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G7終了 問われるゼレンスキー氏の評価

・はじめに

周知のとおり、広島にて3日間にわたり開催されていたG7が無事閉幕した。7か国だけに限らず世界中の首脳が広島に集結した模様は連日大きなニュースになっていたが、中でも一番大きなニュースは今現在ロシアとの戦争を戦うウクライナのゼレンスキー大統領の来日だろう。元々リモートによる参加の予定だったというが、何とか来日し首脳会談、記者会談などでウクライナへの支援を広く呼び掛けていた姿は印象的だった。

ゼレンスキー氏は今ではすっかり「時の人」となった。「極悪侵略者」プーチンに対抗するか弱くも強い抵抗者、というイメージだろうか。少なくとも日本をはじめ西側諸国ではそんなイメージをもって語られることが多い。ゼレンスキー氏は果たして「偉大な指導者」なのか。私はここに民主主義の難しさを感じている。そんな私の雑感である。

・戦争に突入したウクライナ

今ことに日本では、ロシアⅩウクライナの構図は悪Ⅹ善の構図そのものである。間違ってもロシアを擁護する発言などしたら袋叩きにあうし、実際鈴木宗男氏などはその一人である。無論武器を使用し他国を侵略しているプーチンに全く酌量の余地などない。戦争という人類最悪クラスの悲劇を巻き起こした指導者など、最大級に非難されて当然である。ではゼレンスキー氏はいかに?政治家としての役割をいかように果たしたといえるのか?

政治家の役割は言うまでも「自国(民)を守ること」にあろう。それができた政治家は有能、できなかった政治家は無能とみなされてしかるべきである。そのためには時に自国民に負荷を強いることにもなるし、時に他国に譲歩することもある。権力者は基本現実主義者でなければならず、自国をいい方向に導くべく(=悪い方向に導くことのないよう)たまには権謀術数を張り巡らし、うまー---くやっていく。それが権力者の役割である。

実際いま日本では岸田政権のもと軍拡を進めている。軍拡など誰が総理大臣でも本当はしたくないはずだ。このご時勢に税金もかかる。しかし必要ならばせざるを得ない。それが権力者である(とりあえず今は岸田政権にすり寄ってみることとしておく)。

ではゼレンスキー氏はいかに。結果的に自国を戦争へ導いてしまった。時に「ロシアに対する反撃開始!」などという威勢のいいニュースも見るが、どのみちウクライナの女性子供ら非戦闘員が死に続けることに違いはない。核保有国であるロシア領を攻撃などできないので、西側諸国の力を借りつつ「領土防衛」に専心するのみだ。なぜこのような事態となったか。

・ゼレンスキー政権のこれまで

よく語られているが、この戦争は元々冷戦に端を発している。ソ連の一角だったウクライナが近年急速に西側にすり寄る姿勢を見せだしたことが、ロシアのクリミア半島支配などにもつながってきた。そこへきてゼレンスキー氏がNATOへの加入を表明したものだからロシアが猛反発したわけだ。ロシアにしてみれば隣国のウクライナに米軍基地などできたら?軍事的脅威が格段に上がる。ならばゼレンスキー政権を排除してしまえ!とばかりにウクライナ侵攻に踏み切った。当初は数日でキーウ陥落と踏んでいたが、実際そうはならなかった。

この様な事態、ゼレンスキー氏に責任はないか。日本の安倍氏のような「THE!政治家」なら、時にロシアの顔を立て、時に西側から資金を引き出し、時に西側に入りたがる国民をメディアを利用して懐柔し、時に親ロ派住民との融和をアピールするイベントを開催し、、、と少なくとも戦争という最悪の損失を避けるべくうまー----くやっていた気がする。それもまた権力者の役割だろう。

知っての通りゼレンスキー氏は元タレント・俳優であり政治家経験はなかった。政治というものがどのようなものかを知っていたのか。私はこのような人間が知名度を生かして大統領になってしまうことの是非は、もっと議論になってもよいと思う。
恐らく今の日本の元首が直接公選制だった場合、浜田雅功や大谷翔平が立候補すれば当選してしまうだろう。実際今井絵理子などタレント議員は数多い。それが民主主義の欠陥になりうるということだろうか。

・歴史の評価は?

しかしまだまだ一筋縄ではいかないのが評価の問題である。3月の時点でゼレンスキー氏のウクライナでの支持率は80%超え。ロシアの侵攻直後では90%を超していた。ロシアの攻撃により我が子を失った親はプーチンのみを憎むか。100年後キーウにはゼレンスキー氏の銅像でも立っているのか。歴史の評価(評判)がどうなるのかは後世にならないとわからない。

ドイツとの講和を捨ててひたすら戦い続けることを選んだチャーチル。「決して屈するな。決して、決して、決して!」と強い言葉で国民をあおり、結果的に多大な犠牲を払いつつも「ヒトラーから世界を救った」ことになった。ではもし違う選択をしていたら?歴史に「IF」はない。
魏という強力な敵に何度も北伐という無謀な戦いを仕掛けた蜀の諸葛亮は、今でも中国の英雄の一人である。ゲーム等の影響で「名軍師」として日本でも人気が高い。
また同じく中国では、金との徹底抗戦を主張した南宋の岳飛は英雄、現実的な講和政策を展開した秦檜は不人気だ。
そういえば日本でも大久保利通より西郷隆盛の方が人気が高い。このように人々が「なんかかっこよく強い」ほうに惹かれるのは変わらないのだろう。ゼレンスキー氏に関しても、この戦争が終わり大分たったころ、賛否両論色々な議論が交わされるのだろうと思う。

・おわりに

こんな感じでゼレンスキー氏について思うことを並べてみたが、「こうなってしまっている以上」戦争の終結とウクライナの復興を願うしかない。それは世界中の国が同様だろう。そのためには特に西側諸国は武器の支援を強化する、これが最大限の「必要悪」である。とにかく1日でも早く、核兵器が使われることなく、あの地域に和平が訪れることを祈るのみである。

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