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興味深い「問い」作りの方法

Society5.0やAI技術が発展してくる未来を考えれば、想像&創造の力がますます重要になってくるのは間違いない。

子どもたちが常々、疑問を持つ習慣を持ち、答えのないものに対して自分なりの考えを持つ。そんな風に成長して欲しいなとよく思う。

そこで本校でも教育活動の中で、想像と創造にかかわり、答えのないものに対して、答えを出していく取り組みや「問い」を立てて調査する取り組みをカリキュラムの中に組み込んでいる。

ただ、そうは言うものの、「問い」を立てるというのが非常に難しい。
これは子どもに限らず、大人も同じ。

しかし、ちょっと観点をズラしてみると、興味深い「問い」が見えてくる。

そこで今回は、本校の取り組み紹介とそういう「問い」作りの手法について紹介したいと思います。

「問い」の取り組み(松蔭GS・GL)

「問い」と想像&創造の力を特に必要とするのが、2学期に行う「日常のなぜ」そして、中2の3学期以降、毎学期末に作成する英語レポート。

「日常のなぜ」
普段の生活の中で気になったことを「問い」に立て、それに対して自分のこたえを出す。どこかに答えがあるものではない、答えがないものに対して、答えを出していくのが目標

今年度の興味深かったテーマは

①軍艦巻きになぜキュウリ?キュウリ以外の可能性を探る。

また後々紹介したいと思いますが、最終的にはキュウリ以外の色んなものを組みあわせて検証し、キュウリ以外で軍艦巻きにあう食材を提案しました。

②日本人はなぜ嫌われることを恐れるの?
③小学校ではなぜシャーペン禁止?理由が分からない。
④なぜ人によって綺麗と感じるものが違うの?
⑤正義と悪は何の判断で決められているの?

中学生がこういう問いを立て、自分なりの答えをみつけてプレゼンするというのが、2学期の「日常のなぜ」の取り組みです。

より具体的にはこちら。下は昨年度、上手くまとめていた生徒の紹介。


また中学2年生の3学期からは、
オンライン英会話で世界各国の先生方に自分の興味関心をもとに作成した質問でインタビューして、それを英語でレポートにまとめる。

昨年度の中2生徒で興味深かったのは、スマホのレポート。

小学校からスマホを持ちたかった彼女は、以下の3つの質問を設定し、世界数か国の先生にインタビュー調査を行った。

①スマホを持ち始める年齢はいつ?
②スマホの問題は何?
③スマホなしで1週間、生活できますか?

アフリカのある国の先生は、グローバル化やこのデジタル社会を考えたら、できるだけ早くで5~6歳からが良いと言ったり、スマホの問題は世界共通で視力低下や依存性、家族でのコミュニケーションロスが生まれるなど、面白い調査結果を提示した。

こういうことをすると、生徒たちはグローバル化がどれだけ浸透していて、世界の状況を生で知ることができるので、同時に知見も広がる。

そしてその後は、

中3の1学期は日本と海外のジェンダーにかかわる何かについてのレポート

ある生徒の質問項目はこちら
①男の子は、こうあるべきと言われたらそれは何?
②女の子は、こうあるべきと言われたらそれは何?
③15歳の男の子が、アナと雪の女王が大好きでコスプレしている。どう思いますか?

ジェンダーの固定概念を調べ、海外の先生が③でどういう反応をするかを調査した。これも各国の違いが出て、③についての回答が考えさせらえるものばかりで、ジェンダーとは何かについて知識が深まった。


中3の2学期は日本とフィリピンの違いについてのレポート
(中3は3学期にフィリピンで研修を行うため)

と続いていく。

こんな風に問いを立てて、まとめていく授業をカリキュラムの中により多く組み込んでいる。

生徒の問いを引き出す発問や考え方

前置きが長くなりましたが、

とは言っても、中学生や高校生がいきなり興味深い問いをすぐに思いつくわけではない。それはきっと大学生でも大人でも同じだと思う。

「問い」を作るには、トレーニング!問いトレが必要。

そこで教員からの声掛け、また生徒側からの考える観点として最初に説明し、声かけを行うのは、観点をズラすこと。

①時間の観点でズラす。
- 昔はどうだったの?
- その起源は?
- その歴史は?
- 未来はどうなるの?
- 今後はどうなりそう?

②場所の観点でズラす。
- 日本での地域差は?
- 海外はどうなの?

③そもそもそれはなぜ?


例えば、ある生徒が「日常のなぜ」の取り組みで、小学校のランドセルをテーマにしたい、とする。

そこからの調べ学習は、以下。

ランドセルっていつが始まり?
ランドセルって全国共通?
ランドセルって世界的にも同じ?
ランドセルって今後、どうなるの?
そもそもなぜランドセルなの?

ネットで軽く調べると、
起源は幕末のオランダ軍のカバン
実は、ランドセルを使っていない地域がある。
世界的にはそういうのがない。
ランドセルは、重さの問題や値段が高いという問題あり。
ランドセルは安全面でよいという話もある。

そういう情報を得る。

そこで、彼女が気づいたのは、

ランドセルって絶対に小学校にしていかなければならない
ものではない、ということ。

つまり、小学校1年生はランドセルというイメージがあるが、別にそうでなくても良い。なのに、なぜみんな使い続けているのだろうか?という疑問。

これで問いが完成。

ちなみにこの生徒の答えは、
①世間のイメージや年長の子の憧れ。
②祖父母がプレゼンとするという形が行事化。

その2つが合わさり、続いていると分析していました。
なかなか面白い考察でした。

この指導法は、もともとは大学や大学院で良く行われるゼミの先生との研究論文のアイデアだしがベースになっている。私自身がお世話になった大学の恩師や大学院の先生方の行い方を振り返り、中高の教育にあうような形に焼き直したものです。

他にも色んな観点のズラし方がありますが、まずは時間と場所をズラし、なおかつ「そもそも」を疑う。そんな考え方を行うと、不思議の「なぜ」があふれてくる。

そして、こういう形の活動は、ways of thinkingというか、色んなものの見方の練習にもなり、社会科で学ぶ地理的視点や歴史的視点を現実社会と結びつける機会にもなっていく。

何よりも今の中学生が何を不思議と思うのか、そういうものを一緒に探っていくのは、とても楽しく、教員陣も勉強になることばかりです。

生徒と先生が一緒に学び合っていく、今後もそんな風になっていけばよいなと思います。

ご参考になれば幸いです。


ズレと創造力についてはこちらも。


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