2022/9/19週|人間型ロボットは、日常と非日常を時間単位でブレンドする夢を見る
突き刺すような強い日差しに、東南アジアの雨季の湿度。
横断歩道の前に並ぶ、青信号待ちの無数バイクと轟音。
緑と黄色の組み合わせ、あるいはピンクというショッキングな色彩のタクシー。
そんな喧騒あるいは活気を感じるバンコク市内を歩いていると、時折人が声をかけてくる。バイクやタクシーへの勧誘、物売り、、10年ほど前に訪れたインドほどではないが、この騒がしさとちょっぴり危険な雰囲気(慣れたらそうでもなかった)に、僕は武者震いした。
視・聴・嗅・味・触・・・五感への刺激や緊張感に身体全体が反応したのである。(この武者震いがこの旅で見つけた「答え」を示していたことを後述する)
✈️3年ぶりに日本の外へ
休暇でタイのバンコクに来ている。
COVID-19のあれやこれやの前はほぼ毎年、出張であれ旅行であれ海外に訪れていたのだが、これが3年ぶりの日本の外である。
行き先としてはアイスランドや他ヨーロッパなど他の候補も考えたのだが(行けるかどうかはそこまで調べていない)、直近でたまたまお薦めされたタイに縁を感じて行ってみることにした。
これまで、ドイツ・フランス、トルコ、アラブ首長国連邦、インド、韓国、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、キューバあたりが訪れたことのある国々。
東南アジアとしてはフィリピンが該当するが、セブ島にある超短期の英語の語学学校に行ったというのと、何より到着二日目に現地でM7.3の地震に遭遇してしまい、観光(どころか語学の勉強すら)している場合ではなくなってしまった。(この話を書き出すと長くなるので割愛)
というわけで、個人的には初の東南アジアの国への旅行とカウントする。
🇹🇭タイ王国
タイは人口の94%が仏教徒で、チャオプラヤー川流域で展開される歴史が中心の国だ。現王朝のチャクリー王朝は1782年から始まっており、現在のラーマ10世が2016年に即位。肖像画が街中の色々な建物に掲げられている。
バンコクの北にあるアユタヤ県まで足を伸ばすと、ヤシの木やマンゴーがなっていたりと、熱帯産のフルーツが豊富。
アユタヤには13世紀に王朝があり(現王朝の前の前)、元々首都があった。貿易の中心地だったとのこと。1767年にビルマ軍の侵攻を受けて破壊されてしまい、今も残る観光地は破壊されたまま、今も静かに残っている。
。。。
現在の首都バンコク(タイ語での正式名称がめちゃくちゃ長い。笑)に目を向けてみると、高速道路から見える数多くのマンション群は「豊洲のほうかな?」と思うほどだし、街並みの一角を担うセブン-イレブンやスタバなどのチェーン店、さらには東京のそれよりも進んでいるのではと思うほどの現代的なショッピングモールは清掃も行き届いており、非常に綺麗だ。
他方で、一本入ると舗装されきっていない歩道には道の真ん中に木がどかんと生え歩きづらい。バリアフリーなんてあったものじゃなく段差だらけ。
加えて散乱したゴミ…
この辺り、ごくごく平均的な日本人の価値観をもっている僕からすると、都市の発展の仕方に歪みを感じる部分はある。同じ市内で「差が隠されていない」、そんな感覚を持つのである。
日本とはリソース(時間を何に使うか)に関する意思決定が違いそうで興味深い。むしろ、均一性を重視して、平均的にリソースを張る日本の方が特異なのかもしれない。
いずれにせよ、見たものが少なく了見が狭い身であるので、都市の発展についてはこの辺に留めておくべきかと思う。
🖋見つけた答え
はて…そもそも何を見つけに行っていたのか?
