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「塾に通うべきか」という質問

生徒や保護者との面談の中で必ずと言っていいほど聞かれるのがこの質問です。

私は基本的に

「塾に通わないよりも、通ったほうが学力が上がる可能性は上がります。しかし、その可能性の上がり幅は生徒本人次第です。」

という回答をしています。

塾に通えば成績は上がるか

「あの生徒は塾に通い始めてから成績が下がった。」

という反応を示す学校教員は少なくありません。

しかし、そもそも学校の定期試験の成績を見て塾を評価することは間違っています。

塾に通う目的は、大学受験への学力を高めたいためです。学校の成績を伸ばすためではありません。塾通いの結果、定期試験の成績が下ることは往々にしてあるでしょう。

学校の成績は受験科目だけではありませんし、範囲や内容が入試とずれるケースも多いからです。

同じ勉強じゃないか、と考えるから混同しますが、例えばクラブチームスポーツと体育の成績が連動しない、と考えればわかりやすいでしょう。

したがって、推薦入試など学校の成績を用いない形式の入試を受験するかをよく考えて塾を選ぶ必要があります。

学校だけでは十分ではないのか

はっきり言えば、学校の学習だけで大学受験に挑むのは不十分です。

私が勤務する私立高校は進学にも力を入れています。

当然、課外授業などもあり、課題も近隣の県立高校に比べると多いでしょう。小テストや補習も行っています。

しかし、それでも不十分なのです。

なぜならば、大学受験にとって必要なのは「自学」だからです。

塾は学校の代替手段ではなく、「自学」の代替手段

塾や予備校があたかも学校の代替手段であるかのように考えている人は多いようです。

実はそこが誤りです。

塾は学校の代替手段ではなく、「自学」の代替手段なのです。

逆に言えば、「自学」が十分に出来ているのならば塾は必要ないとも言えます。

確かに、塾は授業を行うなどのサービスを提供しています。ですから、あたかも学校の代わりになるように見えます。

しかし、実際には「自学」を自分で取り組むことが出来ない生徒が、物理的に「自学」を行う環境に身を置くためのサービスこそが塾なのです。

高校生の塾への認識の変化

それを如実に示すのが、塾への認識の変化です。

私の住む九州の地方都市では、以前(20年ほど前まで)は塾といえば小中学生の通うものでした。

小中学生が「自学」を出来るとは考えられていないため、多くの受験生は塾に通っていました。高校受験で塾に通う文化は、私が中学生のころから存在していました。

逆に、高校生は自分で「自学」が出来ると考えられていたため、一部の個人塾が個別対応はするものの、塾通いが市民権を得ていませんでした。

私自身は高校時代、塾に通っていたのですが学校でも、住んでいる地域でも少数派だったのを記憶しています。
(この辺りは首都圏と大きく認識が異なるでしょう。大都市圏の方は更に時計の針を20年ぐらい戻してもらうと近いかもしれません。)

そもそも、大手の予備校は福岡市だけ、地元の塾の高校生対象校舎が県庁所在地や中核都市にある程度でした。

ところが、現在はかなりの数の地方都市に高校生向けの塾が存在します。

2022年の4月の段階で、武田塾は福岡県の福岡市、北九州市という大都市を除いて11校舎あるようです。

東進衛星予備校の場合は12校舎です。

中学生向けの塾が人口減による生徒確保のために高校部を充実させている、という経営的な側面もありますが、明らかに九州のような地方においても、高校生向けの塾が市民権を得つつあるようです。

塾の形態の変化

さらに、塾の形態も変化しつつあります。

上記の武田塾は学習管理を主に行う塾で、授業をせずに「自学」を管理することを売りにしています。

東進衛星予備校は塾業界でいち早く映像授業を取り入れました。もちろん動画コンテンツの質は高いのですが、実際にはチューターの学習管理がセットで行われています。

また、あの大教室、マスプロ教育の代名詞であった代々木ゼミナールでさえ、個別指導部門を充実させています。

塾へ通うのは決めたが、どこへ通うか…

結局のところ、塾自体に通うことは大学受験にとって大きなメリットである、と私は考えています。

もちろん、学習管理なども学校で行っているところもあります。

しかし、学校では授業を作成する教員が自学管理も行うという、コンテンツ作成と管理業務が分離されておらず、どう考えても不十分な体制だと言わざるを得ません。

これは学校の構造的限界であり、社会全体として取りくむ課題であるため早晩に解決する事はないでしょう。

したがって、「自学」を充実させるという観点から塾に通うことは極めて有効的な手段と言えるでしょう。

ただ一点、気をつけなければならないことがあります。

塾の形態と生徒本人の学力や性格などを考慮して、マッチングを考えた塾選びが必要ということです。

この辺りの内容は別記事でまた書いていきたいと思います。


学校の教員の中には、塾や予備校を嫌う人も多いようです。

私は両方の経験があるので、何とも言えませんが。

ちなみに、九州には少し前まで高校が予備校の代わりをする「補習科」というものが存在していました。

今も、中四国の一部には残っているようですね。なかなか興味深い風習です…

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