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筋肉痛

大学受験は、私の約20年の短い人生においてなかなかに大きな出来事だった。

高校3年生の時、私は何になりたいのか、どこの大学を目指すのか明確でないながらも、受験に向け日々勉学に励んでいた。

しかし、どうしたことかその日々は第二ラウンドへと突入。いわゆる浪人生活を送ることになった。

現役時代とは異なり、一人予備校に通う生活は想像よりもずっと孤独。勉強するためだけに、淡々と時間が過ぎていった。

そんな中、集中力の切れやすくなった私は勉強の「お供」を探すようになった。音楽、飲み物、いろいろと試してみたが、どうもピンとこない。

お菓子もいいけれど、ぽっちゃりとした姿で大学の入学式を迎えるのはちょっと…。

模索を続けたある日、私はガムに目を付けた。 初めはキシリトールのガムをお供に迎えた。 悪くはなかったが、味がなくなるのが早い気がして少し不服だった。次はクロレッツ。

これがぴったりはまった。
私の求めた勉強のお供だと、ご機嫌で机に向かった私だったが、1週間ほどしてある異変に頭を悩ませることになる。

ほほの辺りや口の周りが痛いのだ。もしや、虫歯だろうか。確かにガムも甘いものだ。一末の不安がよぎるも、食事も普通にとれるし、歯医者に行くのも億劫で、何か痛いなぁと思いつつ特に何もせず過ごしていた。

が、ある時はっと思いついた。そうだ、これはあの痛みに似ている。これはきっと筋肉痛だと。
今まで腕や足などの筋肉痛は体験したことがあったが、顔は初めてでただただ驚いた。

どうやら私は勉強にかまけて、ガムで筋肉痛を感じるほどに日々を無表情で過ごしていたようだ。

必死に勉強することも大切だが、表情豊かに生きるのも大切。そう思った当時の私の勉強のお供は最後までガムだった。

ガムを食べ、筋肉痛を乗り越え、表情筋を鍛えた私は、笑顔で入学式を迎えられたはずだ。

続き「ムキムキの表情筋の行方」

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