プロ編集者に聞いた「語彙が豊富な人」の習慣トップ5
こんにちは!
前回の記事で、「語彙力で大切なのは、語彙を増やすことよりも、言葉を適切に使う力だ」と書きました。
とはいえ、語彙を豊富にすることで、次のようなメリットがあるのも事実です。
表現が豊かになる
伝わりやすくなる
説得力が上がる
思考が深まる
知的に見える
そこで今回は、文才豊かな編集者やライターに聞いた「語彙を増やすために実践している習慣トップ5」をランキング形式で紹介します。
第5位 ベンチマークを決める
「この人、文章がうまいな」「この人みたいに書けるようになりたい」と思う人を1、2人見つけ、その人のスタイルを徹底的にマネしていく。すると、早ければ数週間でその人と同じような言葉づかいで書けるようになる。
このように「文章の師(=ベンチマーク)」を決めることは、「文章力を上げたい人」、あるいは新入社員や転職したばかりの人など「会社や仕事に不慣れな人」には有効な方法です。
組織には、独自の表現や言い回しがあります。「ゼロから考えるよりも、先輩が使う言葉をマネしたほうが伝わりやすかった」という経験はあるあるですよね。
まずはベンチマークを決めて、その人が使う言葉を少しずつ自分のものにしていく。
こう考えれば、覚えるべき言葉も自然と定まるはずです。
第4位 類語を覚える
文章を書いているとき、「別の表現はないか」と思ったら類語を調べる。
これも多かった回答です。
ぼく自身、原稿を書いたり編集したりするとき、類語はけっこう調べます。文章を書くときに同じ言葉を続けて使うのは原則タブーとされているので、とくに「似たような文章が続くとき」は類語を調べることが多いです。
基本は「連想類語辞典」が多いのですが、最近はChatGPTを使う機会も増えました。そのまま採用しなくても、いわば調理するための素材を提供してくれるので、とても助かっています。
プロンプトは「◯◯の類語を30個出してください」が基本。
30個出してもらうと、少なくとも1個はしっくりくるものがあります。30個でダメならそれ以上出してもらっても見当違いのことがほとんどなので、プロンプトを変更するようにしています。
もうひとつ、知っておくと便利なのが「◯◯の類語を比喩で出してください」というプロンプト。
たとえば、「原則の類語を比喩で出してください」と指示した場合、以下のアウトプットが出ました。
●------------------------------------------
航海の羅針盤: 原則は、方向を示す航海の羅針盤のようなものです。常に正しい方向へと導く役割を果たします。
建築の基礎: 原則は、建物の基礎のようなものです。堅固な基盤があって初めて、安定した構造物を築くことができます。
木の根っこ: 原則は、木の根っこのようなものです。地中深くに根を張り、木全体を支え、栄養を供給します。 地図の目印: 原則は、地図上の目印のようなものです。どこへ行くべきか、どう進むべきかを示してくれます。
レシピの基本: 原則は、料理のレシピでの基本手順のようなものです。その手順に従って初めて、期待通りの結果を得られます。 道しるべ: 原則は、道路上の道しるべのようなものです。どの方向へ進むべきかを示し、迷わずに目的地にたどり着けます。
絵画の下描き: 原則は、絵画を描く際の下描きのようなものです。全体の構図やバランスを決め、成功へと導く基礎となります。
-----------------------------------------●
どうでしょうか。使えるかどうかは別として、「こういう表現があるんだな」と思えますよね。こうした積み重ねが、語彙を増やすのには大切なんじゃないかと思います。
第3位 インプットの幅を広げる
ぼくはふだん、経営者の壁打ち相手になって書籍やコンテンツをつくっているのですが、語彙が豊富な経営者にその理由を聞くと、「いろんなものに目を向けてるね」という答えが返ってくることが多いです。
SNS、ネット記事、テレビ、新聞、オーディオブック、電車広告、調査レポート、メルマガ、公式LINEなど。意外なものだと「レストランのメニューをじっくり読んでみる」や「カフェで隣の人の会話を盗み聞きする」などもあります。
とにかくインプットの幅が広い。
これが語彙が豊かな人の共通点だと思います。
先日も、ある経営者から「庄子くん、【メロい】って知ってる?」と聞かれました。
メロい? 流行ってる言葉のようですが、みなさんはご存じでしょうか。
