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設計事務所はfacebookになれない

建築家の谷尻誠さんのご著書「CHANGE」を拝読していたら、上のような文が出てきた。

「建築設計事務所は、フェイスブック社のように、人気企業になれない」という意味である。

「ああ、確かにそうだよな〜」と思った。谷尻さんの言わんとすることがよくわかった。

建築設計事務所がやっていることは、とても夢があって、面白いことに間違いはない。

それに雑誌に取り上げられたり、時に建築家がメディアに出演したりすると「華やかでカッコいい職業」なんてもてはやされたりする。

私もよく「建築設計って、本当に夢があるお仕事ですよね!」といわれる。

しかし、そんな嬉しいお言葉を頂いても、悲しいことに、一点の曇りもなくうなずくことができない自分がいる。

うなずけない理由は、きっと谷尻さんも、私も同じだと思う。

それはやはり「お金」である。

設計事務所の所員の給料は、本当にびっくりするような額である。私もあんな給料でよく生きてたなと自分を褒めたいくらいである。

いやいや、自己満足で終わってはいけない。

それくらい給料が低いから、大学の建築学科卒業生で、設計事務所に就職する人がどんどん少なくなっているのだ。

なぜそんな低賃金になってしまうかというと「やはり、建築設計には手間暇がかかるから」である。

もちろん、手を抜くことはできる。しかし、それはものづくりの本質から外れる。

オーストリアの哲学者であるイヴァン・イリイチの造語に「シャドウワーク」というものがある。

「シャドウワーク」とは直訳すると「影のはたらき」である。

建築をはじめとして、あらゆるものづくりは関わる人々の「もっとよくしよう」という「影のはたらき」に支えられている。

建築設計事務所がやっていることは、まさにこのイリーチが主張する「シャドウワーク」である。

「もっといい建物を」という願いを実現させるために手間と暇をかけるのである。時間のゆるす限り、図面とにらめっこするのである。

その時間を省いて回転率をあげればいいといわれるかもしれない。

しかし、もしこの「シャドウワーク」がなくなってしまったら、きっと建築文化は消えてなくなるだろう。

谷尻さんは以上のような「シャドウワーク」をしっかりとした上で、設計事務所をfacebookのような企業にしたいというお考えなのではないかと思う。

では、そのためにはどうすればよいのか。

私の考えとしては、AIによる設計の自動化に可能性がないだろうかと考えている。

AIが近い将来、建築設計業界でどれほどの業務を効率化したり、代行したりするのかは、まだはっきりと見えていない。

AIが建築設計の全てを行うのはおそらく不可能である。しかし、AIがやった方が格段にスピードアップできる業務はたくさんある。単純な図面作成や見積もり、法律のチェックなどがそれである。

逆に人間にしか出来ないこともある。その中のひとつは「最初のアイデア出し」である。「ゼロからイチを生み出す」ことはAIにはなかなかできないようだ。

要するに、人間とAIで得意分野を分担すればよいのだと思う。

そうすれば、きっと業務の効率化とともに、回転率も上がって儲けが増えて、所員の給料もグッと上がると思うのだがどうだろうか、、。

建築設計事務所が人気企業ランキングに上がることを願っている。

そして、そのために柔軟に経営を考えていこうと思う。






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