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投資&資産形成をはじめるその前に! 学生も大人も知っておきたいキホンのキ

なかなか第一歩が踏み出しにくい「投資」の世界。
18歳からはじめる投資の学校』では、これから投資をはじめてみたい超初心者向けに、投資の基本から資産形成をする上で知っておきたい知識まで、読み進めやすいクイズ形式で解説しています。
今回は、本書の著者であり、ファイナンシャルプランナーの鈴木さや子さんとのインタビュー記事をお送りします。大学生・高校生のお子さんをもち、定期的に大学の講義で現役大学生を指導している鈴木さん、等身大の若者の目線を知っているからこそのリアルなお話をお伺いできました。

学生や保護者の人にも読んでもらいたい、『18歳からはじめる投資の学校』

編集者:
鈴木さんに執筆していただいた本書は、テーマが「学生さんに読んでもらえる投資の入門書」だったのですが、ご依頼するうえで要となったのが、学生読者の目線に立って書いてもらえそうかというところでした。そこで、大学で定期的に講義をしていたり、大学生・高校生のお子さんをおもちの鈴木さんのことを知って、ご依頼しようと決めたんです。

鈴木さん:
それって、最初からご存じだったんですか? 知らなかったですよね、私に大学生の子がいるとか。

編集者:
あ、いえ存じていました。お声がけする前に、鈴木さんのことはくまなく調査済みです。

鈴木さん:
盛れてない写真とかいっぱい出てなかったですか!? 大丈夫ですか!?
……実は、依頼をいただいた時、タイトルに「18歳」と入っていたからやりたいと思ったんです。これがなくて、ただ「投資の学校」だったら、もしかしたら断っていたかも。

会社を開業した年から、子どもから大人までを対象にマネー教育を推進する団体に所属していて、長年子どもやその保護者対象のセミナーなどを開いてきました。最近は、高校生や大学生にも話をするようになってきていたけれど、1時間弱のセミナーだけだとなかなか伝わりきらなくて。いつか体系的にまとめたコンテンツを作りたいなあと思っていたんです。だから「18歳」という設定は、私の中でドンピシャなんですよ。うちの下の子ももうすぐ18歳ですし、上の子は21歳でまさに対象読者ですよね。

これまでも定期的に大学で資産形成の授業をしているんですが、学生さんからバイト代に関して扶養の話とか、所得税の話だけじゃなくて、iDeCoやNISAの話を聞きたいという子も増えてきています。ですので、この年代の子に向けたお金の話が本にまとめられるといいなと思っていたんです。

編集者:
それから、学生さんをメインの対象読者に設定しつつ、若手社会人や投資初心者の方も読めるように書かれているというのは、この本のポイントの1つかと。

鈴木さん:
タイトルが「18歳から」となっているのがいいですよね、限定していないから。「18歳で」だと本当に大学生向けで絞られてしまいますけど。
私としては、お子さまを持つ親世代の皆さんにも読んでほしいんです。きっとお金とか投資について、お子さまにどう伝えたらいいのか悩んだ経験ってみんなあると思うんですよね。そんな時のヒントになればいいなと。

本書の対象読者とは少し外れますが、今年の夏は公民館で保育園児から小学生を対象に親子参加型のマネー教室を開いたんです。「お金ってどうやって手に入るの?」とか、お金の歴史やお金の貯め方、使い方などの話をしたんです。子どもたちも純粋に楽しんでくれましたが、親御さんたちがすごく食いついてくれました。なにより、子どもは親の背中を見て育ちますから、親自身がお金についてもっと学んでくれたらいいなと。だから本書が、親子でお金のいろはについて学ぶきっかけになれればと思うんです。

初心者が資産形成のためにはじめるなら……?

編集者:
これから投資をはじめるならば、おすすめはやはりNISAなのでしょうか。

鈴木さん:
もし今から投資をはじめるならば、利益に税金がかからないNISAからが良いと思います。お勤め先に制度があれば、確定拠出年金も良いですね。その場合、マッチング拠出も使えるなら活用してみてください。

また、老後資金を確実に作りたいと思っている働く人(税金を納めている人)は、iDeCoが最有力候補になります。今は、会社の確定拠出年金に入っていてマッチング拠出をしていない人もiDeCoを利用できるようになりました。iDeCoでも拠出している間の売却益等に税金がかかりません。

編集者:
iDeCoだと、住民税と所得税を減らせるって聞きました。

鈴木さん:
そうなんです。その効果は絶大ですよ。
例えば、月2万円の拠出であれば1年で掛金24万円になり、所得税率が5%の人であれば住民税の均等割10%として、「24万円×5%」+「24万円×10%」の年3.6万円分の税金が減らせます。所得が上がれば税率も上がりますが、掛金を拠出している限りこの効果がずっと続きます。
しかも、積立したお金は60歳まで一切引き出すことができないので、老後資金として着実に貯められますね。受け取りの際は、退職金や公的年金と同じ税制優遇を受けられます。