正直なところ、決してこの旅に対して何かspecificな問いを立てていたわけではない。
しかし、他方であっという間に30代も後半になり、当然ながら人生に関して思いを巡らすことが多くなってきている事実もあった。(同世代の友人と話していても同じようなことを考える人が多いと感じる)
様々なことについて、する、もしくは、しない、という形で選択をしてきている。(現状維持は「しない」を選択していることになる)
具体的には、【何を自分の中で優先していくのか】、言い換えると、【自分にとっての豊かな時間とは何か】ということを考えるようになってきていた。自身だけではなく周囲も含めたこの10年くらいの環境の変化もある中で、自分なりの基準(言うなれば哲学)を持っておくことが一本芯を通した生き方につながるし、主体的であると思う。
(そしてこれは自社のビジョンともリンクする問いなのだ。事を成そうって連中は、事についてのそれなりの哲学を持っているものだということは歴史的にも明らかだろう。)
豊かな時間とは何か、につながるものとして今回一つはっきりしたこととしては、「新鮮な体験をしたい」「色々なものを見聞きして触れたい」「知らないことの面積が大きいところに身を置きたい」というのが、自身の中で優先度の高い欲求であるということだ。
それをタイに到着して数時間以内に「武者震い(ワクワク)」という形で答えを見つけることとなり、また同時に20代の頃から変わらないことも再認識した。(一般的な価値観基準に照らすと、良くも悪くも、であろう。)
これは月並みにまとめると「好奇心」というキーワードになるのであるが、例えば、毎日東京メトロの改札を通るときには無意識の極地でPASMOをタッチする"人間型ロボット"のようなものであるのに対し、タイの地下鉄に乗るときは切符(厳密にはトークン)を買う時から券売機の使い方がわからなくて、変な汗が出る"人間"であった。こんな日常のワンシーンですら、トークンを手に入れ、地下鉄に乗り、目的地に着くまでが刺激的であった。
改札が開いた時には思わずニヤつき、達成感を感じてしまったほどだ。
(それにしても、トークンを買う自動券売機のUIには二言三言申し上げたい)
あるいは、東京でいつも行くチェーンではなく、バンコクではすべて初めて訪れるレストランであり、屋台であり、カフェである。
初めて座る椅子、見慣れない視覚に入ってくるもの、匂い、味・・・全てが新鮮。
他にも、街中での客引き、Grabで呼んだ車がガイド通りに行ってくれないこと、欧米人同士が喧嘩しているBARなどすら、「まだ知らないもの」「新鮮味」に該当する。(怖いのは嫌だけど)
常にこうした環境に身を置きたいかと言われると疲れてしまうのでNOなのだが、人間我儘なもので、ゼロだと彩りがない。(そう考えると国外への移動の選択肢のないこの3年弱は、新鮮なフルーツになかなかありつけない、そんな辛い時期だったように思われる)
帰結として、人生の中でいかにこうした時間を組み込み、増やしていけるかが、自分自身にとっての「豊かさ」に直結することは、今回の旅で確信的なものとなった。
「日常の生活と非日常世界をどう組み合わせていくか」が、今後の人生において追求したい一つのテーマなのである。(このnoteは、ほとんどそのことを後でも思い出せるようにするために書いているようなものだ)
💻仕事(日常)と旅(非日常)の組み合わせ
さて、日常の生活の代表は僕の場合、仕事だ。
非日常世界は今回のような、旅、とする。
これらをどう組み合わせていくか?について、少し思うところがあった。これは読み手に押し付けるわけではなく、あくまで個人としてやってみたいことだ。最後にそれを書いておしまいとしたい。
今回はバンコクでも少し仕事*をしてみた。Slackに対応をしたり、打ち合わせに出たり、アウトプットにレビューするくらいだが、ハイブリッド(あるいはリモート)ワークが普及している世界でやってみると思った以上に「普通」と感じた。COVID-19以前はもう少し違和感があるものだったと記憶している。(ただ、断っておくと、僕はどちらかというとオフィスで顔を突き合わせて仕事する方が個人的な好みではある)
*ここでの仕事はあくまで日本でやっている仕事を指す。例えば海外駐在で現地の仕事をする、とかとはまた別の話。
その体験から、日常と非日常の組み合わせの方法に、2つの可能性も見たのである。
一つは、非日常の期間を設ける形。1週間旅行に行き、その期間は日常から離れる、という今まであった形だ。パッチワーク的に、日常と非日常がそれぞれ異なるものとして独立している。
もう一つは、日常と非日常のブレンド。今回はこちらが推しだ。
旅先で、仕事の時間と旅行の時間の両方を持つという、所謂ワーケーションに近いものだが、通常国内を指しているケースが多そうなので、それの海外版と捉えてもらうとよさそうだ。
僕にとっては日常の仕事も大事であるので、パキッと分ける一つ目の方法は、どうもむず痒い。開くなと言われてもSlackは開いてしまうのだ。気になるし責任を感じるし。
そもそも観光地と言われるところであれば(キューバのハバナとかは例外だった)、WiFi等を通じたネット環境を遮断することが逆に困難な時代である(むしろ今回の旅でもGoogleマップにはめちゃくちゃ助けられているし、お気に入りのスニーカーを履き潰すほど歩いたので、バンコクにいながら同じ型のスニーカーをAmazonで注文しておいた。帰国時には届いているだろう)
そうであれば、最初から日常と非日常を混ぜてしまうスタイルの方が、時代に合っているのではないか、そんな風にすら感じる。
違う書き方をすると、dayやweek単位でやることを変えるというよりも、hour単位で日常と非日常を行き来する感覚だ。スタバのラテで、コーヒーと牛乳が混ざっていく時の曖昧さのように、平日の日常からその世界に身を置き、朝晩ご飯などは現地を味わう。休日には観光をする。
「その地で生活をする」中で、仕事と遊びをブレンドする。
旅行先でも仕事をする、、そんなのいやだって?
いやならこれまで通りのやり方ももちろんOKだ。日別に予定を決めて、この日は仕事、この日は遊び、と。
ここで重要なのは「自分でコントロールする」という意思を持つことだ。
とは言え、後者の方法は、日本にいる時ほどの時間を仕事に投下できるかはいささか疑問であるし、時差など実務的な課題はすぐに浮かぶので試行錯誤は必要であろう。
当面はまず、1つ目のやり方に2つ目を混ぜていき、何年かかけて徐々に日常と非日常のブレンドスタイルを確立していきたい。
人間型ロボットが、ありたい未来の形を夢見た、そんな旅であった。
📓この記事について
株式会社タイミーで執行役員CMOを務めている中川が、マーケティング関連の仕事をしている中で感じたことを綴り、コツコツと学びを積み重ねる『CMO ESSAY』というマガジンの記事の一つです。お時間あるときにご覧いただければ幸いです。オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしている節があり、自分も週次更新をしています。
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