親友とファミレスで【5分で読める短編小説(ショートショート)】
枕元に置いてあるスマホが振動し一通のLINEが届いた。
時計の針は既に0時を回っており、明日も早いので既読を付けることなく再び目を閉じた。
しかし、再びLINEが届き、仕方なくLINEを開くと彼女からだった。
『起きてる?』
『大事な話があるんだけど・・・』
胸騒ぎがしたが、直ぐに『起きてるよ。どうかした?』と冷静な振りをしてメッセージを送信すると直ぐに既読が付いた。
彼女とは付き合って5年になり、3か月後に結婚する。既に多くの友人や知人に招待状を送り、全ては順調と思っていたのだが・・・
恋人同士の『大事な話』は、別れ話が相場だ。でも、3か月後に式を控えている今、まさかそれだけはないと思ったが、直ぐに打ち砕かれた。
『ごめん。別れたい。明日会って話できる?』
メッセージではなく、直ぐに電話をかけたが彼女は電話にでなかった。
『ごめん、電話じゃなく会って話したい。明日、仕事終わったら連絡ください』
文末の敬語が頑なな意思を表しているようで『分かった』とだけ返信した。
しかし、ソワソワして寝付けず、幼馴染の親友にLINEをした。
『遅くにごめん。たった今彼女に別れ話をされた。明日仕事終わりに会う約束なんだけど・・・どうしよう』
友人から直ぐに電話があった。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、起きてたから大丈夫。それよりどういうこと?」
「いや、俺も何がどーなってるのか分からないんだけど・・・」
成り行きを説明し、5分ほどで電話を切った。
もちろん、誰かに話したからと言って解決することではないが、幼馴染の声を聞いただけでほんの少し安心した。
結局、一睡もすることなく、朝を迎え仕事に向かったが、その日はほとんど仕事が手につかなかった。
18時に会社を出て彼女にLINEをし、彼女の家の最寄り駅で待ち合わせをして公園で話をした。
1時間ほど話し合ったが彼女の気持ちは揺るがなかった。
話し合いを終え、ひとりベンチでボーッとしていると幼馴染からLINEが届いた。
『どうなった?』
『ダメだった・・・』
『軽く飯でも行くか?』
『うん。あんまり食欲ないけど・・・』
その後、友人と自宅近くのファミレスで落ち合うことになった。
30分ほど遅れて来た友人は席に着くなり、「悪い、仕事していい?」と言うとパソコンを開き仕事を始めた。
1時間ほど黙々と仕事をし、ようやくパソコンを閉じた友人は、「頭使ったら甘い物食いたくなっちゃった。パフェ食いたいんだけど、一人じゃ恥ずかしいからお前も頼めよ」と言い、大の男が二人でパフェを食べることになった。
パフェを食べ終えると、「じゃ、行くか!ここはお前の驕りな!」といい伝票を投げてきた。
友人は彼女とのことは一切聞いてこなかったが、側にいてくれたことが嬉しかった。
レジで会計を済ませていると、後ろから「領収書ください」と店員に言う友人に「領収書はお前が貰うのかよ!」と言い二人で爆笑した。
気を使わない幼馴染ならではの空気感が嬉しかった。
その後、何度か彼女と話し合ったが、結局別れることになった。
本当に好きだったからショックだったけど、フラれた事でもっと大事なものを手にした気がした。
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