるまで【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          胸の痛み【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          17歳になる息子とは、もう何年もまともに会話をしていない。 すれ違いの生活ではなく、ただ一方的に無視をされている。 「おはよう」「おかえり」などと言っても返事はなく、目も合わせてくれない。 とっくに親子の関係は崩壊している。 決定的に何かがあったわけではなく、思い当たることと言えば「母子家庭」ということくらい。 母と息子、二人だけの家族。これまで決して裕福な暮らしをさせてあげることはできなかったけれど、昼夜問わず働き必死に育ててきた。 昼はスーパーでレジを打ち、夜

          胸の痛み【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          ひみつ【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          いつか言わなければと思っていながら、なかなか言い出せず、結果的に「ひみつ」になってしまうことがある。 私と妻は20数年前、お互い小さな子どもを連れて再婚した。 私の子どもは当時、ニ歳半の男の子。妻の子は一歳半の女の子だった。妻も私も元パートナーの浮気が原因で離婚した。 つまり、妻は息子の本当の母ではなく、私は娘の本当の父ではない。 無論、息子と娘も血の繋がった本当の兄妹ではない。 しかし、「本当は血が繋がってるんじゃないか?」と錯覚してしまうほど、強い絆があり、全員

          ひみつ【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          親友とファミレスで【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          枕元に置いてあるスマホが振動し一通のLINEが届いた。 時計の針は既に0時を回っており、明日も早いので既読を付けることなく再び目を閉じた。 しかし、再びLINEが届き、仕方なくLINEを開くと彼女からだった。 『起きてる?』 『大事な話があるんだけど・・・』 胸騒ぎがしたが、直ぐに『起きてるよ。どうかした?』と冷静な振りをしてメッセージを送信すると直ぐに既読が付いた。 彼女とは付き合って5年になり、3か月後に結婚する。既に多くの友人や知人に招待状を送り、全ては順調

          親友とファミレスで【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          動き出した時計【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          ある日、滅多に鳴ることがなくなった自宅の電話が鳴り、その瞬間、私たち夫婦の未来が止まった。 休日であれ、仕事の電話なら携帯に掛かってくる。 普段ならば何も思わない電話も、あの日は何故か胸騒ぎを覚え、受話器を握る手が汗ばんだのを覚えている。 「はい、富田ですが」 震える声で電話に出た。 「●●警察ですが、息子さんが・・・」 それ以上は記憶がなく、気が付いた時には霊安室のベッドで横たわる変わり果てた息子の姿に泣き伏せていた。 あの日、高校卒業を目前に控えた息子は、ア

          動き出した時計【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          最後のお弁当【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          離乳、オムツ、おしゃぶり・・・ 子育てをしていると、何度も「最後」の瞬間が訪れ、その度に息子の成長を実感し、嬉しい反面、寂しさがこみ上げてくる。 ずっと私たち両親のことを「パパ」「ママ」と呼んでいた息子が、小学校3年生の時、なんの前触れもなく、ある日突然「お父さん」「お母さん」と呼びだした。 嬉しい反面、ちょっとだけ寂しく、気恥ずかしさを感じたのを覚えている。 そして、気が付いたら自分の事を「ボク」ではなく「オレ」と言うようになり、徐々に成長していった。 息子が最後

          最後のお弁当【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          暗闇にさした光【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          一年ぶりに浴びた日の光は眩しくって痛かった。でも・・・あの日、止まってしまった僕の時計の針は、ゆっくりとまた動き出した。 高校を半年で中退した僕は、その日から「ひきこもり」になった。 原因はイジメでも成績不振でも失恋でもない。 誰ひとりとして知らない世界に、突然放り込まれたことで、精神が追い付かず、ある日の朝、なんの前触れもなく部屋から出られなくなってしまったのだ。 最初の数回は「具合が悪いから学校休む」と両親に言っていたが、何日も続くと、サボっていると勘違いされ、無

          暗闇にさした光【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          タバコの煙が目に沁みる【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          田舎の母からダンボールが届いた。 箱を開けると、中には野菜や米、油や醤油、シャンプーなどが入っている。 男の一人暮らしに「油」は母が思っている以上に必要ない。実際、台所には封を切っていない油のボトルが10本以上並んでいる。 油だけではない、母から送られてくるダンボールも山積みになっていた。 何度言っても毎回送ってくるので、ボケてしまったのかと心配になったこともあるが、どうやら違ったみたいだ。 そんな母からの救援物資が届くのは、何故かいつも僕が落ち込んでいる時である。

          タバコの煙が目に沁みる【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          家族とファミリー【5分で読める短編小説(ショートショート)】

          今日、僕は親になり、かけがえのない「家族」が増えた。 僕は高校を卒業するまで施設で育った。 施設内には様々な理由で親元を離れて生活をする子どもたちがたくさんいたが、「親が誰なのかすら分からない」のは僕だけだった。 それもそのはず、僕はまだ新生児だった時、へその緒がまだ付いた状態で「赤ちゃんポスト」に置き去りにされていたらしい。 戸籍も名前すらもない状態で「捨てられた」僕は一体、誰なんだろう?自分で自分が誰だか分からなかった。正確には今も自分が誰なのか分からない。 だ

          家族とファミリー【5分で読める短編小説(ショートショート)】