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お客様がファンになる野菜販売

この記事は、
「世の中にあるマーケティング手法を野菜販売に応用したら?」
というテーマを考察しています。

野菜の販売にお悩みの方々に、新たな視点と解決の糸口をご提供できれば幸いです。


顧客はなぜファンになるのか?「依存」を生み出す脳内物質の秘密

本日は、「ファンになるメカニズム」について詳しく解説いたします。人間の心理を理解することで、人の心を動かすことができるのです。

「依存」もまた、人の心を動かすための重要な要素と言えるでしょう。

簡単に言うと、「依存=ファン」と捉えることができます。

「人の心はどのように動くのか?」「人はどのような思考プロセスで行動しているのか?」と考えたことはありませんか?

施設園芸などで野菜を育てていると、どうしても野菜の品質や生産効率に目が行きがちですが、購入してくださるお客様がどのようなことを考えているのかを知ることは非常に重要です。

それでは、今日ご紹介する内容を野菜販売に応用したらどうなるのでしょうか?

まず、人がファンになるということには、ドーパミン、セロトニン、ノルア
ドレナリンという3つの脳内物質が深く関わっています。

これらの脳内物質の名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

なぜこれらの物質がファン化に関係しているのかと言うと、ファンは「依存」によって生まれるためです。

つまり、私たちが動かすべきは「脳内化学物質」なのです。

ドーパミン:快楽と報酬で購買意欲を高める!

依存性の高いものには、ドーパミンが大量に分泌されるものが多く、中には禁止されているものも少なくありません。

では、マーケティングやセールス、ビジネスにおいて、どのようにすればドーパミンが溢れ出すような商品やサービスを設計できるのでしょうか?

野菜販売でドーパミンを分泌させる… 容易ではありませんが、品質はもとより、例えば農園での収穫体験イベントやワークショップを開催し、「農作物に触れる楽しさ」を提供したり、珍しいハーブやエディブルフラワーを販売したりするのも有効かもしれません。

植物工場の場合、収穫体験は難しいかもしれませんが、工場見学などは実施できそうです。

また、他ではなかなか見られないような珍しい品種を育ててみるのも良いでしょう。「ここでしか買えない」という特別感は、購買意欲を大いに刺激するはずです。

セロトニンは、一般的に「幸福物質」と呼ばれています。楽しさに加えて幸福感も得られる… 素晴らしいと思いませんか?

ノルアドレナリンは、私たちに刺激を与えてくれる物質です。

つまり、これらの脳内物質はすべてポジティブな効果をもたらし、「快楽×幸福×刺激=ファンになるための要素」となるわけです。

つまり、ファンとは、ある意味「依存」であると言えるのです。

ギャンブル依存は、総合的に判断すると、結果的に財産を失ってしまうため、否定的なものとして捉えられています。

このように、「ファン」と「依存」は、言い方の違いでしかない場合もあるのです。しかし、脳内で起こっている現象は全く同じです。

ドキドキやハラハラ… これらの感情に、脳科学的な視点から見ると、大きな違いはありません。

ここで重要なのは、「どのようにすればこれらの感情をコントロールできるのか」ということです。

心理学が研究され始めた1920年頃から、マーケティングにも心理学の知見が導入されるようになりました。

ジークムント・フロイトの甥が、フロイトの研究内容をマーケティングに応用した結果、それまでタバコを吸わなかった女性たちが、こぞってタバコを吸うようになったのです。

その理由は簡単です。タバコはドーパミンを分泌させ、快楽を与えてくれるからです。

ではドーパミンは、どのようにすれば分泌されるのでしょうか?

それは基本的に、「報酬」が支払われることです。

宝くじに当たった時… 少し突拍子もない例え話に聞こえるかもしれませんが、重要なのは「宝くじに当たると何が良いのか?」ということです。

どんな小さなことでも、どんな大きなことでも、それが「快楽」に繋がる理由は、「ランダム性」にあります。

例えば、ゲームが依存性を持つのも、そのためです。

「次は何が起こるのか?」「どのくらい良いアイテムがもらえるのか?」がランダムで分からないからこそ、「ランダム報酬型」のゲームにハマってしまうのです。

オンラインゲームの「アイテム課金」は典型ですよね。

何回目に挑戦すればすごいアイテムが出てくるのか分からないからこそ、みんな必死になって課金してしまうのです。

何回目に挑戦した人がボスを倒せるのか、何人目のプレイヤーが伝説の武器を手に入れるのか… その「ランダム性」こそが、人々を熱中させるのです。

そして、見事成功した時、脳内ではそれまでの期待感が爆発的な快楽物質の分泌へと変わるのです。

野菜販売に応用するなら、なにかの課題をクリアすると、「ランダムで野菜が送られてくる」というのはいかがでしょうか?

