『勝ち抜くための描写テクニック』官能的イコール性的ではないのです
こんばんは。
こちらの本がとっても面白かったので、ご紹介しますね。
『勝ち抜くための描写テクニック』
作者は「サミュエルソン大竹」という方。ほかの書籍も読んでみようと調べましたが、ぜんぜん情報が出てこない。謎の方です。
官能小説家が教える、とありますが、本書の内容は、官能小説以外でも十二分に使える有益な情報ばかりでした。
noteでエッセイをかいたり、pixivで二次創作をかいたりするにあたって、毎回似たような表現で単調な文章になってしまうな・・・と悩み、本書を手に取りました。
小説を書く人にとっては基本的なテクニックも多いと思います。しかし、初心者のわたしにはぴったりでした。
有益だと思った情報をまとめます~。
1. 本書で最も印象に残ったメッセージ「官能的イコール性的ではない」
官能的イコール性的ではない。
官能は性的なシーンでなくても演出できなければならない。ヒロインの外見うや何気ない生活感でいかに官能を刺激するかが、アマチュアとプロの差です。
なるほど、と思いました。
濡れ場があっても、なんの気持ちも掻き立てられない薄っぺらな表現のこともあれば、濡れ場以外の部分でこの人の文章は色っぽいなあと感じることもあります。
色っぽい文章、と聞いて、わたしが思い浮かぶのは小川洋子さんです。
直接的な性的表現はあまり登場しないのに、淡々と綴られる偏愛性が妙に色っぽいんですよね。生活感あふれる情景のなかで、いかに色を表現するか。盗んでいきたい技術だなと思います。
2. どの視点でかくか?「三人称一元視点」がおすすめ
三人称のなかでも、いくつか分類があるらしい。
これは私にとって目から鱗でした。
> 三人称 神の視点
三人称のうち、自由に注目対象を動かすことができ、自由に登場人物の心情をかける視点。「定点カメラ(自由に動けるが心理描写は行わない)」と「多元視点(自由に動け、すべての人物の心理描写を行える)」の流派に分かれるそう。
わたしはすべての登場人物の気持ちを表すため、神の視点のなかでも特に「多元視点」を使っていた気がします。しかし、視点がころころ切り替わるのは読者にとってストレスなんだとか。たしかに、自分が読む立場だとそうだなあ。
> 三人称 一元視点
三人称のうち、主人公の背後にカメラを設置して主人公のみ心情描写を行う視点。現代の可読性が高い一般文学で多く採用されている。
客観的な三人称で書きながら、主人公の抱く感想を描写できる優れもの。
また、三人称を使用する場合は、主語を省略して没入感を高める、というテクニックも有用。
3. 「そう言った」は必要か?
「そう」「その」などの指示語の多用や、「~と言った」系の言葉。
わたしはむちゃくちゃ使ってるなあと思いました。多くの場合、セリフの後は「~と言った」と書かなくても通じます。
言ったを一足飛ばしにして、「どういう表情を浮かべた」「どういう行動をとった」などで不自然さは全くない。削れるものは削る。
5. 基本的な修辞技法
修辞技法は小中高で散々習っていましたが、改めて聞くと勉強になりました。
直喩:「まるで~のようだ」と比喩であることを明示するもの。
隠喩(暗喩・メタファー):「~のようだ」をすっ飛ばす。直喩よりも洗練された印象になる。
換喩(メトニミー):「黒板消して」のように、表現したい対象を関連が強いもので言いかえること。この場合、黒板は「黒板に書かれた文字」を示している。
提喩(シネクドキ):「ごはん食べた?」のように、対象を包含関係の上位か下位にあるもので言い換える比喩。この場合、ごはんは上位概念の「食事」を意味する。
声喩(オノマトペ):これはバチバチに使っているので省略。
形容詞矛盾(撞着語法):AとBが相反する概念にも関わらず、「AでありB」と使うこと。
例)健康という病、甘い罠、優しい嘘
省略:文の一部を略す。
擬人法・無生物主語:他の文で長々と状況を描写する際には、無生物主語を織り交ぜることによって冗長さを軽減する
例)空気が漂う、言葉が突き刺さる、緊迫感が襲う
体言止め:映像作品のようなシャープな描写向き。ポイントは、カメラを動かす手前(注目対象を移す手前)で体言止めをすること。
BAD 大きな手が包み込んだ。幾度となく、自分に触れた手。
GOOD 包み込む大きな手。幾度となく、自分に触れた手だった。
6. 五感表現を忘れない
視覚以外の感覚は書かなくともぱっと見では違和感を感じません。
しかし、聴覚、触感、嗅覚、といった感覚も加えてあげると、臨場感が加わります。
なくても違和感を感じないからこそ、視界以外の感覚が含まれているかチェックすべき。
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敬愛する作家さんがどう有効に使って文章を書いているか。
テクニックを盗みつつ、人を惹き込む魅力的な文章を書いていきたいものです。
ではでは~。
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