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【イベントレポート】全国アカデミア発スタートアップ大集合! CENT Pitch拡大版

2021年7月14日にの共済イベント「全国アカデミア発スタートアップ大集合! CENT Pitch拡大版」 (以下、 「CENT Pitch拡大版」)を開催しました。
「CENT Pitch」とは、名古屋大学とOICXが毎月開催されている中部圏のオープンイノベーション/スタートアップエコシステム醸成を目的としたピッチイベントです。
今回は「CENT Pitch」の一環として、また「Nagoya Access Point Project」(以下、「NAPP」)の一環として、2団体とイベントを共催いたしました。全国から計6社の大学発スタートアップにご登壇いただき、ピッチ、パネルディスカッションを実施しました。
本記事では、パネルディスカッションのサマリーをご紹介していきます。

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スタートアップ登壇者一覧(順不同)
株式会社U-MAP(名古屋大学発) https://umap-corp.com/
代表取締役 CEO 西谷健治氏

FiberCraze(岐阜大学発) https://fibercraze.com/
長曽我部竣也氏

scheme verge株式会社 (東京大学発) https://www.schemeverge.com/
President & Chief Executive Officer 嶂南達貴氏

株式会社データグリッド(京都大学発) https://datagrid.co.jp/
代表取締役CEO 岡田侑貴氏

ティ・アイ・エル株式会社 (北海道大学発) https://tilab.jp/
代表取締役CEO 藤浪慧氏

株式会社TOWING (名古屋大学発) https://towing.co.jp/
代表取締役CEO 西田宏平氏
パネルディスカッションモデレーター
名古屋大学 田中裕章教授
Plug and Play Japan 石田生

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Plug and Play Japan 石田生(以下「石田」):
まず、起業までのご経歴や起業に至った経緯についてお話を伺えればと思います。

株式会社U-MAP 西谷健治氏(以下「西谷氏」):
私は学生時代、株式会社U-MAPの創業者でプロダクト開発者でもある名古屋大学宇治原徹教授の研究室で研究していました。大学卒業後は一度外部の企業に就職したのですが、U-MAP立ち上げの際に教授から「楽しいから来るか?」とお誘いを受け、「楽しいなら行きます!」といって参画しました。

FiberCraze 長曽我部竣也氏(以下「長曽我部氏」):
自分は岐阜大学の大学院生で、去年までは研究に没頭していたんですが、今年から休学して研究成果を社会実装すべくスタートアップ立ち上げに注力しています。もともと製品の技術は大学教授が開発したものですが、その技術に大きな可能性を感じ、事業化したいという強い思いで起業の準備をしています。

scheme verge株式会社 嶂南達貴氏(以下「嶂南氏」):
私の場合は、もともと自動運転や交通と言ったトピックの研究をしていたので、政府系の自動運転に関する調査に関わることになりました。同時に、東京大学大学院を休学して、大学主宰のオープンイノベーション創出プログラム「i.school」で学んだ新規事業創出までのプロセスを他のところで教えるビジネスをしようと考えたのが起業のきっかけでした。ですが、これらのビジネスではスケールしないと感じたため、しっかりとプロダクトを作りつつ柔軟な体系のサービスを思いつき、今に至っています。

株式会社データグリッド 岡田侑貴氏(以下「岡田氏」):
私は、京都大学の研究室にいた時、当時博士課程の先輩だった当社のCTOに「こういう技術があるんだよ」と教えてもらったのが、当社で活用している深層生成モデルという技術との出会いでした。その出会いから2年後、就職するか悩みましたが、その当時技術が社会実装できるレベルにまで開発され、この技術をサービス化している会社が他にいなかったので、まだ学生でしたが「自分でやるか」と起業しました。その後、段々会社を回すことで忙しくなったので、大学を中退して会社運営に専念しました。