ですので、お得にそして着実に老後資金を作りたいならiDeCo、60歳までの間、使いたい時に自由に売却できるようにしたいならNISA。NISAでは毎年の所得税等は減らせないけれど、シンプルに使いやすくて楽ですね。

編集者:
確かに楽ですよね。ただ、NISAは収益が出ているか気になって覗いてみては「全然増えてない」と心が折れそうな時もありますが……。

鈴木さん:
長い目でみれば、世の中の経済は上がったり下がったりしながら緩やかに成長してきています。国や時期によっても異なりますが、その前提に立てば、基本的には資産を大きくできる可能性があるわけです。本書で紹介した「72の法則」や「126の法則」を使って計算すると分かると思います。

ですから、余剰資金があるならば長く続けるつもりで、少額から投資をはじめてみるのが良いのではないでしょうか。

少し先の将来に向けた資産形成をやる前に今からできる準備運動

編集者:
若い人たちがずっと先の未来に向けて「資産形成していこう」と考えた時、まず第一歩として何をするとよいのでしょう?

鈴木さん:
「ライフプランを考える」ですかね。ただし、就活が不安だったり、目の前のことに不安を抱えている人がまだまだ多いと思います。だから、学生さんに限定してアドバイスするとすれば、「自分のキャリアをどうつないでいきたいか」を考えることかなと思っています。

資産形成したくてもお金がないから、大学生のうちはアルバイトをして「資本の種をつくる = 稼ぐ」行為が必要です。将来に対する不安をなくすのであれば、「自分が働くことでどんな価値を提供できるか」を知ることがすごく大事かなと。

それから、ゆっくり勉強できる時間は今だけかも知れないので、本書を使ってもらいながら投資のこともしっかり学んで、無駄にならないお金との付き合い方を練習してもらうといいんじゃないかなと思います。お金がないといっても、例えばNISAなら1,000円など少額でもできるので、試しにやってみるのもいい経験になります。

今は、とりあえず稼ぐ。稼いで、お金をちゃんとやりくりして、貯金して、投資資金をつくって、そして投資の練習をちょっとずつしていく。でも、友達づくりや人脈づくりも忘れないで欲しいです。資金づくりに一生懸命になって友達を失ったりしないように。友達や人脈だって、お金以上に大切な資産です。

実になる投資のやり方 & 資産形成の知識

編集者:
本書は、主に大学生から若手社会人向けに執筆していただきましたが、鈴木さんの前作と読者層はかなり違っていたかと思います。
執筆していただく中で意識されたこと、ここは難しかったというところもお聞きしたいです。

鈴木さん:
タイトルに投資という言葉が入るので、うんと投資の解説にボリュームをもたせつつ、投資を少しやっている人が読んでも意味のあるレベルの内容も入れようと思って。1番苦労したのは、何といってもクイズです!

編集者:
本当にありがとうございました……。
鈴木さんがおっしゃっていたように、投資を少しやっている人が本書を読んだ時、例えば利回りの計算問題とか、ちょっと難易度の高いクイズもあると解きごたえが出てバランスがよかったと思います。

鈴木さん:
よかったです! 投資をもうやってるよと言っていても、会社の確定拠出年金やNISAで、あまり考えずに何となくやっている場合も多いんです。投資系のYouTubeチャンネルで「全世界株式インデックスファンドがいいよ」とか「あの米国株がいいよ」などと言うのを聞いて「そうなんだ!!」みたいな感じでなんとなく。債券と株式の違いや中身をきちんと理解している人は、多くないと感じています。

そういう「リスクを減らすには債券がいいって聞いたから」というノリで投資している人に、「なぜリスクが低いのか」というところを補足できる情報を書こうと思って、それで債券だけで丸々1章分使って取り上げたんです。

編集者:
私も本書を担当して「あ、こういうものなんだ」とはじめて知りました。

鈴木さん:
そうですよね、そもそも投資は資産運用の選択肢の1つで、絶対しないといけないものではないんです。「今はじめないとやばいよ」と世間の有識者やメディアが煽る流れになりがちですが、「投資をしなくても生きていけるけれど、選択肢の1つとして知っておくことは大切だよ」ということがじんわり伝わればいいかなと思っています。

編集者:
確かに、投資以外の話も実は本書では重要で、手厚く解説してもらっていますよね。「オリエンテーション」の章にある社会保険や税金の話も、よく分からないままになっている人が多いかもしれないですが、早めに知識として落とし込んでおきたいところですね。

鈴木さん:
そうなんです、「自分の中で落とし込みながら読んでほしい」とは思っていて、腑に落ちないところは自分で調べるきっかけになるといいなと。私の言うことも「信じるな!」とセミナーで言っているので!

