ブロックチェーンを基盤にするツイッター社のBlueskyでソーシャルメディアの未来はどう変わる?
ユーザーが投稿した殺人脅迫や、テロ予告、未成年者のポルノなどを削除しなかった場合、ソーシャルメディアは責任をとるべきだろうか?
セクション230とは?
アメリカにはいわゆるセクション230(通信品位法230条)というビッグテック企業がユーザーの発言の責任を不当に取らされることを免除している有名な法律がある。
セクション230ではソーシャルメディアはプラットフォームであると規定されている。
プラットフォームとは基本的には馬鹿とハサミは使いようの例えにあるハサミである。ハサミを使った殺人事件があってもハサミの製造・使用を禁止するのではなく、間違った使い方をしたユーザーが罰せられるべきだから。
ソーシャルメディアに似ているようで違うのが出版社だ。
出版社とは例えばニューヨーク・タイムズ紙の場合、どのニュースを一面に乗せるか?だれのコラムを掲載するか?など全ての掲載の判断は編集者たちが行う。
この場合、紙面に乗った情報から発生する名誉毀損であるとか、不正確な情報については出版社はある一定の責任を逃れられないのだ。
しかし、ソーシャルメディアは基本的にはユーザーが言論の自由を謳歌して、なにを言ってもよい。間違っていても、発言することは自由だし、発言に責任を負うのはユーザーである。
ユーザーが自己の責任で発言できる公共性のあるプラットフォームと認められているのでソーシャルメディアにはセクション230が適用されているのだ。
セクション230の威力を知ろう
ツイッターの場合、13歳の子ども二人が人身売買の被害にあい性行為をビデオにとられ、それが後にツイッターへと投稿された。これがバイラルになったことに気づいた二人はツイッターへ報告し削除を以来したが、無視されて合計9日間放ったらかしになる間に沢山閲覧された。
これに対しセクション230を持ち出してツイッターは無罪を主張している。
つまりツイッターとしては13歳の人身売買の被害者が性行為をさせられているビデオが投稿され、本人からの削除依頼があっても、それを無視しても法的な責任はないと主張しているわけだ。これは自ら設定したコミュニティ規則には違反しているから削除はするが、限られた人員では速やかにできないし、そもそも違法性はないと言って法廷で争っている訳だ。
モデレーション
しかし、セクション230の適用を難しくするのがモデレーションである。
問題のある投稿を削除したり、見えにくくしたり、拡散しにくくしたりすること、これをモデレーションという。
例えば、ユーザーがテロリストで、犯罪予告した場合、その投稿を掲載し削除しなかったソーシャルメディアには責任があるだろうか?
コロナの治療法です!といいながらブリーチ剤を飲ませようとする悪意のあるキャンペーンが自社の運営するソーシャルメディアで蔓延していたら、これはやっぱり野放しには出来ないというのが社会通念上、倫理的に正しいという考え方もあるだろう。
そこで各種ソーシャルメディアでは自主的なルールを決めて、ユーザーが参加するときに予め同意をとって、その明確なルールを厳格に適用することでプラットフォームとしての公共性・公平性・透明性を保ち、編集者の意向は介在していないので出版社ではないということが出来るのだ。
しかし、コロナ対策など世論を二分するようなセンシティブな話題であり、かつ人の命がかかった真剣な危機にある場合、ソーシャルメディアを運営する側としては、難しい判断が求められる。
ツイッター、フェイスブックなどはWHOやCDCの勧告を忠実に守ることで、人命に被害が行かないことを最優先しているように見える。
しかし、ロックダウンに反対する立場からは、ツイッターは言論統制している!!と見えるわけだ。
今年の一月、ツイッターがトランプ大統領のアカウントを凍結したことが、この種の議論を加速した。
トランプは選挙が盗まれたと主張して譲らない、しかし裁判所も政治家も選挙を運営した職員も各種の主要メディアも確認をした上でバイデンの勝利は疑いがないと結論。
ワシントンDCの国会議事堂前に数万人のサポーターを集め、暴力を煽り、国会で気に入らない決定をするのを力ずくで阻止しようとしたとしてトランプのアカウントは凍結されたのだ。
問題なのはトランプには7000万票もの有権者の支持があり、その多くが未だにバイデンが選挙を盗んだと信じているのだ。
そうすると、多くの人の目からはツイッターやフェイスブックがしたモデレーションが正しくなかったと映る。
ブロックチェーンでデータを開放するBluesky
このようなモデレーションが抱える根本的な問題に解決方をもたらすかも知れないのが、Blueskyである。