ティ・アイ・エル株式会社 藤浪慧氏(以下「藤浪氏」):
今までずっとデジタルマーケティングに従事してきました。2016年にデジタルマーケティングの会社を自分で立ち上げ、今も続けています。2017年に北海道大学の川村秀憲教授を紹介してもらう機会があり、「いろいろな企業と北海道大学が共同開発しているがなかなか世の中に研究の成果が出ていかない」というお話を伺ったのがきっかけで、教授と共同で会社を興すことにしました。起業当初は、ロードヒーティング(地熱を使って雪を溶かす)システムに無駄が多いという課題を解決する大学の技術を移転という形でティ・アイ・エルが引き取り、開発していました。同時に、ロードヒーティング関連のお客様と話していく中で、本日紹介したボイスレコーダーなど、IoTに関連した技術の需要があったので、そちらも開発しているところです。

株式会社TOWING 西田宏平氏(以下「西田氏」):
もともと名古屋大学が主催する「Tongali プロジェクト」で起業しようと思っていたのですが、大学卒業した時、会社をつくるか、大企業で働くかで悩んでいました。結局、一緒に会社を立ち上げようとしていたメンバーとのタイミングが合わなかったため、就職の道を選びました。ただ、起業の道を諦めきれなかったので、就職後も副業で開発を進めたり、社外活動としていろいろなイベントに参加したりしていました。内閣府主催の「S-Booster」というビジネスコンテストで賞をいただいたことをきっかけに、会社を立ち上げました。

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名古屋大学 田中裕章教授(以下「田中氏」):
起業前に違うことをやっていた方に伺いたいのですが、会社で働いていた時と自分で起業した時、どっちが楽ですか?

西田氏:
難しい質問ですね。正直、仕事量はそんなに変わらないです。ただ、やりたいことをしているので今のほうがモチベーションは高いです。

藤浪氏:
自分で何でも決められるのは楽ですね。でも、正直なところ、資金調達だとか、そう言ったところで危機感に苛まれる時は時々あります。それ以外はのびのびとやっていますね。

田中氏:
大学の技術以外に、大学のどんなリソースを起業してから活用していますか?

嶂南氏:
私の場合は、あまり大学の技術をそのまま使わなかったですね。あまり大学が研究していないなという印象があったので(笑)。どういうことかというと、自分が専門としていた交通やスマートシティ関連の研究は、現場にいってリサーチをして初めて価値が出るものだと思うのですが、多くの研究はパソコンでシミュレーションすることが多く、その研究をやって何の意味があるんだと個人的に思っていたからです。大学のリソースという観点では、仲間集めの際に活用しましたね。サークルや大学の横の繋がりがメンバー集めや実際のプロジェクトにつながる場合が多かったです。

岡田氏:
私もそう思います。AI関連ですと、やはり競争優位性はどれだけ優秀なAIエンジニアを確保できるかに直結していると思います。優秀な人材を東京で確保しようとするとかなりしんどいです。一方、当社の拠点がある京都ですと、京都大学でAIを研究している優秀な学生と毎日接しているので、人材確保がしやすいです。なので、当社では地方大学の優秀な学生を積極的に採用しています。大学発スタートアップというと、大学の技術を活用できるところもメリットだと思うのですが、当社のようなAI関連スタートアップでは、AI技術の変化が早く、ある教授のAI技術を末長く活用することができない場合が多いです。大学の技術をもとにその技術をどんどん発展させることができる優秀な人材を確保することが重要だと思っています。

長曽我部氏:
私の場合も大学の研究室の後輩に製品開発を手伝ってもらっています。大学の研究室の技術はニッチな場合が多いので、外部の採用だと自社技術を理解してもらうのに時間がかかってしまいます。一方、その技術を開発している研究室の後輩たちの方がすんなり開発に入ってもらえるんですね。後輩にとっても、研究をビジネスにするという経験ができるメリットがあります。

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石田:
藤浪さんは北海道大学発スタートアップを立ち上げたとのことですが、北海道の地域活性化を目的とした活動はされていますか?

