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仕事の服装を問う
自信を持って自分がいいと思う格好をする
私は現在、建築設計を生業としているが、いわゆる「建築家」と言われる人々は良くも悪くも「建築家っぽい」外見をしていることが多い。
別に、それを否定するつもりはない。しかし、大変意地が悪くて申し訳ないが、一言だけ申し上げたい。
「その服、本当に好きで着てるんですか?スタンドカラーシャツを着ることで建築家の仲間入りだと安易に思っていないですか?」と。
ひと昔前は、建築家はそろいもそろってスダンドカラーシャツを着ていた。スタンドカラーシャツとは、襟のないシャツのことだ。
その理由は色々あるようだ。
建築家はデスクワークもすれば、現場も駆け回る。そして、時には施主や得意先との会食など、フォーマルとセミフォーマルを行ったり来たりすることが多い。その両方のシーンに、うまく溶け込んでくれる服がスタンドカラーシャツということだ。
その理由からかはわからないが、ひと昔前の日本の建築界の巨匠と言われる方々はスタンドカラーシャツをユニホームとしていた。
磯崎新を筆頭に、安藤忠雄、原広司、坂茂、その他大勢。
当然、スター建築家のファッションをみんな真似する。
いつの間にか、日本の建築設計者は暗黙の了解のようにスタンドカラーシャツを身にまとっていた。
私がまだ建築の道に飛び込んで間もない頃、よれよれの変な色のスタンドカラーシャツを着て「私は建築家ですよ」といった顔で偉そうにしている人をたくさん見てきた。
しかし、その方々はどう見ても自信がなさそうだった。
申し訳ないが、自分の力の無さをスタンドカラーシャツを着ることで隠蔽しているようにも見えた。
スタンドカラーシャツは当初、正当で、真っ白で、汚れがなかった。しかし、時代を経て色々な雑念に汚れて、黄ばんでしまったような気がする。これは私だけの思い込みかも知れないが。
私はスタンドカラーシャツは着ないことにしている。あ、申し訳ない、一枚は持っている。
正確には、いかにも「建築家っぽい」格好はしないようにしている。
谷尻誠さんが「設計事務所は分類されたら終わり」とどこかでおっしゃっていた。
谷尻さんの考え方に私は共感している。「ああ、設計事務所ね」と分類されてしまったら、それ以上は関心を持ってもらえないと思っている。
それに、服装について最も重要なのは、自分が本当にいいと思う服を自信を持って着るということだと思う。
とはいえ、男は年を重ねるごとに頭が固くなり、服装も一辺倒になりがちだ。
妻にも相談しつつ、客観的な目を持って服を買うようにしている今日このごろである。