印象に残る文章が簡単に書ける「時制テクニック」
こんにちは!
先日、「書くのが苦手なんだけど」という相談を受けて、その人の文章を読んでみたら、なるほど、あることに気づきました。時制がずっと同じなんです。
時制と聞くと、中学時代の英語の授業を思い出す人もいるかもしれません。でも実は、日本語の文章でも時制は重要な役割を担います。
今回は、臨場感のある、思わず読み進めてしまう文章に仕上げるための「時制テクニック」を紹介します。
時制を変えるだけでこんなに変わる!
まず、次の文章を読んでみてください。
日本語として不自然な部分はありませんよね。ただ、この例文では「過去形」がずっと続いています。
過去のことを過去形で書くのは間違っていません。でも、「でした」「ました」が続くと、文法的には正しくても、視覚的にも聴覚的にもリズムが単調になります。早い話、「なんか退屈な文章」になりがちなわけです。
そこで使うべきなのが「時制テクニック」。たとえば、「過去形」だけで突っ走るのではなく、ところどころ「現在形」を織り交ぜてみましょう。こんな感じです。
太字箇所が変更点です。
どうでしょう。現在形が少し入ってくるだけで、ぐっと臨場感が増して、ストーリーテリングが強化されたように感じないでしょうか。
このように、あえて時制を変えてみることは、次のようなメリットがあります。
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文章の単調さを回避できる
読者に臨場感を与えられる
重要なポイントを効果的に強調できる
生き生きとしたストーリーとして伝えられる
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ここからは、とくにストーリー性が求められる文章で使える「時制テクニック」を3つ紹介しましょう。
時制テク①「過去→現在」
これは大きく2つのテクニックに分かれます。
1つめは、前述の例文のように、過去形の中に現在形を織り交ぜてみる方法。あるいはその逆で、「現在形の中に過去形を織り交ぜる」のもOKです。
実践するときは、まず「文末を変えられないか?」とシンプルに考えてみましょう。とくに「過去形→現在形」にしやすいのは、過去の事象を説明をするとき、過去の感情を表現をするときです。
たとえば、次の文章を見てください。
2文目の「初心者向けの講座でした」は、1文目の「説明」になっていますよね。こういう過去の文章を補足説明するような文章では、現在形にしても違和感は出ないことが多いです。
2つめは、現在の要素を加える方法。
ここまで「でした→です」など文末表現に焦点を当てていましたが、過去に感じたことを現在形で書くのも効果的です。たとえば、こんな感じ。
「緊張します」と一言追加しただけですが、リアルさがぐっと増しましたよね。このように、過去の出来事を語りながら現在形で感情を表現すると、読者は過去の瞬間に引き込まれます。より強い臨場感を与えることができるわけですね。
時制テク②「過去→現在→過去」
2つめは、時制を切り替えるテクニック。1つめの進化版ともいえるかもしれません。
「過去→現在→過去」や「現在→過去→現在」といったように、時制を行ったり来たりさせます。ここでは後者の例を見てみましょう。
ちょっとエモい文章ですよね。この例文では、現在の状況から過去の思い出に遡り、そしてまた現在に戻ってきています。このように時制を切り替えることで、時間の経過や心情の変化をより鮮明に表現できます。
時制を切り替えるタイミングは、以下が有力候補です。
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場面転換時(新しい場面や状況に移るとき)
重要な出来事の前後
心情の変化時(書き手や登場人物の心情が大きく動くとき)
視点の切り替え時(異なる視点や立場からの描写に移るとき)
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ここからさらに踏み込むと、「過去→現在→過去」の「現在」の部分のなかで、さらに別の「現在→過去→現在」を展開することもできます。図にすると、こんな感じですね。
とくに文学の世界では、時制の入れ替えが複雑で、読んでるうちに「これ、いつの話だっけな」と考え込んでしまう作品(作家)もいます。たとえば、カート・ヴォネガット、トマス・ピンチョン、ガルシア・マルケスとかでしょうか(ところで先日『百年の孤独』の文庫版が出て話題になりましたが、こんなに流行るなんて驚きですよね)。
時制テク③「過去→未来」
最後は、ちょっと難易度の高いテクニックです。
ここまで「過去」と「現在」を取り上げてきましたが、時制には「未来」もあります。そこで、「過去から未来」あるいは「未来から過去」へと大胆に時制を移動させる方法も見てみましょう。
この例文では、「過去(遺品整理、アルバムを見つけたこと)」から始まり、「現在(30歳になったこと)」を経て、「未来(自分の子どもが写真を見る場面)」へと自然に流れています。
今回は短い文章のなかに詰め込んだのですが、人生の振り返りや成長過程、将来の展望など、ロングスパンの物語を描くときに有効なテクニックです。
ただし、使い方を間違えると読者を混乱させてしまうリスクもあります。時制の移動をはっきりと示す言葉を入れたりして(「あの頃」や「10年後」など)、読者を迷子にさせない工夫も求められます。
「時制の変更」は、明確さと正確さが求められるビジネスシーンでの文章、たとえばメールや報告書ではまず使われませんし、使う必要もありません。
一方でSNS、note、ブログなど、より自由な表現が許される場面では、時制をあえて変えることで、文章に奥行きや立体感を出すことができます。ビジネスシーンでも「社員インタビュー」や「経営者の思い」を書くときには、けっこう使えるテクニックだと思います。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
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