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風と共にゆとりぬ【読書感想文】

昨日の日曜日、ワクチン接種の一回目に行ってきた。

20代くらいまでの女の子はとくに副作用が出やすいと聞いていたので、わたしもばっちり副作用がでる準備をしていた。が、本日の月曜日、朝起きてみると、そこまで体調がわるくもない。体調がわるいのだ、という目で見てみれば、「じゃっかん体が熱いかな・・・?」ぐらいだ。働けないこともない。でも気持ちは休む気まんまんである。

う~~~ん、悩ましい。
小一時間悩んだ結果、お休みをいただくことにした。

お休みの連絡をした瞬間、ズル休みしたような申し訳なさと、心置きなく休めるという開放感がごっちゃになった気持ちが襲ってくる。こんなときは、会社の同僚たちがみんな真面目に見える。真面目というのは、わたしのひとつのアイデンティティのはずだが、そのアイデンティティがグラグラと揺らいでいる。

で、一日のほとんどの時間をベッドで過ごし、本を読んだり、猫と戯れたり、何回か昼寝をしたりして、現在に至る。体が凝り固まっているせいか、すこし重い頭を抱えて note を書いている。このていどの体調不良で、40日近く続けている毎日投稿を途切れさせるわけにはいかない。
いろいろと優先順位がおかしいのは重々承知だ。


さて、本日紹介したいのは、朝井リョウさんのエッセイ集『風と共にゆとりぬ』だ。本日ベッドでごろごろしながら読んでいた一冊である。

このエッセイ集を読んでみて、小説を通して抱いていた朝井リョウさんのイメージが一変した。

こんなに根暗でユーモラスな方だったのか・・・。根暗とユーモラスは相反しているように聞こえるかもしれないが、読んでいただければその意味がわかると思う。

いい意味で「ばかだなあ・・・」と思えるエピソードが、ユーモア溢れる口調で綴られる。そして、ところどころで、このひとぜったい卑屈だよなと思わせる物事への感受性があらわになる。その絶妙なバランスがおもしろい。

なにより魅力的に感じたことは、けっして気取らずにエピソードを書いていることだ。
たとえば、このエッセイ集のなかで、箱根で美術館に行ったエピソードが紹介されている。美術鑑賞にあまり興味がない朝井さんは、「私は美術的価値が高いものに対して心を動かされる人間です」という顔だけつくって、腕時計をチラチラ見ながら美術館内をウロウロしていたそうだ。

創作を生業にしている人物が、こんなことを書いていいのだろうか・・・。こちらが心配になってしまう。


このエッセイをとおして、「あ、こんなに自由に文章をかいていいんだ」というのは、わたしのなかでひとつの衝撃だった。

「気取らずに、思ったことを書けばいい」
エッセイを書くコツとして、よく聞かれる一言だ。
そんなこと知ってるよ、という気持ちだったが、朝井さんのエッセイを読んで、いかに自分が気取っていたかを思い知らされた。自分のアホな部分は覆い隠し、それっぽくまともに見える文章を書いていたように思う。

これからは、もっとありのままの自分をさらけ出した文章を書きたい。
そんな決意とともに、冒頭で、若干の罪悪感とともに会社をお休みしたエピソードを書かせてもらった。

自分をさらけ出したエッセイが書けるよう、暖かく見守っていただけるとうれしい。

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