写真【5分で読める短編小説(ショートショート)】
青春時代、苦楽を共に過ごした友人の蓮人(れんと)が先月、先立った。
あまりにも突然であまりにも早すぎる死に、僕は現実を受け入れることができずにいた。
両親よりも長い時間を過ごし、兄弟よりもケンカをし、どこに行くのも何をするのも一緒だった。
蓮人とは中学、高校と一緒で、同じクラスには一度もなったことはないけど、6年間サッカー部で共に汗と涙を流してきた。
高校を卒業しお互い違う大学に入学しても、用もないのに週に一回は遊んだ。
中学・高校時代、僕たちに浮いた話は一切なく、「サッカーに青春を捧げた」と言い訳していたけど、大学に入学してオールラウンドサークルに入ってもお互い彼女ができず、サッカーに罪を被せることが出来なくなってしまった。
でも、蓮人と一緒だったから寂しくなかったし、友人が恋人とのデート話をしてきても、強がりではなく羨ましいと思ったことはない。
そんな蓮人は大学の「追いコン」で許容量以上の酒を飲まされた挙句、路上で一人潰れてしまい、翌朝、出勤途中のOLに発見され、救急車で病院に運ばれたが、既に息を引き取って数時間が経過していた。
葬儀後、数日経って蓮人の家に行くと、蓮人だけがいない「いつも通りの部屋」がそこにはあった。
暫く、蓮人の部屋で一人ボーッとしていると、蓮人のお母さんが入って来た。
「いつも仲良くしてくれてありがとう。たぶん、あの子も喜ぶと思うから、あの子の形見に何か好きなもの持って行ってあげて」
「いや、お礼を言いたいのは僕の方ですよ。ほんとに蓮人と一緒にいる時は楽しくって、まだまだアイツと遊びたかったのに・・・」
僕は部屋に飾ってあった高校時代のユニフォームを手に取り、何気なく勉強机に目をやった。
「あっ・・・」
そこには見覚えのあるインスタントカメラが置いてあった。
「おばさん、これもいいですか?」
「いいけど、何が映ってるのかしら?」
「実はこれ・・・」
高校三年の夏、部活を引退した僕たちは、「初めての夏休み」に、受験勉強も忘れて、毎日毎日2年分の夏休みを取り戻すかの如く遊び尽くした。
ある日、二人で海へ行った時、海の家でインスタントカメラが販売されているのをみつけ、「これ2個買って、お互いに好きなもの撮っていつか見せ合おうぜ」と提案した。
「何でインスタントカメラなんだよ、デジカメ持ってんじゃん」
そういう蓮人を説得しインスタントカメラを購入した。あの時のカメラだ。
何を撮ってたんだろう?
『俺には、俺だけには見る権利あるよな?』心の中で呟いた。
翌日、自分で提案しておきながら、自分でも何を撮ったか覚えていないカメラと蓮人のカメラを現像に出した。
3日後、写真を撮りに行き、ワクワクとドキドキが交差する初めての感情で中身を確認すると、「家族での妹の誕生日会」や「サッカー部の後輩たちの練習風景」、「夕焼けに染まる生まれ育った町」、「僕たちが初めて出会った中学校の校舎」など、蓮人の好きなモノがたくさん収められていた。
時間の止まった写真を見て涙が溢れてきた。
そして、最後の一枚には・・・「蓮人の部屋で無防備に昼寝をしている僕の寝顔」が収められていた。
ハッとした僕は、自分のカメラで写した写真を確認した。
すると24枚目には・・・
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