公式ページ
テッククランチの紹介記事
テッククランチを読むと、Blueskyとはブロックチェーン技術を用いて、ユーザーのプロファイル、投稿データをあつかう統一プロトコルと分散型データベースを実装してしまおうという試みであるとわかる。
そして、各社ソーシャルメディア各社は、この分散型データベースへと自社のソーシャルメディアのユーザーインターフェイスからアクセスするという形をとることで、各社が同じ投稿データベースから異なったモデレーションをすることが可能となる。
モデレーションの民主化である。
例えばツイッター社は社のポリシーとしてトランプが嫌いで、トランプの発言は彼が馬鹿なことを言ったときのみユーザーに見えるようにモデレーションをしたとしよう。
しかし、トランプサポーターは、新しいソーシャルメディアのサービスを構築して、同じ投稿データからトランプの全てツイートが見えるようなモデレーションをすればいいのだ。
そうすれば、あの会社はこういう検閲をしている、あそこはこういう検閲しているとユーザーは比べることができる。ユーザーでもトランプの全てのツイートをダウンロードして、消えた発言を確認、ユーザーのタイムラインに来た率の推定などを出来るようになる。そして、自分にあったSNSを選んだり、自らSNSを作ったりすればよいのだ。
同じデータをいかにモデレーションするかは各社の自由とすることで、大手による言論の独占という現状の問題点を克服しようということのようだ。
わかりやすく言うと、弱小の企業でも大手のソーシャルメディアと同じユーザーをサービス開始直後から始めることができ、各社の差別化はユーザーインターフェイスとモデレーションの方針、連携する他のサービスの種類などの利便性とかになる。
とにかく保守派のgab、gettr、Parlerのような新SNSサービスはユーザー数が少なく、リベラルの反対意見を持つ人と議論しようと思っても、まずリベラルがいないのだ。
ツイッターからほぼ全てのトランプサポーターがアカウント停止を受けた今年の1月の前ですら、リベラルのユーザーのタイムラインには保守派のツイートやリベラル政治家に都合悪いニュースは見えないという状況だった。
もしトランプ側に有利な証拠があり不正選挙が証明されるようなツイートがユーザー間でされても、世間一般からするとまるで見えないということがあり得る状況だったわけだ。そしてテレビ新聞も無視するから、トランプ側に一理ありなのかデタラメなのかはリベラルなユーザーのタイムラインではまともに判断できない状態が続いている。
ツイッターやフェイスブックがこのBlueskyを用いたバックエンドに移行すれば、保守派の新サービスもユーザー獲得の面で非常にメリットが大きい。
こちらでも紹介したが、ツイッター社のCEOであるジャックも
と突き放している。
つまり、ユーザーが好きなモデレーションをしているSNSを選ぶようになり、SNS各社は好き放題なモデレーションが出来るようになるが、今までのように大手SNSが”真実”を独占できないようになる。
ツイッター自らがそのような重荷を放棄して、民主的な手続きに置き換えたいと希望していることがこのプロジェクトの趣旨だと思う。
未来
ツイッター社がBlueskyに積極的であるということは、過去のユーザーデータも遡ってBlueskyへと放出する可能性が高いということだ。
こちらはDan Hughesさんという開発者が独自に似たようなサービスをすでに構築していたというツイート。まだトランプのアカウントが存在する間に彼は自分のCerberusというブロックチェーン技術を用いたSNSデータベースへとトランプのツイートを保存しておいたのだ。
だから、新サービスは過去のTikTok、フェイスブック、Twetter、インスタグラムなどの全ての投稿へシームレスにアクセスできるようなサービスが立ち上がる可能性が高い。
基本公開が前提でされたユーザーの投稿データについてBlueskyへと投入することにはあまり障害がないと思われる。
公開のさじ加減にもよるが、データを横断的にプロが分析すれば、トランプさぽのふりをして保守派を分裂させようと頑張ってきた汁アカウントの同定だとか、リベラルのインフルエンサーがいかに連動して誰かの指示を受けて動いてきたのかとか、人気アカウントだと思ったインフルエンサーが実はBotだらけだったとか、そういう事も全て白日の下に晒されるのではないだろうか。
まあ、本人の同意なしには公開しないとか、本人は削除できるとかあればまた別でもあるので、詳細は不明。
あ、そう言えば、トランプが構築しているソーシャルメディアって中々お披露目が無いですね〜。Bluesky...|・`ω・´)チラリッ‼