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東京でOLをしながら小説を書いていた頃

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だいすきでだいきらいだった東京。
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#小説家

夢なんて言葉じゃ語れないくらいの

夢なんて言葉じゃ語れないくらいの

「物書きはかすみを食べて生きているわけではない」

最近触れた、柳美里さんの言葉だ。
血を吐く勢いで頷いてしまった。

私は文章が好きだから書く。
書くことは呼吸だから書く。

でも呼吸はできても、ごはんを食べなければ死んでしまう。家賃も年金も払わないといけない。

休職していた期間、お給料が出なくて、ものすごくこわかった。

私を経済的に支えてくれるのは会社で、会社を失ったら野垂れ死ぬしかなくて

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OL小説家の休日日記 2

OL小説家の休日日記 2

休日は狂ったように、文章を書いていた。
書けなくなるかもしれない、と怯えて何も書けなくなっていた、平日の分を取り戻すように。

「あなたのやっていることなんて社会の役に立たない、全部無駄」という考えに触れても、「結局大事な人に何も伝わらないのなら、伝えようとすることは無意味」だと思い絶望しても、「書きたい」が消えなかったことに救われた。よかった、と安堵した。私には、大切なものを大切にできる強さがち

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OL小説家の休日日記 1

OL小説家の休日日記 1

今日は、夏休みの匂いがする。

初めての風が、遠い夏の記憶を連れてくる。

畳に寝そべって眺めていた入道雲。自由研究用の大きな模造紙。溶けかけのスイカバー。母親の茹でたそうめん。おばあちゃんが育てた黄色いトマト。桃畑に囲まれた墓地。線香の匂いとヒグラシの鳴き声。

夏の記憶はどうして、こんなにも輝かしくて、胸をしめつけるんだろうか。

青色の追憶に浸りながら、洗濯物を干した。昔よく聴いていた音楽を

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