ゲームの「ガチャ」のような要素を取り入れることで、お客様は自然と商品を購入してくれるようになるでしょう。

しかし、多くのビジネスでは、この「ランダム報酬」が導入されていません。

セロトニン:幸福感と安心感で顧客を虜にする

実は「依存」について調べてみると、ほとんどが「快楽物質」であるドーパミンに関する研究ばかりで、セロトニンについてはあまり注目されていません。

セロトニンは「依存性がない」と言われていますが、人間は誰しもが幸福感を求めているのです。

では、どのようにすればお客様に「幸福感」を感じていただくことができるのでしょうか? 実は、「幸福感」にもメカニズムが存在するのです。

選択肢が増えると、人間は幸福感を感じやすくなります。「お金では幸せは買えない」と言う人もいますが、ある程度の経済力があれば、選択肢の幅が広がり、幸福度も高まります。

しかし、ある程度の段階に達すると、お金があっても選択肢の数が頭打ちになってしまうため、それ以上はお金と幸福度は比例しなくなります。

例えば、某アイドルグループが大人数の48人組なのはなぜでしょうか?

それは、どこかに自分の好みのメンバーがいる可能性を高めることで、ファンに幸福感を感じてもらうためです。

この観点では、多様な野菜を揃えることにも意味があるのかもしれません。

一方で、「選択肢が多いと人は選べなくなる」という逆説的な研究結果も報告されています。

これは、「決断すること」と「幸福感」は異なるためです。

選択肢が多すぎてしまうと、人は決断を先延ばしにしてしまいがちです。しかし、最終的に「どれを選んでも大丈夫」という安心感を与えることができれば、幸福感を高めることができます。

「どの野菜にも外れ無し」ということですね。

つまり、「選択肢は多い方が良い」と「選択肢は少ない方が良い」の、両方の側面を踏まえて、バランスを取ることが重要なのです。

ノルアドレナリン:緊張感と高揚感で購買意欲を高める

そして最後に、もう一つ面白いのが「刺激」です。これは、あまり意識されることのない要素ですが、非常に重要です。

「刺激」はノルアドレナリンと関係があり、心拍数を上昇させたり、低下させたりします。

最新の技術では、心拍数の増加、汗の分泌量、瞳孔の開き具合などから、その人が商品を購入するかどうかを予測することができます。

そんなことまで分かるなんて… 驚きですよね!

最近では、これらの生体情報を機械で測定することが可能になりました。そして、これらのデータは、非常に高い予測精度を誇ることが分かっています。

商品を購入する際に、少し汗ばんでいたり、興奮している様子が見られる場合は、購入確率が高いと言えるでしょう。

だからこそ、多くの企業が「限定セール」など、「緊急性」を煽るようなマーケティング戦略を採用しているのです。「今買わなければもう二度と手に入らない…」 そう思わせることで、顧客に緊張感を与えているのです。

どのようにすれば心拍数を上げることができるのか? これは非常に興味深いテーマですが、人間は心拍数が上昇すると、行動を起こす準備が整います。

購入などの行動を起こす際、心拍数が上がっていなければ、人はなかなか行動に移せません。

つまり、何らかの「刺激」、例えば「緊張感」を相手に与えなければならないのです。

「吊り橋効果」のように、興奮状態にある時に商品を販売すると効果的です。

販売コーナーを暖色系でまとめたり、冬の鍋野菜コーナーに温風を当てて温かさを演出したりするのはどうでしょう?

五感を刺激するマーケティングは、野菜販売でも有効です。

冷蔵保存が多い野菜の場合、工夫は必要かもしれませんが。

五感を刺激するマーケティング戦略

それでは、ここまでをまとめましょう。

「快楽物質」であるドーパミンは、「楽しい」「気持ちいい」といった快楽を感じた時に分泌されます。

そして、ドーパミン単体で分泌量が増加するもう一つのケースが、「恐怖を感じた時」です。バンジージャンプやホラー映画を体験するのは、恐怖を感じることによってドーパミンが分泌され、快楽を得ているためなのです。

夜中に怖い番組を見ると、「もう二度と見たくない…」 と思いながらも、結局また見てしまう… これは、ドーパミンが分泌されることによる「快楽」を求めているためなのです。

顧客の「恐怖心」をどのように刺激するか… マーケティングの世界では、可愛らしいキャラクターよりも、クモや骸骨など、グロテスクなキャラクターを起用しているブランドが多いことに気が付くでしょう。

なぜ彼らは、このようなキャラクターを採用しているのでしょうか?

それは、恐怖心を与えることで、消費者に「この商品を買ったら何か楽しいことがあるのではないか?」と思わせるためです。

「怖いもの見たさ」で商品を購入してしまう心理は、誰しもが経験したことがあるのではないでしょうか。

「セロトニン」は「幸福物質」です。選択肢を増やすことによって分泌されますが、もう一つ興味深いのは、「嫌悪感」によっても分泌されるという点です。

消費者の「商品の品質」への不安に寄り添い、生産地や製造過程を丁寧に説明することで、安心感を与え、幸福感に繋げられるかもしれません。

特に、植物工場で作った野菜は、イメージが先行して「味が薄いのではないか」「栄養が少ないのではないか」と思っている人もいると思うので、きちんと説明するということは大切ですね。

「気持ち悪い」という感情が明確になるからこそ、逆に「幸せ」が何なのかが際立つ、ということでしょうか?