投資や資産形成の世界では、誰にでも当てはまる正しい答えはないんです。生活環境が変わっていく中でも、「あ、前に比べて自分の価値観が変わってる」という瞬間がありますよね。そういう時しなやかに順応するために必要なのは、やっぱり知識だと思うんです。偉そうに言っていますけど、私も若い頃は投資も含めたお金の話には本当に興味がなかったし、中身も理解していなかったから。これからゆっくり知ってもらえればいいなと思うんです。

投資につきまとう詐欺のイメージ、実際のところはどうか?

編集者:
本書の打ち合わせで鈴木さんとお話させていただいた時、「大学で詐欺の話が多い」というのがとても印象的で。

鈴木さん:
そうなんですよ、私が大学生の時は、どちらかというとマルチ商法が多かったですね。ある時、渋谷の駅の構内で知り合いにマルチ商法の化粧品を売りつけられたんですが、気が弱くて、結局口紅を買っちゃったんです。
今はネット社会ですから、SNSを通して悪意のある人と簡単に接点ができてしまうし、たくさんの怪しい情報にも出会ってしまいやすいですよね。
見えないところで色々なことが起こってしまうので、昔よりも今の方が学生のことを周囲の大人が守ってあげづらいと思います。しかも18歳になれば成年なので、保護者が契約を取り消すこともできません。

編集者:
詐欺についても、本書の「オフィスアワー」の章で書いていただきましたよね。中には「ロマンス投資詐欺」というのもあるんですね。

鈴木さん:
これは、マッチングアプリなどで交際をスタートして、「結婚しよう。でも、結婚するにはお金が足りないんだ!」とか言って、相手から巻き上げようとするんです。それで、お金をもらったとたんにトンズラする、という。

編集者:
!? そういうものですか、あくどいですね……。

鈴木さん:
そう、古典的な手口だって油断大敵です……!
だから、本書のオフィスアワーを読んでもらったりして、どんな投資詐欺があるかを知って、自分の身を守る術を身に付けることが大切なんです。

「18歳」からの若い読者へ、選択肢を広げるためのお金との付き合い方を学ぶ

編集者:
インタビューっぽいことを最後に聞くと、18歳以上のどういう方に読んでもらいたいですか?

鈴木さん:
お金に困りたくない人ですかね。学費や生活費が払えなかったり、貸し借りでトラブルにあったり、進みたかった選択肢を選べなかったり、お金が理由で苦しんでほしくないんです。そのために、投資も含めて資産形成の知識を身につけてほしいと思っていて、だからこそ実は「オリエンテーション」の章こそ、よく読んでもらいたいところなんです。

編集者:
「選択肢を増やせる」という言葉は、本の中でも何度か出てきて印象的でした。

鈴木さん:
「お金があれば万事OK」という訳でもないじゃないですか。選択肢を増やすには、お金だけではなくてそれ以外の諸々のこと、知識や人脈なども含め育ててほしいという思いを込めています。その中でも、大切なお金をどう増やしていくかというところで、投資の出番なんです。

編集者:
そうですね、自分の手持ちのお金を増やす上でも投資は必要ですが、企業や経済とのつながりが実感できることも投資の良さなのかと。

鈴木さん:
そうなんです、もし世の中から投資がなくなったら確実に経済は止まると思います。個人的に、経済というのはお互いのために出したお金を受け取る側が感謝して何かしらの形で還元していく、一連の気持ちのつながりで回っていると最近思うんです。

株選びにしても同じで、「これからこの会社にこういうものをつくってほしい」という期待を込めて応援する気持ちからはじめてほしいんです。表面の数字だけで選ぶと、投資は多分長く続けられない。なので、株を選ぶときは本当に応援したい会社かどうかを考えることは大事かと。
そういう気持ちではじめた投資は、きっとすごく面白くなると思うんです。

〈目次〉
オリエンテーション ~「これから」のお金の動きをイメージしてみよう~
1限目 資産形成の基本のき
2限目 投資の基本のき
3限目 投資をきちんと勉強!~株式投資を知ろう~
4限目 もっと投資を勉強!~債券投資を知ろう~
5限目 プロにお任せ!~投資信託を知ろう~
6限目 早く始めたもん勝ち!~NISAとiDeCoを知ろう~
オフィスアワー ~投資も人生も自分次第~

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