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【百度石・お題目】万人のために工夫された仏教

合掌

皆さん、ご無沙汰しております。暦の上では秋となりましたが、まだまだ真夏日が続く季節ですね。熱中症などにも気をつけてお過ごしください。

昨今、世間ではリモートワークが普及する中、お寺でも遠隔で行う法要など「密」を避けた法事が増えてきました。仏教の本質を見失わず、どう時代に適応していくか、正覚寺でも試行錯誤の日々を過ごしています。

日蓮宗における仏教というのは、「万人の苦悩を解決するためのもの」として存在します。一般的に「僧侶の人たちだけが知るもの」という印象があるかもしれませんが、現代のリモート法要に限らず「いかにして多くの人々に仏教を触れてもらえるか」という工夫が昔からなされてきました。今日は、これまでに工夫されてきた仏教の在り方をご紹介したいと思います。


百度石(ひゃくどいし)を活用した「御百度参り」

皆さん「御百度参り」という言葉をご存知でしょうか。
文字通り100回お参りをすることではあるのですが、ただ100回お礼をすれば良いというものではありません。100日間、1日も休まずにお参りをするという僧侶が行なっていた修行のひとつです。

昔、修行僧は人目の少ない夜中にお寺へ訪れ、雨の日も、雪の日も、白い着物を着てこの「御百度参り」を行なっていました。100日間欠かさずお寺に訪れることで仏様や神様に顔を覚えて頂くだけではなく、己の中にある雑念が取り除くことができるとされるこの修行。しかし、一般の人々にとっては気軽にできる修行ではありません。
そこで、この「御百度参り」を僧侶だけの修行ではなく、僧侶以外の方々でも簡単に行えるようにと建てられたのがこの「百度石(ひゃくどいし)」という石でした。お堂と百度石を100往復してお参りすることで「御百度参り」と同じ御利益を授かることができると言われており、現在の正覚寺にも置かれています。

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↑正覚寺の境内に置かれている「百度石」。

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↑鬼子母神堂と百度石を往復することで、正覚寺でも御百度参りができます。

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↑正覚寺の百度石は後ろに回りづらいため、このように一礼するだけでも構いません。

「御百度参り」は己の修行であると共に、その苦労の分だけ神仏から恵みを与えてくださる修行でもあるのです。
しかし、百度石を使った御百度参りもなかなか過酷なお参りです。もちろん、ご自宅から遥々お寺まで来てくださることもご利益に値するご苦労だと私は思いますので、無理して活用する必要はございません。まだまだ外出が危ぶまれる世情ではございますが、もし正覚寺にお参りに寄られた際は、ぜひこの百度石にもご注目ください。


69384字弱あるお経を7字に集約した「南無妙法蓮華経」

さらに時代を遡ると、実は「南無妙法蓮華経」というお題目も、万人が読経できるようにと日蓮聖人が集約なさった言葉です。

日蓮宗は、お釈迦様の心を現したものとして「妙法蓮華経法華経)」を読経する宗派ですが、実はこの「妙法蓮華経」は全部で69384字。私たち僧侶が一般的なペースで読み上げても、すべてを読経するのに12時間程度要します。
そこで、日蓮聖人は万人でも読経できるようにと、たった7文字でまとめたお題目が今でもよく耳にする「南無妙法蓮華経」なのです。

そもそも、「南無妙法蓮華経」とはどういう意味なのでしょう。
「南無妙法蓮華経」は「南無」と「妙法蓮華経」にわかれ、「妙法蓮華経」は最も大切な教えが詰まったお経と日蓮聖人は定めています。そして「帰依する」という意味の「南無」をつけて、「南無妙法蓮華経」と唱えるのです。つまり「南無妙法蓮華経」には、「法華経を敬い、教えを大切にします」という思いが込められています。

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↑「南無妙法蓮華経」と書かれた正覚寺の御本尊

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↑「南無妙法蓮華経」と書かれた団扇太鼓(うちわだいこ)。お題目を唱えるときに叩く太鼓です。

7万字弱を読経せずとも、この「南無妙法蓮華経」を読経さえすれば、誰でも苦悩から解決される道へと導かれるようになったのです。

これまでご紹介した通り、百度石やお題目には「差別なく万人が平等に成仏できる」という仏教思想の原点が根付いています。私たちもその精神を忘れずに、これからも現代における仏教の在り方を模索し続けてまいります。


再拝


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