藤浪氏:
実は起業前は北海道に縁もゆかりもなかったのですが、北海道大学の川村教授を紹介していただいて北海道大学発スタートアップを立ち上げてから、一年のうち半分くらいを北海道で過ごしています。その中でやはり北海道の良さや大学発スタートアップの良さが見えてきていますね。地域について、まず北海道は人が集まりにくいんですね。例えば、IoT人材の確保のために人材派遣会社に頼んでも北海道にIoT人材は50人しかいません、というようなことがあるんですね。その反面、北海道を盛り上げるために協力してくれる地元企業もいて、一緒に製品開発してくれるところもあります。そういった協力を得ながら、北海道でIoTの利便性に気づいていない企業、工場がたくさんあると思うので、そういった方々とIoTを活用しながら北海道を盛り上げていきたいと思います。

田中氏:
scheme vergeも地方でもビジネスを広げていらっしゃいますが、どのように各地域のプロジェクトをマネジメントしているのですか?

嶂南氏:
当社は、ありがたいことに全国の様々な地域からお声がけいただいているのですが、プロジェクトを立ち上がる際に各地域のブランチを立ち上げ、その地域の大学の関係者をリクルートしてそのプロジェクトを任せるというスタイルをとっています。現在は、大阪と高松にスタッフが常駐するブランチを置いています。今後は名古屋にも置きたいと思っています。

長曽我部氏:
自社で営業せずお客さんの方からきてもらうようになってきているとのことですが、嶂南さんはその状況をどのように実現されたのですか?

嶂南氏:
半分くらいはPlug and Play Japanのおかげなのですが、自社でやっていることとしては、短期的な売り上げにつながるクライアントとのやりとりをする部門と、長期的に関係性を築きたいクライアントとやりとりする部門に分けています。それによって、タイムスパンが異なるセールスを同時におこなうことができます。

石田:
長曽我部さんは今まさにスタートアップ立ち上げをしていらっしゃると思うのですが、どのようなことをされていますか。また、課題はありますか?

長曽我部氏:
登記について必要な書類を揃えたりするのに苦労していますね。あとは、今後の事業戦略を立て、それをどう事業計画に落とし込むのかという部分も難しいと思っています。

石田:
岡田さんも学生時代に起業されたとのことでしたが、事業立ち上げや資金調達の観点で気をつけた方が良かったなと思った部分はありますか?

岡田氏:
やってよかったこととしては、最初に商工会議所に相談しに行ったことですね。その時に、日本政策金融公庫を紹介してもらって、約400万円借りることができました。その時借りられなかったら、起業して2ヶ月で資金がなくなり、弊社はもう倒産していたと思います。
エクイティファイナンスについては、自分はエクイティについて何も知らないと自覚した上で、エクイティに詳しい大手法律事務所にお願いして資金調達のアドバイザリーをしてもらいました。それによって、安心して資金調達を行うことができました。外部の人の力を借りることは最初からやっておいた方がいいかと思います。

田中氏:
宇宙や海外への展開を目指す方もいると思いますが、今後の展開はいかがでしょう?

西谷氏:
当社の場合、創業当時から当社の​​​​高放熱素材を世界に持っていきたいと考えていました。でも今まだ実現できていない理由は、海外企業とのネットワークがないから、進出先のルールがわからないからです。あとは、技術が真似されるリスクを考えると少し怖いなと感じてしまってまだ踏み切れていないです。

藤浪氏:
確かにそういった怖さもありますよね。ただ、やはり人間思いつくことは似ていると思っています。なので、技術そのものよりも、技術をどう活かしていくか、そして実際にサービスを使っていただく方のUIやUXをどう向上させていくかが最終的には一番重要だと自分は思いますし、今後さらに注力していきたいです。

