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失敗する企業投稿キャンペーンはなぜ消滅しないのか

KIRINさんには失礼だが、SNS投稿キャンペーンとしては絶望感を覚える施策を見つけてしまった...。以下は、1/31開始のinstagramの公式フォロー&所定#タグのユーザー投稿キャンペーンである。

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企画内容として、公式Instagramをフォローした上で、「#私らしいエシカル」な暮らしの様子を投稿してください、とのことだ。エシカルとは『人と地球環境を考慮してつくられたモノを購入、消費すること(公式サイトより)』であり、実に今風であり、且つ、決して悪い概念ではない。

しかし、一般人が「エシカル」という言葉を日常的な文脈で使用し、自らの暮らしの様子を投稿するには、唐突感と不自然極まりなく、投稿ハードルが高い施策と言えるだろう。元ZOZOの前澤さんTwitter企画にように、インセンティブが魅力的であったり、施策自体が広く認知されている場合は、投稿ハードルが下がることもあるが、このエシカル含め、多くの企業キャンペーンはそうもいかない。

#PR #懸賞頼り  は避けられない
まだ始まったばかりのキャンペーンであるものの、所定#タグの使用はInstagram内で、40件弱と極めて少ない。しかも、「#PR」付きの仕込みインフルエンサーと、「#懸賞」付きの懸賞ユーザーが中心であり、メーカー側が狙った理想の投稿模様とはほど遠いはずだ。Twitterへの波及状況も調べたが、絶望的な状況だ。

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なぜ投稿企画が減らないか
企業が一方的にブランドを語るよりも、消費者に語ってもらった方が良いという考え方が根本にあるからだ。加えて、消費者が自発的に声を発信できるWeb媒体であれば、尚更それが期待される。

そもそも、消費者が自発的にブランドを語ってくれる潮流を、意図的に作ることは容易ではなく、全ての施策に対して、十分な予算、時間、人員が割けるとは限らない。SNSで、一定のオーガニックバズを期待するのであれば、ユーザーインサイトの研究も必要だろうし、適切な実施タイミングを検証する必要もある。しかし、多くの失敗施策は、低予算や余り予算で、やらないよりはマシ、という判断で機械的に実施されることが多い。

これは事業会社さんだけが悪いわけでない。私もたくさん反省があるのだが、エージェンシー側も失敗すると思って提案しているケースがある。そして、ブリーフを出す発注側も、仕様を詰めて提案を担う側も、運用する側も「正直なところ、厳しいだろうなぁ、、」と誰もが思いながらも、仕方なく、事が進んでしまう...。

失敗したことにしないための仕事ループ
やがて投稿期間が残り僅かになり、当該投稿キャンペーンは成功とは言えない結末が近づいてくる。そうなると一同が必死になる。関係者の家族や友人を使った、ADでもインフルエンサーでもない「自然な投稿」を増やす工作をしたり、インセンティブを倍にして、懸賞ユーザーの投稿を増やしたり、あの手この手で投稿数を増やし、数字上は失敗していない体裁を作り上げる。一定の成功とラーニングを得たというレビューが為され、やがて無かったことになるという...。

投稿キャンペーンのカギは、投稿する必然性と投稿ハードル
投稿キャンペーンは、投稿することが自然な文脈であり、且つ、ターゲットとなるユーザーが自然に乗っかることができるようなハードルの設定が必要である。

その点、2019年の、ゼスプリ「アゲリシャスバイト」募集キャンペーンは上手に設計されていたと思う。ユーザーの参加方法が全部で5種類あり、ダンス動画を投稿する本格的なものから、テキストをツイートするだけの容易なものまで、レベルのバリエーションがあった。何より、皆で「バイト」をすることでキャンペーンを盛り上げるという、コミュニケーションが根底にあったからこそ、キャンペーン臭さがなく、一定の盛り上がりも見せたのではないだろうか。

企業発のSNS投稿キャンペーンは、今後も続いていくであろう。企業のプロモーションには、多少なり大人の事情は避けられないが、その中でベストを尽くす術はそれなりにある。発注する側も受ける側も、そういった術を常日頃学びながら、次なる施策に活かすことが大事であると思う。

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