『蜜蜂と遠雷 下』 -恩田 陸- を読んで
あらすじ
「芳ヶ江国際ピアノコンクール」もいよいよ佳境に入ります。
2次予選の課題曲「春と修羅」をどのように演奏するかが3次予選進出の鍵。
マサルの技術は完璧で、明石も自信に満ちています。
3次予選(リサイタル形式)に進むのは12人、その中から本選(オーケストラとの協奏曲)へ進めるのはわずか6人。
様々な想いと葛藤を抱えながらも、若き才能たちが激しい音楽の戦いに挑みます。誰が優勝し、どんな未来を掴むのか――
その結果は予測不可能です。
感想
『蜜蜂と遠雷 下』は、音楽の描写が圧巻の一言。
ピアノコンクールという舞台ながら、読んでいくうちに「勝敗」が重要ではなくなってきます。
それほど、登場人物たちが皆個性的で愛おしい存在として描かれているのです。
特に、挫折を乗り越え、成長する亜夜や明石の姿には感動を覚えずにはいられません。
どの人物も全力で自分の音楽を表現し、輝かしい未来へと進む様子が、心に強く響きました。
また、作中で表現される「音楽を自然に返す」という考え方が素晴らしく、音楽が単なる技術や競技ではなく、人間の本質的な表現として描かれている点が印象的でした。
風間塵が奏でる音楽の自然さや、彼が持つ圧倒的な存在感には、音楽の美しさを再発見させられました。
どんな人におすすめか
クラシック音楽に詳しくなくても、音楽や芸術に興味がある方にはぜひ読んでほしい一冊です。
恩田陸さんの筆力によって、音楽の奥深さや感動がダイレクトに伝わってきます。
読んでいると、まるで自分もその音楽を聴いているかのように感じられるでしょう。
特に、何かに挑戦する勇気を必要としている方、挫折から立ち上がろうとしている方には心強いエールとなる作品です。