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可能性が「高い」は間違った使い方?

司法書士・行政書士の佐川です。
本日のテーマは(業務には直接関係はありませんが)「ことば」に
ついてです。

職業柄、裁判所や行政に提出する書類が多いので、「ことば」を慎重に
取り扱わなければなりません。

「この表現で適切に相手方に伝わるのか?」
「自分の考えが間違って相手に届いていないか?」

自問自答しながら書類を書くことが多々あります。身振り手振りといった
非言語コミュニケーションツールがないまま、言葉だけで自分の考えを
相手に伝えることは難しいです。

そんなことを考えながら文章を作成していると、
日々「どうしようかな・・・この表現」と戸惑う場面に
しばしば出くわします。

たとえば、「可能性が高い」という表現。
別に普通によく聞く表現でしょう、間違いなのでしょうか?と
思われる方はたくさんいらっしゃると思います。

第一、NHK・民放のアナウンサーもそう言っていますし、
わたしたちもよく耳にします。


ところがそれを耳にしたとき、戸惑ってしまう自分がいます。
これは、高校生時分に、ある英単語を覚えたときからでしたが、
そのある単語とは、possibilityとprobabilityの2つでした。


単語帳には、  

  possibility・・・・可能性

  probability・・・・蓋然性(がいぜんせい)、確率

とあり、当時の自分は「??、どっちも同じではないか?」

最初は別に気にもとめませんでしたが、「どうもわからない、
可能性と確率(蓋然性ってそもそも何?)はどう違うんだろう?」と
頭がいっぱいになり、詳しく調べてみました。


すると、可能性というものは「あるか」「ないか」のどちらかであり、
確率(蓋然性)が零ではない限り、いつも可能性は「ある」ということでした。一方、多いか少ないかなどの、“数字”が問題となるときは、蓋然性、
もしくは(数学用語である)確率を用いるとも、ものの本に書いて
ありました。(記憶があやふやですが・・・確率という数学用語の一般的な言い方が蓋然性というらしいです)


つまり、確率(蓋然性)が1%のとき、
「可能性はある、でも確率(蓋然性)は低い」
というわけです。

天気予報で「今日の降水確率は80%です」と
お天気キャスターの方が言うと、
雨が降る「確率(蓋然性)は高い」
そして、
雨が降る「可能性はある」
わけです。


これを学んでからというもの、
個人的には「可能性が高い(低い)」という言い方は、
どうも”すわりが悪く”感じてしまって・・・
(昔から「細かい」性分だったということは言えます)



だけども、なぜこんな混同がおこったのでしょうか?
おそらく戦後すぐの「当用漢字表」の影響かなと思っています。

「当用漢字表」とは・・・
昭和21年に国語審議会が答申したもので、
『1  この表は、法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で、
    使用する漢字の範囲を示したものである。
 1  この表は、今日の国民生活の上で、漢字の制限があまり無理が
    なく行われることをめやすとして選んだものである。(略)』
という目的がありました。
(出典:文化庁 国語審議会から https://bit.ly/3x20n2x )

この表に蓋然性の「蓋」の字がはいっていなった、それで、
「蓋然性」の言葉の意味を「可能性」という言葉
(概念がまったく違うのですが)で代用しようとし、
そこから「可能性が高い」といい始まった、と勝手に推測しています。


自分の想い・考えをできるだけ正確に相手へ伝えるため、
きちんと言葉の意味を考えながら使用するわたし(ただし、本当に真面目に考えているかは甚だ疑問・・・)からすれば、当時はずいぶんと乱暴なことをしたな、という印象を受けます。(しかも、その影響が現在でも続いています)

ただ、可能性が「高い」という言い方はすでに言い慣れた表現方法で
ありますので、今でははっきりと誤りとも断定できません。

そこで、せめて自分が使うときは”確率”が高いという言い方をしている
今日この頃でした。



孔子の『論語』に「必ずや名を正さんか」とあります。
(難しい『論語』をきちんと理解していないので、偉そうなことを
 言えたものではありませんが・・・)

名というのは「ことば」のことでして、「ことば」が正しくないと
社会が混乱しますよ、と孔子が説いているわけです。

孔子という人は、やはり、頭が良いのだな、とやはり思ってしまいます。
(久しぶりに吉川幸次郎先生の本を読もうかな)


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