どうやら「メロメロになる」という意味とのこと。「あの子(推しのアイドル)の歌い出しの表情、メロい!」みたいな使われ方をしているそうです。その経営者はK-POP好きで、SNSを見ているなかで覚えたといいます。「メロい」が経営に与える影響についてはわかりませんが、少なくとも「専門分野に限らずあらゆるものからインプットする姿勢」は、語彙を増やすのに一役買っているといえそうです。
ほかには、こんな声も耳にました。
第2位 すぐ調べる。メモる。
人間はすぐに忘れる生き物です。「この言葉(言い回し)、どういう意味だろう?」と思っても、目の前の仕事に集中していると、1分もかからずに忘れてしまいます。
気になった言葉は、すぐ調べる。メモる。
語彙が豊富な人はこれを継続しています。メモについては、ノートに書き溜める、EvernoteやNotionで管理する、専用のLINEトークをつくるなどさまざまあるので、使いやすくて管理しやすいものを選ぶのがいいでしょう。
そして「すぐ調べる」に関連して、もうひとつ大切なことがあります。
それは、会話の最中に気になった言葉があったら「どういう意味ですか?」と聞くこと。
「すみません、◯◯とはなんでしょうか?」と勇気を出して尋ねる。話を遮りにくい状況だったら、ひと段落したタイミングで「さきほどおっしゃっていた◯◯について教えてください」と聞いてみる。
こうすることで、言葉の意味だけでなく「現場のリアルな使われ方」や「関連情報」も学べることも。加えて相手とのやりとりが発生するので、記憶に定着しやすくなります。
ただし、相手が超多忙な芸能人や経営者などで、話を聞く時間がごくわずかしかない場合は要検討です。相手にネガティブな印象を与えるかもしれません。ぼくの場合、そういうシーンではこっそりメモをとって後から調べるようにしています。
第1位 本を読む
1位は、本を読む。予想どおりの結果だったかもしれません。
語彙が豊富な人は、日常的に本を読んでいる(あるいは過去に大量に読んできた)。とりわけ小説や、哲学、心理学、歴史などのノンフィクションを読む人が多かったです。
本を選んだ理由としては、以下の声がありました。
==============================
文脈に応じた使い方がわかる
編集者や校正者など、いろんな人の目が通っているので、適切な使い方を学べる
その著者(テーマ)独自の単語やフレーズは、繰り返し登場することがあるので、読み進めるうちに自然と記憶に定着していく
==============================
3はおもしろいですね。第5位の「ベンチマークを決める」にも通じますが、ある作家の本を集中して何冊も読んだ結果、その作家が使っている言葉や表現を自然に覚えている、ということはあるあるです。
とくに本の場合、数時間、ときには10時間以上、その作家の世界観に浸ることになるので、他の活字媒体よりも語彙をトレースするのに効果的といえるでしょう。
【番外編】語彙を覚える「+α」の工夫
ここまでは「インプットによる語彙の増やし方」を紹介してきましたが、一度や二度、頭に入れただけでは「使える語彙」にはなりません。
そこで番外編として「語彙を記憶に定着させる方法」を紹介します。
●------------------------------------------
1. とにかく使う
新しく知った言葉は、できるだけ早く使ってみる。仕事やプライベートで使えるものなら使うし、難しいならその言葉を使った文章をメモに書いてみる。それも難しいなら反芻する。これだけでも記憶に残って、いざというときに言葉が出てきやすくなります。
2. 背景も一緒に覚える
英単語と同じで、その言葉が生まれた背景や本来の意味を知るのも効果的。たとえば、「蓼食う虫も好き好き」という慣用句があります。蓼(たで)という辛い草があるのですが、それを好んで食べる虫もいることから、「人の好みはさまざまである」という意味で使われます。このように背景を知っておくだけでも、ぐっと覚えやすくなります。
3. ユーザー辞書に登録する
スマホでもパソコンでも「ユーザー辞書」という機能があります。「あ」と打つと「ありがとう」という変換結果が表示されるイメージです。新しく覚えた単語をユーザー辞書に登録する。強制的に言葉が表示されるようにすることで、繰り返し見る習慣ができて覚えやすくなります。
------------------------------------------●
いかがでしたか。
この記事が、みなさんの語彙を増やすきっかけになればうれしいです。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?