西田氏:
UIやUXの向上でも、先ほどの海外展開の観点でも、当社の場合は宇宙への展開という側面でも、いかに正確な情報をいろいろな人から速く取れるかが重要だと思います。正確な情報の積み上げがないまま、展開や改善に向けて動くと怖いと思います。まずは、国内でのプロジェクトを通して改善や当社プロダクトの価値の向上をして実績を積み上げつつ、情報収集しながら海外展開、宇宙展開を目指していきたいですね。

西谷氏:
そうですね。当社のようなセラミックスのものづくりの場合、海外に展開しても海外で生産できない場合があります。やはり、どこまで国内で積み上げて、どこから国外に展開するのか、正確な情報を収集して見極めてから海外進出したいですね。

田中氏:
これから起業しようと思っている方に対してアドバイスをお願いします。

藤浪氏:
私は石橋を叩いて渡るタイプなんですね。なので、デジタルマーケティングの会社でしっかり売り上げを上げてチームも安定しているからこそ、ティ・アイ・エルで色々挑戦できると思っています。そういったリスクヘッジは大事かなと思います。
あとは、スタートアップにとって大手企業との協業は重要なのですが、大手企業と協業することのハードルが高いと感じました。大手企業の方には「そのサービス無料で提供してよ」と言う方もいらっしゃるのですが、スタートアップは資金がない中で頑張ってプロダクト開発しているので、そのスタートアップの状況を大手企業に理解をしていただくことが大切だと思います。

西田氏:
大手企業に入った後に起業したいと思っている方に対してのアドバイスですが、会社を辞めるか辞めないかは結局お金で決まるかなと思うんですね。会社をつくる前に足もとを固めて、会社を辞めた後どのくらい給料が欲しくて、そのためにどのくらいの売り上げが必要なのか、より具体的に事業計画、人生計画を設計していくことが重要だと思います。

西谷氏:
私はリスクはあまり深くは考えなかったですね。ゼロからのスタートだったので失うものはない、まずは行動しようと思っていました。

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大学発スタートアップの立ち上げ秘話や大学発の特徴や強み、中部圏とその他の地域の特徴の違いについてお話いただき、大変内容の濃い、面白いパネルディスカッションになりました。登壇してくださった皆様、ありがとうございました。

最後に、ご登壇いただきました皆様、本イベントにご尽力いただいた皆様に改めまして心より感謝申し上げます。
引き続き、名古屋から中部圏、東海地域でイノベーションを加速できるよう尽力して参りますので、これからもどうぞPlug and Play Japanをよろしくお願いいたします。
それでは、次回のNAPPイベントでお会いしましょう!

次回NAPPイベント:
8月19日(木)15:00-17:00
【NAPP Corporate Innovation Session】モビリティ x カーボンニュートラル 
詳細はこちらからどうぞ!
https://plugandplay.zoom.us/webinar/register/WN_mNQ25HydRdit_2_bAuCDbA


Special thanks to:
<本イベントの準備・運営にご尽力いただいた方々>
名古屋大学 イノベーション戦略室 特任教授 藤原啓税氏
名古屋大学 イノベーション戦略室 特任教授 田中裕章氏
株式会社カチノデ代表取締役 森一浩氏
NAGOYA Innovators Garageの皆様

<ご登壇いただいた方々(登壇順)>
株式会社U-MAP 代表取締役 CEO 西谷健治氏
FiberCraze 長曽我部竣也氏
scheme verge株式会社 President & Chief Executive Officer 嶂南達貴氏
株式会社データグリッド 代表取締役CEO 岡田侑貴氏
ティ・アイ・エル株式会社 代表取締役CEO 藤浪慧氏
株式会社TOWING 代表取締役CEO 西田宏平氏
株式会社MTG Ventures 代表取締役 藤田豪氏
リアルテックホールディングス株式会社 グロース・マネージャー 木下太郎氏
株式会社サムライインキュベート Investment Manager 平田拓己氏

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