「セロトニン」は「幸福物質」と呼ばれていますが、単体では「嫌悪感」からもたらされるのです。

つまり、「このまま買わなかったらどうなるか…」といった不安を煽るようなコマーシャルが多いのは、「嫌悪感」や「不幸」を連想させることで、消費者の購買意欲を高めるためです。

最後に、「ノルアドレナリン」について解説しましょう。「ノルアドレナリン」は、緊張したり、パニックになった時に分泌されます。

心拍数を上昇させる効果もあります。「限定性」を謳ったマーケティング手法は、「ノルアドレナリン」の分泌を促す効果があります。

「残りわずかです!」「あと〇名様限定!」… チケット販売などによく見られる手法ですね。

例えば、ある人気の劇団のチケットは、発売日当日の10時ちょうどにサイトにアクセスしても、全く取ることができません…。この「緊張感」こそが、「希少性」を高め、「レアリティ」を生み出すのです。

そして、「ドーパミン」「セロトニン」「ノルアドレナリン」の組み合わせによって、様々な感情が生まれます。

顧客を「ファン」にするために最も大切なこと

私たちが目指すべきは、「顧客をファンにする」ことです。

「セロトニン(幸福物質)」と「ドーパミン(快楽物質)」の両方が分泌されると、人は「喜び」や「満足感」といったポジティブな感情を抱きます。

一方で、ドーパミンが分泌されないと、人は真の「幸福」を感じることができません。「快楽」と「幸福」のバランスが重要なのです。

ここで重要なのは、「商品やサービスを販売したい」という視点です。

例えば、
「製品不良を減らしたり、顧客満足度を向上させることで、売上は増加する」

これは本当に正しいでしょうか?

興味深いことに、最も指名される美容師は、必ずしもカットの技術が最も高いわけではありません。

では、顧客は「何」を求めているのでしょうか?

顧客は、「期待以上のサービス」を求めているのです。

例えば、カットの技術がそれほど高くなくても、顧客とのコミュニケーションを大切にし、「あなたのために一生懸命施術します」という姿勢を示すことで、顧客満足度を高めることができます。

顧客は、「自分のことを理解してくれている」「人間として見てくれている」と感じることによって、「感動」し、「特別な存在」として扱われていると感じるのです。

そして、この「感動」こそが、「顧客をファンにする」ための重要な要素なのです。

この「感動」を生み出すためには、「プラスアルファのサービス」が重要になります。

「当たり前」のサービスを提供するだけでは、顧客を「感動」させることはできません。

「斜め45度」の発想… つまり、「常識」にとらわれない、斬新なアイデアが求められるのです。

「逆のことをやれ」という教えに通じるものがあります。

「非常識なこと」や「業界の常識」だと思っていることを疑ってみることが大切です。

ステップ1は、「ランダム性」を取り入れることです。

例えば、カフェであれば、「本日〇人目のお客様にプレゼント!」といったキャンペーンを実施するのも良いでしょう。

オンラインショップであれば、一定金額以上購入すると「野菜くじ」を1回引けるようにするのはどうでしょう?

ゲーム感覚で購入体験を豊かにできます。

「ランダム報酬」を導入することで、顧客の来店頻度や購入回数が増加する効果が期待できます。

ステップ2は、「選択肢」を増やすことです。

顧客は、「たくさんの選択肢の中から、自分にぴったりの商品を見つけたい」と思っています。

野菜であれば、「詰め合わせセット」や「サブスクリプションサービス」などを導入することで、「選択肢」を増やすことができます。

野菜のサブスクリプションサービスで、コースが複数あるのは嬉しいですよね。

「おまかせコース」「旬の野菜コース」「珍しい野菜コース」などでしょうか。

そして、ステップ3は、「プラスアルファの斜め45度」のサービスを提供することです。

「顧客を驚かせる」ためには、どのようなサービスを提供すれば良いのか?

常に顧客目線で考え、「期待を超えるサービス」を追求していくことが重要です。

野菜の宅配サービスで、レシピカードだけでなく、生産者の紹介や農作業風景の写真、地域の観光情報なども同封すれば、消費者にとって嬉しい「驚き」になると思います。

本日は、ビジネスにおける「ファン化」の重要性と、「顧客を感動させる」ための具体的な方法について解説しました。

この記事の内容を参考に、ぜひあなたのビジネスにも「ファン化」の仕組みを導入してみてください。

顧客との何気ない会話や、心温まるサービスが、「顧客をファンにする」ための重要なカギとなるのです。

まとめ

農業は「良い野菜を作ること」に集中しがちですが、「お客様に野菜を買ってもらうための工夫」も非常に大切です。

この記事で紹介したマーケティング手法を参考に、消費者を「ファン」にするための戦略を立ててみて下さい。

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